いよいよ、園子温監督の「希望の国」を見に行く。朝一番のシネコン、チケット売場は混雑していたけれど、「希望の国」の観客はたった4人でした…。
それでもシネコンでやる心意気!こんなに大勢の人が見るべき映画なのに!
鑑賞者が口ぐちに言うように、タイトルにあるような「希望」があふれた映画では、全くない…。
舞台はいかにも福島県を思わせる長島県、設定は福島の後の話だ。地震が起こって、原発に近い村の人々が強制退去させられる。
前半は、庭の真ん中に杭を打たれた主人公の小野家、隣の鈴木さんは避難したのに、こちらは20キロ圏外で避難の対象でないという、いわゆるお役所のやることの理不尽さに翻弄される家族が描かれる。将来を思って避難を決意する息子夫婦と生まれ育った家を離れない決意をする親夫婦。
中盤は、妊娠がわかった息子夫婦が、生まれてくる子どものために、放射能という目には見えないけれど闘いを挑んでくる恐ろしいものに立ち向かう姿が、デフォルメされて描かれる。彼らのセリフには、最初はすごく神経質だったのに、時間がたつとそのリスクを忘れてしまう世間への批判がたっぷり込められている。
そしてクライマックスの終盤には、打たれた杭は、実は人々の平穏な生活に、幸せであるべき人生に、突然打ち込まれたものであることをひしひしと感じさせられるのだ。
目に見えない放射能への恐怖を誰も非難はできない。でも今ここで、人は牛は花は木は、こうして生きている。この場所を離れることはできない…。
そうするしかなかったのか…という苦い思いと、そこにあふれる親子の愛に思わず泣けてくる。
見終わって、この映画は「愛の映画」だと思った。重いテーマと、重苦しいストーリーに絡められながら、登場する親夫婦、息子夫婦、鈴木さんの息子カップル、3組の男女はそれぞれの接し方で、パートナーを心から愛している姿がキラキラと映し出されていた。特に夏八木勲演じる夫と大谷直子演じる認知症の妻、この夫婦のやり取りは全部ステキだった。あの雪の中のおんぶのシーンの美しかったこと!あの夫婦の姿は絶望のなかの「救い」だった。
初見の園子温監督作品、いろいろな批評もあるようだけど、監督が福島と全身で向き合った作品であると、私は思いました。そしてこれはフィクションにとどまらず、今ここにある現実が映し出されていることを受け止めなければならない、と感じています。
sa
それでもシネコンでやる心意気!こんなに大勢の人が見るべき映画なのに!
鑑賞者が口ぐちに言うように、タイトルにあるような「希望」があふれた映画では、全くない…。
舞台はいかにも福島県を思わせる長島県、設定は福島の後の話だ。地震が起こって、原発に近い村の人々が強制退去させられる。
前半は、庭の真ん中に杭を打たれた主人公の小野家、隣の鈴木さんは避難したのに、こちらは20キロ圏外で避難の対象でないという、いわゆるお役所のやることの理不尽さに翻弄される家族が描かれる。将来を思って避難を決意する息子夫婦と生まれ育った家を離れない決意をする親夫婦。
中盤は、妊娠がわかった息子夫婦が、生まれてくる子どものために、放射能という目には見えないけれど闘いを挑んでくる恐ろしいものに立ち向かう姿が、デフォルメされて描かれる。彼らのセリフには、最初はすごく神経質だったのに、時間がたつとそのリスクを忘れてしまう世間への批判がたっぷり込められている。
そしてクライマックスの終盤には、打たれた杭は、実は人々の平穏な生活に、幸せであるべき人生に、突然打ち込まれたものであることをひしひしと感じさせられるのだ。
目に見えない放射能への恐怖を誰も非難はできない。でも今ここで、人は牛は花は木は、こうして生きている。この場所を離れることはできない…。
そうするしかなかったのか…という苦い思いと、そこにあふれる親子の愛に思わず泣けてくる。
見終わって、この映画は「愛の映画」だと思った。重いテーマと、重苦しいストーリーに絡められながら、登場する親夫婦、息子夫婦、鈴木さんの息子カップル、3組の男女はそれぞれの接し方で、パートナーを心から愛している姿がキラキラと映し出されていた。特に夏八木勲演じる夫と大谷直子演じる認知症の妻、この夫婦のやり取りは全部ステキだった。あの雪の中のおんぶのシーンの美しかったこと!あの夫婦の姿は絶望のなかの「救い」だった。
初見の園子温監督作品、いろいろな批評もあるようだけど、監督が福島と全身で向き合った作品であると、私は思いました。そしてこれはフィクションにとどまらず、今ここにある現実が映し出されていることを受け止めなければならない、と感じています。
sa