アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

「会田誠展 天才でごめんなさい」 森美術館

2013-03-24 | 展覧会
昨年11月から始まっていた本展覧会、ついに今月31日(日)で終了です。奈良さんや名和晃平さんに続き、やはり今を生きる同時代作家としてぜひ押さえておかねばならない会田誠さんの、初めての美術館での展覧会を見逃すわけにはいかないっ!と、東京まで出かけて来ました。

今まで直接見たことのある会田さんの作品は3点のみ。いずれもいろいろな作家の作品が集められている展覧会で拝見したので、やさしげな作品たちの中にあって、会田さんの作品はあまりにも毒を放っており、じっくり見続けるのがはばかられるような感じだったんですよね~。だけど、今回は会田さんの作品ばっかりだ!しっかりじっくり凝視するぞ~と見る気満々で、開館したばかりの森美術館へ飛び込んだのでした。

美術館での展覧会が実現するなんて…!と言われるほど、エログロな作風、政治的・歴史的な鋭い批評性を孕むなど、非常に個性の強い会田さんの作品は、物議をかもすのでは?という懸念どおり、物議をかもしたわけですが、でも実際この展覧会に足を運び、アーティストとしての会田さんの全体像を知ると、ほんの一部だけを取り沙汰していることに、「そんなんじゃないんだよな~」とよくわかるわけです。

とにかく一人で行ったことが残念なくらい、心の中でいろいろと突っ込んでしまう楽しい展覧会。ビックリするのは、お客さんの層がけっこう幅広く、老いも若きもお子様も…!会場に入ってすぐにある「切腹女子高生」は女子高生とは一緒に見たくないよな~とか、「戦争画RETURNS」のシリーズを見ているけっこうな年のおじいさんの心中やいかに?!とか。

その「戦争画RETURNS」でよくメディアにも出ていた「紐育空爆之図」は、実物見るとおもしろかった。燃え盛るニューヨークの上に飛び交う零戦はホログラムペーパーで貼り込まれており、見る方向によってライトがキラキラと反射し、不思議な世界を見せてくれます。
それから今回の展覧会のために描かれた「電信柱、カラス、その他」。冷たい空気感の中にモノクロで描かれているのが長谷川等伯の「松林図屏風」のようだ、と言われていますが、そのような幽玄な世界を想像しながら描かれているカラスをよくよく見ていると、ホントに「ゾ~ッ」としました。カラスがくわえているのは人のメガネ、指?これは何かが起きた後、人間に何かがあった後の世界。残っているのは傾いて電線が垂れた電信柱、そしてカラス…。すごい怖いです。松林図屏風とは全然ちがうと思いました。

その他にも、これでもか!というくらい、会田さんの不思議世界が繰り広げられます。さすがに「18禁部屋」の作品は生理的に気持ち悪さを感じるものが多かったですが、それも含めて会田さんの世界。
「わだばバルテュスになる」っていうイラストに受けたけど、けっこう会田さんの本質をついているのかも?
最後の段ボールでつくったオブジェの部屋も楽しかったです。これは会田さんの指導により、学生らが作り上げた力作の数々です。未だ制作中という様子でしたが、ぜひもっと近寄って見たかったな~と思いました。ビデオの中で、会田さんがやたらまじめに細かいレクチャーをしていたのにちょっと笑ってしまいました。

いやはや、やっぱり特異な作家だと思います。ゼッタイおじいさんになっても、世の中を挑発し毒を吐き続けて欲しい!美術館で買った会田さんの本「カリコリせんとや生まれけむ」を読んでいるのですが、これもなかなかおもしろく、彼の作品を知るいい助けになります。
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