アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

「奇想の系譜 又兵衛―国芳」 辻惟雄 (ちくま学芸文庫)

2012-05-28 | 

今、専ら話題の曾我蕭白の「雲龍図」がドーンと表紙のこの本、辻先生のご著書は初読だったのですが、めちゃ面白かった!残念なのは、何せ文庫本ですので、せっかくの図版が小さく、しかもモノクロなこと。それでもけっこう豊富に入っているので、文章を読みながら、ページをめくり返してはじっくり眺めたりして…

取り上げられているのは、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の、いわゆる正統に対して傍系と位置付けられてきた画家たち。奇矯(エキセントリック)で幻想的(ファンタスティック)なイメージの表出を共通した特徴とする彼らを、辻さんは「奇想の系譜」と位置付け、いやいや、異端ではなく主流の中の前衛なのだ、と高く評価してきた。
最初にこの本が出版されたのは、何と!1969年。今でこそ若冲や蕭白、国芳などの展覧会も大人気だが、当時は伝統的な美術界に新しい価値観を提案するセンセーショナルな書籍であったことだろう。でもそんなに力が入っている印象でもなくて、取り上げる画家たちの表現の奇っ怪さに心底驚き面白がっている様子が窺えて、読む方もすっかり惹きつけられてしまう。

6人の画家たちは、それぞれに特徴があるのですが、その中でも奇想天外という点では、蕭白が群を抜いている。そしてまた、もうすぐ展覧会で見られると思うと、ホント期待が高まるのだ。特に「雲龍図」については、このところいろいろなTV番組でボストン美術館展の特集が組まれ、早く眼にしたくてウズウズ。(大阪に来るのは来年だ…待ち遠しい)
巨大な龍の迫力も楽しみですが、奇っ怪な人物像をじっくり見たいですね。そうか~、もしかしてこの本の図版のモノクロの小さな画面は、これじゃ満足できない!実際に自分の目で見てみたい!という気持ちにさせ、読者を展覧会に誘うためだったのか?

辻先生、いいですね。この前の日経新聞の山下先生とのエピソードといい。(ツイッター参照)
もっといろいろなご著書を読んでみようと、図書館で「奇想の図譜―からくり・若冲・かざり 」を借りて来ました。楽しみです!
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『すゞしろ日記』 山口 晃

2012-05-05 | 

この頃、寝る前に目を通しては癒されているこの本、今をときめく現代の絵師といわれる山口晃さんが描いた漫画風読み物(?)「すゞしろ日記」。
これまた図書館で借りてきたのですが、あまりに面白くて一気読み。

小さなコマの中に登場するのは、(主に)山口氏ご本人と奥さま。描くのも大変でしょうけど読むのも老眼が入りつつある身にはツライ。でもすごい小さくて絵もシャシャッて描いてるのに、人物の動きとか表情とかがすごくよく表れている。やっぱり絵がうまいんだなあ!きっとこの小ささがベストなのでしょう。

二人のキャラクターは抜群です。ちょび髭をたくわえた山口さん、画廊に勤める奥さんに「ピゲ」と呼ばれ、何気ない日常の会話は、どこの夫婦にもありがちだったり、また画家だからこそだったり。ホントに声出して笑えるほどのエピソードも満載で、笑い涙を浮かべてしまうほのぼのさ。よいね~。

基本的に、ど~でもよいことを描こう、という方針のようですが、ぽろぽろと山口さんの画家としての姿勢なども垣間見れる。そして、山口さんの本領についてズバリと語っているのは実は奥さんである(たまに山口さんは奥さんにコマを渡して代理で描いてもらう)。
その中に書かれていること。

・・・ご存知のとおりピゲの絵は細かい
「こんな細かいの誰も見ないかもー。大きく描いたら早く仕上がるよ?」
「ダメ。細部を描き込んでおかないと全体がうきあがってこないの」
というような答えが返ってきた。つまり細かく描かれた部分が一体となって「画」を作り出している訳で…
見えないかも、と手を抜くと画自体の力が弱まってしまうという事だ・・・


そう思う!それこそ山口さんの絵の魅力。細かく描かれている絵の中にすっぽり入りこんでその世界に身を置く眼にもおいしい愉悦…。
大山崎の展覧会、行けばよかったな~。ぜひとも、作品をたくさん見たいものです。
そして、ぜひ実写の奥さまも見てみたいものですわ~。(むはは)
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ART KYOTO 2012

2012-05-02 | 作品
ホテルのお部屋で開催されるアートフェアに行くのは3回目、京都へは今回初めてです。訪れたのはホテルモントレ京都。
このフェアは2010年より始まり、今年はホテルのみならず国際会館をメイン会場に2か所展開とスケールアップ!情報によれば、国際会館では小山登美夫ギャラリーやイムラアートギャラリーさんなど有名ギャラリーが出展し、大きめの作品が展示されていたとのことで、都合によりホテルしか行けませんでしたが、ぜひ足を延ばしたかったですね~。(入場料も共通で1500円だったし…)

ホテルでのアートフェアは、なんかちょっとドキドキします。すごく私的な空間にお邪魔しているようで。そして入口が狭いところを、どのお部屋も作品を通路からチラ見できるようしつらえてあり、どんな作品があるのだろう??とワクワク感を誘います。
まあ、はっきり言って、部屋の中をドーンとベッドが占めていて、もう数人入ればいっぱいで、決して見やすい環境ではないのですがね。ホテルの部屋だからこそのユニークな展示をもう少し期待したいところ。

去年のART OSAKAほどは、買う気もなかったのですが、価格は買いやすいです。お一人、心が揺れた作家さんの作品があったのですが、踏みとどまってしまいました。なかなか「惚れる」作品には出会えなかったですね~。

そもそもホテルのお部屋で展示する作品なので、全般的に小品が多かったのは仕方ないとして、力ある作品、インパクトの強烈な作品というのはあまり見当たりませんでした。口当たりのいい作品ばかりって感想です。やっぱりお値段バッチリついてるし、売ることを目的としている作品だからかな?

アートって何だろうな?と考える。あまりにいろいろな姿がありすぎて。
最近読んだ美術手帖「Chim↑Pomプレゼンツ REAL TIMES」に出てくる世界のアーティスト、すごい闘っているのにもうビックリ!!あまりにおもしろかったので、この話題はまた別に。

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