今、専ら話題の曾我蕭白の「雲龍図」がドーンと表紙のこの本、辻先生のご著書は初読だったのですが、めちゃ面白かった!残念なのは、何せ文庫本ですので、せっかくの図版が小さく、しかもモノクロなこと。それでもけっこう豊富に入っているので、文章を読みながら、ページをめくり返してはじっくり眺めたりして…
取り上げられているのは、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の、いわゆる正統に対して傍系と位置付けられてきた画家たち。奇矯(エキセントリック)で幻想的(ファンタスティック)なイメージの表出を共通した特徴とする彼らを、辻さんは「奇想の系譜」と位置付け、いやいや、異端ではなく主流の中の前衛なのだ、と高く評価してきた。
最初にこの本が出版されたのは、何と!1969年。今でこそ若冲や蕭白、国芳などの展覧会も大人気だが、当時は伝統的な美術界に新しい価値観を提案するセンセーショナルな書籍であったことだろう。でもそんなに力が入っている印象でもなくて、取り上げる画家たちの表現の奇っ怪さに心底驚き面白がっている様子が窺えて、読む方もすっかり惹きつけられてしまう。
6人の画家たちは、それぞれに特徴があるのですが、その中でも奇想天外という点では、蕭白が群を抜いている。そしてまた、もうすぐ展覧会で見られると思うと、ホント期待が高まるのだ。特に「雲龍図」については、このところいろいろなTV番組でボストン美術館展の特集が組まれ、早く眼にしたくてウズウズ。(大阪に来るのは来年だ…待ち遠しい)
巨大な龍の迫力も楽しみですが、奇っ怪な人物像をじっくり見たいですね。そうか~、もしかしてこの本の図版のモノクロの小さな画面は、これじゃ満足できない!実際に自分の目で見てみたい!という気持ちにさせ、読者を展覧会に誘うためだったのか?
辻先生、いいですね。この前の日経新聞の山下先生とのエピソードといい。(ツイッター参照)
もっといろいろなご著書を読んでみようと、図書館で「奇想の図譜―からくり・若冲・かざり 」を借りて来ました。楽しみです!