このところ、漆芸に興味が湧いています。英語で陶磁器をCHINAというのに対し、漆器のことをJAPANといいます。江戸時代まで、日常の器は、漆器がメインだったんだって…。軽いし丈夫だし熱を通さないし、漆ってすごい塗料だなあ~というのが始まり。なんだか、メルカリでやたらと漆の器を買ってしまったりして…。
というわけで、京都伊勢丹にある美術館「えき」KYOTOで開催のこの展覧会、チラシの作品を見た時から、ぜひ行こうと思っていました。美しい色、カタチ。
黒田辰秋は、京都・祇園の塗師の家に生まれたが、伝統的な分業制に疑問を抱き、木工、塗り、飾りまで一貫製作を志します。それが15才のとき!早熟ですネ。その後、河井寛次郎に出会い、民藝運動に参加、民藝の木漆工に大きな影響を与えました。1970年に木工芸で初の人間国宝となり、晩年に向かうほど自由な境地で作品を生み出しました。
「漆」に惹かれていたのだけれど、この展覧会を見て、木工あっての漆なんだな、と認識を新たにしました。黒田辰秋の作品の特徴のひとつに、生漆を何度も重ね塗りして、木工品の木目の美しさを最大限に際立たせた拭漆という手法があります。映画監督の黒澤明氏に注文されて作った大ぶりな肘掛け椅子、大胆な木目の美しさと、たっぷりの漆が何とも言えない鈍い輝きを放つ、神々しいまでの美しさに息をのみました。できるなら、その表面を手で撫でてみたかった!!(もちろん禁止)
チラシの作品は、茶器なので思ったより小さかったですが、流れるような曲線の美しさと朱色の輝きがあいまって、愛らしく美しい作品でした。また、螺鈿で飾られた作品もたくさん見ることができました。
きょうの日曜美術館では、第64回日本伝統工芸展の作品が紹介されていましたが、工芸品の技術ってそれはもう素晴らしくて、美術の極みだと思うのだけど、一方で使われてこその「用の美」みたいな縛りはやはりあって、その制約の中で極める技、という不思議な立ち位置だなあと思います。木漆芸作品の無限大の可能性には、とても魅力を感じました。
「黒田辰秋展」は、10月9日(月祝)まで。
この秋、京都駅ビルは20周年を迎えました。美術館でも、20年分の展覧会をチラシで回顧。これからも、おもしろい展覧会を期待しています!