アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

チームラボ☆アイランド 踊る!美術館と、学ぶ!未来の遊園地

2016-05-30 | 展覧会

楽しみにしていたイベントに行ってきました!多彩な活躍を繰り広げているチームラボによるデジタルアートの展覧会&アミューズメント。場所は、ひからたパークです。

最近よくテレビでお見かけする猪子寿之さんを代表とするチームラボは、プログラマ・エンジニア、数学者、建築家、グラフィックデザイナー、編集者等、さまざまな分野のスペシャリストで構成されている"ウルトラテクノロジスト集団"。お仕事のどれもが、創造的でクオリティが高く、かつとても美しい!

彼らとの出会いは、私の大好きなアートイベント「堂島リバービエンナーレ」。2011年2013年ともに出品されていて、実はアーティストのことはよく知らないままだったのですが、作品の印象は強烈なものがありました。

今回のイベント「チームラボ☆アイランド」のことは、2014年の東京・科学未来館の盛況ぶりを噂に聞いていて、これがひらパーに来ると聞いて、とっても楽しみにしていたわけです。

まず、「踊る!美術館」は5作品。メッチャおもしろかったのは「花と屍 剥落 十二幅対」。日本の神話をテーマに、絵画風アニメーションが12面。屏風絵などによく描かれているような雲がうねうねと動く中から、人や建物や風景があらわれてくるわけですが、それがアニメーションで画面が動くうちに、表面が剥落し、中から3Dの骨組みのようなものがあらわれてくるのです。(意味、わかりませんよね?)…小さな画面に描かれているアニメは、すべて立体で構築され、それが平面に定着されている…、表層が剥がれ落ちて真実の姿があらわれる、しかも偽りの平面を覆す立体の骨組み、でも現実にはあくまで平面の中の出来事である…、みたいな視覚の認識をくるり、くるりとひっくり返されるような感覚が、めちゃくちゃオモシロかったです。また、画面が美しいのよ!

そして「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点」という作品は、大きな部屋に前後に立体的に7面の大きなスクリーンがあり、そこにカラスが軌跡を描いて飛びまわる。スピーディに画面が動くときには、もう、身体ごとのみ込まれそうな大迫力でした!ぜひリンク先で鑑賞してみてください。でも、実際に、その空間に身を置くのとは、全然ちがうんだよな~!

続きまして「学ぶ!未来の遊園地」。こちらは、楽しく遊べて、もう子供さんでいっぱい!「お絵かき水族館」や「お絵かきタウン」では、クレヨンで塗り絵した子供たちの絵が、スキャナでとり込まれると、実際に水の中を泳いだり、町の中を車が走ったり…。すごく楽しいのは、デジタル画面に人が働きかけると、反応してくれること。予定調和じゃなくって、人の予期せぬ動きに、予期せぬ反応を返してくれる、ヒューマンな感じがとっても良いと思いました。子供にとっては、またとない楽しい経験なんじゃないかな。

最後に待っていたのは「クリスタル・ユニバース」のお部屋。宇宙空間のようなキラキラしたクリスタルが、微妙に色を変化させながら輝き、来場者を見送ってくれました。中をもっと自由に歩けたら、なおいっそう楽しかっただろうな。(子供が入り込んで、監視員さんに追いかけられてました。入りたい気持ちはわかるわ~!)

初めて訪れた(多分)ひらかたパーク、ついでに木製コースター・エルフに乗ってきました。ホンマに木で組まれてるし、ギシギシいって恐かった!けどおもしろかった!

「チームラボ☆アイランド」は、6月6日(月)まで。でも、全国いろんなとこで開催されてるみたいですから、機会があれば、ぜひ!

