アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

ジャクソン・ポロックのこと

2011-12-25 | アーティスト
メリー・クリスマス!!
今年もあとわずかとなりました。こんな寒い中、大掃除ってとっても不条理だと思うのだけど、きょうは風呂場の掃除をガンバリました。
そんなことはどーでもよいのですが、来年1月の来訪を目指している「ジャクソン・ポロック展」にちなみ、以前の記事でも紹介した古本屋で買った1993年発行の雑誌「ユリイカ」のポロック特集を読んでみました。「ポロック」増頁特集は、総勢20余名の著者による200ページ以上、昔の雑誌なので字も小さくて、大ボリュームであります。

美術評論家の方たちが使う言葉は観念的で難しく理解できないこともたくさんあるのですが、興味のあったいくつかを紹介いたします。

冒頭にはポロックへのインタビューが掲載されています。これは、1950年夏にラジオ局で収録されましたが放送されなかったというもの。ポロックの話はわかりやすくとても印象的です。
「私にとって現代美術は、われわれが生きている現代という時代の目的を表現する行為です。それ以上のものではありません。」
「画面に何かを見出そうとすべきではないと思います。まずは受動的に見ることです。絵画が与えようとしているものを受け止める努力をすべきです。主題の問題は見出すべきものへの先入観を念頭には置かない方がいいと思います。」
「私は音楽を楽しむように抽象絵画を楽しむべきだと考えています。」
「(従来の方法ではない利点は?の質問に)もっと奔放になれる、もっと大きな自由が得られるということ、そしてたやすくキャンバスのなかを動き回ることができる、ということでしょうか…」

また、ポロックのパートナーでありアーティストでもある女性、リー・クラズナーへのインタビューもあります。ここではスプリングスの納屋を改造したアトリエの話題を中心に語られています。聞き手はいつあの独特の技法が誕生したのか、その瞬間を捉えたがっていますが、クラズナーは素っ気なく「知りません」「覚えていません」と答える様子がおもしろい。暖房のないスタジオでは真冬の制作は無理だったとか、お気に入りのジャズを大音量で聞いていたとか、ポロックのペインティングの動きが優美だと評すると「いいえ、スポーツをしているところは見たことがありません」だとか…。

この前の日曜美術館でも見られたポロックが描いているところをハンス・ネイムスが撮影したフィルム、今となっては貴重なフィルムですが、野外の撮影が終わった10月の寒い日、禁酒を続けていたポロックが突然酒を飲み出し、酔っ払ってテーブルをひっくり返す失態を演じたというエピソードもありました。

もうひとつ、ポロックにはクレメント・グリーンバーグという美術批評家の存在が非常に大きかったことがわかりました。批評家に目をつけられ盛りたてられたことによって名声を得ていったポロック、しかし一方で批評家の理論を構築するための材料として利用されてもいるわけで、その理論からはずれていく作品は取り上げてももらえず、そのことがポロックを深く傷つけていった…というような、何だか切っても切れないつながりも彼の人生に影響を与えていたのだなあと思いました。

うーーん、言葉でだけポロックを理解しても物足りないよ、やっぱり作品を見たいものですね~!!
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彫刻家・藪内佐斗司流 仏像拝観手引@Eテレ

2011-12-18 | メディア情報
最近展覧会に足を運ぶ時間がなく、テレビの話題ばかりで申し訳ないのですが、「彫刻家・藪内佐斗司流 仏像拝観手引」なかなか面白いです。
この番組のナビゲーターは、昨年の平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター「せんとくん」の件で良くも悪くも?有名になった藪内佐斗司さん。藪内さんの彫刻作品は非常にユニークで、愛らしい童子など私はけっこう好きです。せんとくんが大ブーイングを受けた際も真摯なコメントを寄せていて、とても好感を抱きました。その藪内さん、自身が創られる作品にもよく似たまあるく暖かな感じのお方でした。

さて、番組は仏像の起源やルーツ、仏像の種類などの基礎的な知識や「仏様は大切に伝えられてきた拝むもの。」という拝観の礼儀に始まり、主に奈良のお寺をめぐりながら実際の仏像を拝観し、その技法などが語られます。
藪内さんは、東京藝術大学大学院教授として文化財保存学講座で仏像修復を担当されているので、造る人としての視点での解説にはいろいろと新しい発見があります。また、彼が指導する学生さんたちが修復のために昔の技法で仏像を模作をしている場面なども出てきたりして、こんな若い方たちがたくさん、文化財の修復と保存を志しているのだということに感動を覚えます。

少し前に大ブームを巻き起こした興福寺の「阿修羅立像」。あれは木でも金属でもなく、漆で造られた「乾漆像」なのだそうです。これは長江流域から伝えられた技法で天平時代は乾漆造りの全盛期だったそうで、有名な唐招提寺の鑑真さんの像も乾漆造りです。
この技法は土でつくった像の上に漆で麻布を貼り重ね、乾燥した後に背面に穴を開けて土を掻きだすというもの。平安時代になると消滅したため詳細は不明なのだそうですが、実際に再現しその本質に迫っている様子も紹介されていて大変興味深かったです。

さて、この番組のテキストがまた充実なんですよ!番組を見なくても(それ以上の)内容が十分にわかるカラーの立派なテキスト。なのにたったの1050円!私もまずは本屋でこのテキストを見つけてから番組を見始めたってわけです。年明けにかけてまだ3回ほどありますので、興味のある方はぜひ。
火曜日午後10:25~です。

