アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

ハービー・山口 写真展@滋賀県立近代美術館

2013-02-11 | 展覧会
寒いですね~。さて、冬休みが明けて、わがホーム・ミュージアムである滋賀県立近代美術館で始まったのは、『ハービー・山口 写真展 HIKARICAL SCAPE 雲の上はいつも青空』。

最初展覧会の予定を聞いた時は、「え~?それ誰?」だったのですが(ゴメンなさい)、数多くのミュージシャンのCDジャケットを手がけたり、フォトエッセイなども発刊されていて、知る人ぞ知る写真家でした(ユーミン夫妻から花が贈られてました)。彼自身の肖像写真を見ると、とてもお人柄が優しそう…、先週のオープニングには会場にいらして、ギャラリー・トークも行われました。行くつもりだったのに風邪引いちまって…残念。来週2/16にも再度来館され、講演会とライブコンサートが行われるとのことです!

展示は2部に分かれ、第1部「JAPAN」では、「1970年、二十歳の憧憬」「HOPE」「HOPE 311」「代官山17番地」の各シリーズが、第2部の「EUROPE」では「LONDON」「1989年、東欧、真冬に咲いた花」「TIMELESS IN LUXEMBOURG」の各シリーズが、全部で約150点の作品で構成されています。
根底に「人の幸福を写し取りたい」という願いが込められているので、ハービーさんの写真は、見る人の心を暗くさせたりガッカリさせたりすることが一切なく、展示を見ている人も含めて空間がほのぼの幸福感に包まれていたような、そんな印象を抱きました。

ハービーさんの写真家としての原点はLONDONで過ごした10年間、その間に異邦人として撮りためた写真だといいます。でも異邦人という視点もあまり感じないんだなあ…。きっと異国人でも人間として共通という信念があるからだろうなあ、と感じます。
私がとても心に残ったのは、若い頃の写真です。1950年生まれであるハービーさんが20歳頃にとった写真に写っている子ども、自分と同じくらいなんだ~と思うとすごい懐かしい気持ちが湧いてきて…。若さもあると思うのだけど、写真に作家の若いひたむきさみたいなものがバシバシ反映されている気がします。沖縄の写真も良かったです。

会場には、ハービーさんが使っているカメラとか、写したフィルムのベタ焼きに、ハービーさんが選んで赤で丸つけてるのとかもたくさん展示してありました。そういうのを見ていると、一瞬を切り取る写真だけど、すごくたくさんの瞬間瞬間の積み重ねがあってこその作品なんだな~というのを実感します。たくさん写した中から選ぶ、珠玉のたった1枚。

作品を見てハービーのことがいっぺんに好きになりました。いろいろなシリーズが展観できる彼自身の監修による大規模な個展、足の便の悪い美術館ではありますが、ぜひともたくさんの人たちに見ていただきたいな!と心から思います。
3月にも来館してくださり、カメラ教室なども行ってくださいます。ハービーさんがが審査員をつとめる写メール・コンテストなど、イベントも盛りだくさん!私も3月にはぜひお会いしたいものです。

展覧会は、3月31日(日)まで。
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「クリムト 黄金の騎士をめぐる物語」@愛知県美術館

2013-02-04 | 展覧会
愛知県美術館が所蔵するクリムトの「人生は戦いなり(黄金の騎士)」。この1枚を中心に渦を巻いて構成されている…そんな印象の展覧会でした。もしクリムトだけを目当てに行くと、少し違うかもしれません。(もちろん日本初公開の素晴らしい作品も出ています)

世紀末のウィーン、世界同時代的に起こる新しい時代に向けての新しい芸術の息吹。クリムトは中心的な位置にいたのだと思うけど、クリムトもまた、新しい芸術の動きに飲み込まれている一人だったんだなあ…と実感。
展覧会でも、「ウィーン分離派」について多くの展示が行われていました。その勢いは「ヴェル・サクルム」という分離派の機関紙に一番よく表れていると思いました。この正方形のパンフレット、たくさん展示されていましたが、そのどれもが斬新な意匠に彩られていました。たいていは一色刷りなのだけど、ネガとポジを巧みに用いたデザイン、この紙にこの色!というようなしゃれた色合い、そして分離派らしい書体の文字!何とも言えないです。
この「ヴェル・サクレム」も、年代を経るにつれ形もひとまわり小さくなり(でも正方形)、表紙のデザインも装飾的なアール・ヌーヴォー調から幾何学的なアール・デコ調へ。ホントいっぱい展示してあったので、これは楽しかったですね。
後に分離派を脱退したクリムトは、ウィーン工房の仕事に関わります。ホフマンは名前は聞いたことがあったけど、その作品を今回たくさん見ることができました。

それにしても、クリムトは戦っていたんですね~。「黄金の騎士」はその象徴とされていましたが、何といっても焼失してしまった「哲学」「医学」「法学」の原寸大のパネルにびっくりしました!ウィーン大学大講堂の天井画、「人間の知性の勝利を高らかに謳い上げる」という依頼に対して、こんな絵描くか?みたいな負の情念がこもりまくったような絵画…。モノクロではあったんだけど原寸大で見ることにより、この迫力の大画面の作品が3つとも焼けてしまったなんて、あまりに惜しすぎる!!実物見たかった!!と心底思いました。

この頃よくあるように海外の有名美術館からまとまって作品を借りてくるんじゃなくて、クリムトを中心に、その時代の芸術の激動を伝えるべく国内外から作品を集めて展覧会をつくろうという意欲を十分に感じることのできた内容でした。特にクリムトの「黄金の騎士」が被っているの同様の中世の大兜が出品されているのは良かったです。中世のモノなのに、ものすごくモダンな柄でおもしろーい!でも突然、日本の屏風とか着物が展示されていたのには「?」、まちがって常設展に迷い込んだのかと思いました。広がりついでにエゴン・シーレの作品もあれば、尚良しでした。

昨年のポロック展から1年ぶりの愛知県立美術館。常設展も相変わらずの充実ぶりで大変楽しかったです。
「クリムト 黄金の騎士をめぐる物語」は2月11日(月祝)まで。



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