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森村泰昌:自画像の美術史 「私」と「わたし」が出会うとき

2016-05-22 | 展覧会

2014年の感動~!のヨコトリでアーティスティック・ディレクターを務めた現代美術家・森村泰昌さんは大阪出身、地元で初めての大規模個展となった本展覧会が、中之島の国立国際美術館で開催されています。

森村さんの作品といえば、美術史上に残る名画を下敷きに、自らが絵の中の登場人物に扮するセルフ・ポートレイト。マイホーム・ミュージアムの滋賀県立近代美術館にも、ロセッティの作品をもとに森村さんが美しき女性に扮している作品が数点あり、見る人を、ある意味「ギョッ?」とさせています。

いろいろなテーマの作品がある中で、今回は特に、「自画像」を描いた巨匠たちを取り上げ、「自画像」の作品の中で巨匠自身を森村さんが演じています。古くはレオナルド・ダ・ヴィンチ、デューラー、ファン・エイク、そしてレンブラント、ゴッホからフリーダ・カーロ、ウォーホルまで。西洋のみならず、日本の画家である青木繁や松本竣介、はたまた具体の田中敦子やモデルの山口小夜子まで登場します。なんて、豪華なラインナップ!

森村さんの作品は、何かの企画展や常設展で、2~3点見ると、ちょっと変わった作品としてインパクトを受けるのですが、今回、このように初期から最新まで130点もの作品でモリムラ・ワールドを概観してみると、ジワジワと込み上げる感動がありました。何というのでしょう、既にある作品をトレースする飽くなき追求、それを30年以上もやり続ける執着、それでいて軽やかで知的な遊び心も満載…。心底「おもしろい~~!」と思いました。

実際、どのように作品が創られたか、けっこう謎です。どこまでがナマの身体?描いている部分もあるよね?どうやって何人ものモリムラを合成してるんだろう??などなど。別会場である北加賀屋の名村造船所跡地の「森村泰昌アナザーミュージアム」では、メイキングの映像も見れるそう。めちゃくちゃ興味ある!

展覧会場は、テーマごとに壁の色やしつらえなども変えてイメージを盛りたてていて、かなり力が入っていましたね。レンブラントの部屋はクラシックな赤。多くの自画像を残していることでことでも有名なレンブラントの一生を、自画像の中で演じることで追体験しているかのようです。晩年の年老いた醜い容貌…森村さんは撮影だけれども、それを克明に自分の手で描いた画家の心情を改めて思いやってしまいます。見るだけでもそうなのですから、同じ画家として、深く感じるところもあるのでしょうね。

一番おもしろかったのは、ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス」をめぐる連作。実際にプラド美術館で撮影されたとのことですが、いったいどこまでが本当でどこからが虚構なのか…?時間も空間も入り乱れた場面が繰り広げられるのだけど、あくまで静謐な美術館が舞台。この撮影の裏側も知りたいんだけど、この謎にずっと浸っていたいような…。

展覧会では、写真作品130点の他に、60分を超える映像作品も見ることができます。森村さんが、展示作品にも登場した美術家13人に扮し、心情を語ります。撮影のために装ったりメイクしたりする映像も挟みながら、モリムラ流に解釈された美術家たちは、明らかに虚構でありながら真実を感じさせる、不思議なワールドを創出していました。ちょうど、来訪日に森村さんご本人によるレクチャーもあったため、この映像作品が全部見れなかったのが心残りです。

森村さんのレクチャ―とは、「新・美術寺子屋/自画像の話」と題された全10回の連続講座。私が聞くことができたのは、「フェルメール~自画像を描かなかった画家について」。1時間くらいかな~と思ってたら、まさかの3時間半のレクチャー!スライド見せながら、ひとりで話し続ける森村さんの芸術への熱き情熱を感じた時間でした。しかも、これ、10回シリーズで、ほぼ毎週なんですよ!(後から調べたら、毎回、2時間半はやってはるらしい)

しかも長かったのに飽きさせないオモシロイお話でした。森村さんのフェルメールの新しい解釈は映像作品でも語られていますが、確かに不思議な画家ですよね…。森村さんが先人の芸術家をテーマとするにあたって、人物・作品・背景などを深く追求し、いろいろな可能性や解釈を探求し、そうして作品を創り出しているんだってことがよ~くわかりました。すごいなあ~!!