奈良って行ってみたいお寺がたくさんある。身近なだけに改めて行くことがなかなかないのだけど、この番組を見ると一度ゆっくりと仏像様めぐりをしてみたいなと思います。
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ジャクソン・ポロック(日曜美術館)

2011-12-11 | メディア情報
今か、今かと待っていました!今朝の日曜美術館は、「アクションから生まれた革命~ジャクソン・ポロック~」。
滋賀県立近代美術館のサポーター活動に参加するようになって得た美術の知識のなかで、最大のトピックといえば「抽象表現主義」。その最も代表的な作家ともいえるジャクソン・ポロックは、このアメリカ発の美術の革新の大立役者として私たちの解説の中にしばしば登場します。

今回の放送も、そのような大きな美術の流れのなかでこの作家がどう位置付けられているか、といった内容を予想していましたが、全く違いました。きわめて個人的な、ひとりの作家として独自の画風を打ち立てるための孤独ともいえる戦いを追ったものでした。
そ~なんだ、当然だけど彼もひとりの人間。すごく偶像化というか記号化していた自分に気づかされました。また、革新って印象派しかり、あとから歴史に位置づけられるものなんですね。現在は偉大な作家としてオークションでもものすごく高値のつく彼の作品も、当時は一部の支持者を除いた大多数の世間の人々には全く受け入れられなかったというのです。

実は当館にはマーク・ロスコ、クリフォード・スティルなど抽象表現主義の素晴らしい作品がありますが、ポロックは版画のみでいわゆる大きな作品は持っていません。彼の作品には、ずいぶん前にニューヨークのMOMAで1点だけお目にかかりました。当時はあまり注目してなかったのですが、数ある作品のなかで、展示されていたその様子を思い出せるのだからやはり印象的だったのでしょう。でも作品からすごく強い力の迫力があったかといえば、そんな印象はないんですよね…。

さて、展覧会では、若き時代の具象絵画にもお目にかかれるようです。けっこう骨太のゴツゴツした絵画です。ピカソという大きな存在を乗り越えて独自の表現を獲得するために、アメリカ先住民の表現を取り入れたり、無意識の表現(意図せずに湧き出る表現とでもいうのか)を探求したり、そしてついに辿り着くのが塗料を垂らして描くこと(番組ではポーリングと言われていましたが、私たちはドリッピングと言ってます)でした。
番組で、ポロックが塗料を垂らしているのを下から撮影している映像がありましたが、無意識といいながらも、やはり絶妙のバランス感覚で色と線を組み合わせて作品をつくりあげていったのだろうな~と思わせる様子でした。

若い頃からアルコールに溺れ、酒を飲んで自動車事故で最期を迎えてしまうわけですが、だからこそ郊外に居を移し納屋を改造した広いアトリエがあのような作品の制作を可能にしただろうし、アルコール中毒の治療で出会った無意識を描くことが、あの技法を生み出したりと、不幸ではあったけどポロックにとって欠かせない要素ではあったのだろうと思いました。

展覧会は、愛知県立美術館で来年1月22日まで。
ゼッタイ見に行きたいぞ~。この年末年始の多忙をかいくぐって展覧会に出かけることが果たして出来るでしょうか?!

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たけしアート☆ビート

2011-12-03 | メディア情報
いろいろなことがあった2011年も、もう師走。
今年の我が家の出来事のひとつにテレビ地デジ化がありまして、ブラウン管テレビの上下の切れた小さな画面を見ていた私たちにとって、37型液晶テレビの大きさ・美しさには感動を覚えました。

録画もめっきりカンタンになったので、気になる番組をバンバン録画しちゃうわけですが、けっこう1週間を通してアートに関する番組がありますよね。

まずは当ブログにもよく登場する「日曜美術館」。こちらはNHKらしく、まじめで正統派な感じです。千住明さんが司会をしていますが、彼も分野は違いますがアーティストであるので、そういった視点や発言が真摯で興味深いな~と思います。

そして最近面白くて気に入っているのが同じくNHKの「たけしアート・ビート」であります。「たけしがいま、一番会いたいアーティストに会いに行く」という主旨のもと、美術にとどまらず各界で活躍するアーティストが登場、たけしがすごくはにかんだ様子なのですが、なぜか最後にはゲストと心を通い合わせている…という、誠に楽しそうでうらやましい番組であります。
特に印象に残ったのは、指揮者のコバケンさん(情熱的!)、沖縄の版画家・名嘉睦稔さん(ぜひ現地で作品を見たいと思った)、杉本博司さん(あんな気さくな雰囲気の方とは思わなかった!好感!)、アニメーション作家・山村浩二(「頭山」シュールすぎる!)などなど。出演されるアーティストの皆さんは、人間的にも魅力もあって、たけしとのやり取りがおもしろいです。
あと、この番組の途中に「アート・トーク」という、たけしと東京藝術大学学長の宮田亮平さん、それから週によって奈良美智さんや山口晃さんなど著名アーティストが集まり、世界の不思議アートについて語り合うというコーナーがありまして、それも3人で気楽に言いたいこと言ってる感じで、おもしろいんです。
次回は12月7日、ゲストは三沢厚彦さん!楽しみですね~。

他の美術番組としては、これもNHKの「極上 美の饗宴」、それからBS朝日の「世界の名画~美の殿堂への招待~」(もう番組終わった?)など、次から次へと録画してるのだけど、なかなか見る時間がなくてたまる一方…。
美術番組のつらいところは何かしながら見るってのができないところですね。凝視ですよ、凝視。
他にもおすすめの番組がございましたら、ぜひ教えてくださいませ~。 

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