展覧会は6月19日(日)まで。レクチャーは毎週日曜日、要整理券です。「森村泰昌アナザーミュージアム」は、期間限定で6月10(金)~12日(日)のみです。おもしろいです!ぜひ見に行こう!!

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恩地孝四郎展@和歌山県立近代美術館

2016-05-08 | 展覧会

昨年、「月映(つくはえ)」の展覧会を見て、その名を知った版画家・恩地孝四郎の回顧展が、こちら関西でも始まりました。場所は、版画作品をコレクションのひとつの柱としている和歌山県立近代美術館。宇佐美圭司展に続き、今年2回目の訪問です。

恩地さんの版画家としてのスタートは、やはり美術学校の仲間である田中恭吉、藤森静雄とともに「創作版画」の発表の場として創った雑誌「月映」から。日本では江戸時代から浮世絵という木版画がつくられてきましたが、分業体制の新しい浮世絵を目指した「新版画」に対し、下絵の作成・彫り・摺りのすべてを一人で行い、美術作品としての芸術性を前面に押し出した「創作版画」が、明治末期から大正にかけて新しいムーブメントを起こしました。

この最初のコーナーに展示されている木版画の作品たちは、ハガキほどの小さなサイズ。その小さな画面に新しい表現を求めて、しかも直接描くのではない不自由(なのかな?)な技法を駆使して、そうして生み出された濃密な世界が、ギュッと詰まっているかのようです。3人の展覧会では、恩地さんの抽象的な表現が際立っていたように思いましたが、彼の作品のみを概観すると、バラエティに富んだテーマと表現に挑戦していたことがわかりました。

創作当時の3人が若かったこともあり、「月映」には、ほとばしるような抒情性を感じましたが、恩地さんにとって、深く内面を見つめるような「抒情」は生涯を通じて創作のテーマだったのです。この時代の抽象表現は、とても新しかったと思うのですが、そこに見る人を拒絶するような冷たさは一切なく、詩的なタイトルとも相俟って、見る人の想像を伸びやかに喚起する暖かさがあります。カンディンスキーにも通ずる「音楽作品による抒情」シリーズは、まるで音が聞こえるようでおもしろかったですね。

戦後、駐留するアメリカ人に評価され、多くの作品が買い上げられたとのことでしたので、作品の所蔵先がグローバルで驚きました。ボストン美術館や、ホノルル美術館、大英博物館も!国内でも多くの美術館が所蔵しているんですね。こんなに版画界に功績がある著名な作家を存じあげなくて、ゴメンナサイって感じでした。

木版画といっても精緻に彫り込まれ、何色も色を重ねていくと、描いているのと変わらない表現が可能になります。途中、版木が展示されていたのですが、それを見ると、「そうか~、彫ってるんだ…」という実感がわいてきます。もちろん、版面で映すという作業により、独特の色味や形、紙の形跡が生まれるとは思うのですが、ちょっと「版画の意味ってナニ?」とか思ってしまったんですよね…。

それが、録画していた日曜美術館の恩地さんの特集で、実際に技法を再現しているのを見ていたら、「ああ、これか!」と思いました。版木(恩地さんの場合は、紙やひもやいろいろ)に絵の具で色をおいて、上から紙を重ねてバレンで擦る。その擦り方でもいろんな変化が出せる。そうしてソロリと紙をはがした時の、驚き!意外性!そういうのが、版画をつくることの楽しさなのではないかな…と。

美術館では、この展覧会に連動し、コレクション展でも「謄写印刷工房から―印刷と美術のはさまで」が開催されていました。懐かしの謄写版!(ガリ版と言っていましたね) 実用、商用として使われてきた謄写版にも、すぐれた美術表現が可能であることに驚きました。おもしろいなあ!ここでもらった作品リストは、明らかにガリ版刷り!インクの香りが懐かしかったです。

いろいろな美術表現が多様化している昨今ですが、本当に人の手の中で生み出された芸術である版画の世界をまるごと堪能できました。楽しかったです。

「恩地孝四郎展」は6月12日(日)まで。コレクション展「謄写印刷工房から―印刷と美術のはさまで」は5月29日(日)までです! 

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