アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

ターナー展@神戸市立博物館

2014-01-17 | 展覧会

今年初の展覧会は、英国最高の風景画家、ロンドンはテート美術館からやって来た「ターナー展」。日曜美術館@NHKの録画を見て、とっても見に行きたくなり、混まないうちに行こう!と思い立って…とはいえ、平日ながらけっこう賑わっていました。

ターナーの作品は、いくつか見たことはありますが、これほど作品をまとまって見るのはもちろん初めてであり、めったにない機会です。晩年の、まるで現代美術のような革新的な風景画を描いた印象が強かったのですが、生涯を追って見ていくと、けっこう権威に寄り添いながら、パトロンの注文にも応えた、風景画のみならず神話や物語を題材にした端正な作品も多く描いていたのが意外(!)でした。

それでも、どの作品にも充満している「空気感」は特別だと思いました。その秘密のひとつが本展の出品作品の7割を占める水彩画であるというのが、今回よくわかりました。技法の詳しいことはわからないのですが、水彩画の柔らかく色が混じり合う様子は、しかもいろいろな試みを行っていた痕跡を見れば、それがターナーの作品の独特の画面を生み出していったことは明らかです。若い時の作品は、特に透明感にあふれているような気がしました。

「ピクチャレスク」というのは、キーワードのひとつだと思うのだけど、ターナーの時代、風景を見て「絵にできる」と思えることが、すごく特殊であり新鮮な感覚だったのですね~。そういう意味では、現代は一億総ピクチャレスク、どんなささいな風景にも「絵」を求めてカメラを向けてしまう私たち…。今とは全く違う感覚で、観客に受け入れられていた(のか?)作品たち。それまで低く見られていた風景画の可能性を追求し、地位を押し上げたというターナー、私には「風景」というよりは、空気、光、風、水… そのような自然の営みの美を描き出そうと格闘してきた、という印象が強く残りました。

大きな作品もけっこうたくさんあって、見ごたえのある展覧会です。中でも一番「おっ!」と思ったのは、やはり「レグルス」でした。瞼を切り取られた古代ローマの将軍レグルスが見たであろう、何ものも覆い尽くさんばかりの眩い「光」。それほど激しい色合いではないのに、その意図を知ると、光に圧倒されそうになります。描かれている光に照らされている市井の人々が何気ないだけになおさら。

晩年の「これは何?」という作品をもっと見たかった気はしますが、ターナーの知らなかった面をたくさん見ることのできる貴重な展覧会でした。

展覧会はまだまだ始まったばかり、4月6日(日)まで。神戸市立博物館は、常設展を見るとやっぱ博物館でした!

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2014年謹賀新年 ~昨年の展覧会の振り返り

2014-01-02 | 展覧会

いつも当ブログにお越しくださっている皆さん、あけましておめでとうございます!今年も、ワクワクする美術を求めてガシガシ出かけ、タイムリーに記事をお届けできるようがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

さて、2014年は健康的にスタートしました。昨年は見学に留まった「新春びわこ健康マラソン(3㎞)」に出場!12月にたった2回のトレーニングで挑む無謀さでしたが、思ったより走れて楽しかったです。今年はこの調子で身体を鍛えよう~。

ところで、昨年の展覧会歴を振り返りますと、一昨年を上回る23本!年明けの福岡に始まり、東京、名古屋、香川、広島と、自分の目で見たいものを追い求めて出かけられたのは良かった。距離を理由にあきらめたくないですからね!それでもまだまだですね。行きたくて行けなかった展覧会もたくさんありました。

そんな中で、私が選ぶ2013年の展覧会BEST3は…??

 第3位:Chim↑Pom展「広島!!!!!」(旧日本銀行広島支店)

ついこの間でしたので、印象が鮮明ってのもあるのですが、広島の地のあの場所だからこそのインパクトはものすごかったです!空間を生かしているとか、そんな生ぬるい感じじゃなくて、まさにマッチアップ!Chim↑Pomが空間に挑戦し、建物がChim↑Pomの作品に挑みかかる…みたいな。テーマは重いのだけど、それを古い保管棚にしまっとくのではなく、今を生きる私たちの問いへと導く手法は、とっても見事だと思う。彼らの感性に響けることは、とても誇れると思いました。

 第2位:「大竹伸朗展 憶速」(高松市美術館)

行って良かったですね~、この展覧会は。作品を見たり、著書を読んだりして、私なりにつくりあげている大竹伸朗像の、一番根っこの部分を補完してくれる貴重な展覧会体験でした。さらに、丸亀で最新作を見ることができ、ずっとこの作家を追いかけていこう!と決意を新たにいたしました。(写真は丸亀の猪熊玄一郎美術館で撮影)

 第1位:特別展覧会「狩野山楽・山雪」(京都国立博物館)

やはり1位はコレですね~。本当に驚き!の展覧会。こんな作家がいたなんて!!本当に見に行ってよかったです。実物を見てこそ受けるインパクトが相当なので、もし私のブログを読んで行って下さった方がいると嬉しいのですが…。ホント、眼に美味しいと言いますか、見ても見ても飽きないおもしろさ。これは会場がどうのより、作品自体が力を持っていることの素晴らしさを思い知った展覧会でした。しかも時代を超えて、これほどの衝撃を与え得るというところが、大いに加点でした!

いやあ、3つに絞るのは難しかったです。同時代を生きる作家としては、JRもとても良かったですし、めったにお目にかかれない展覧会として、「フランシス・ベーコン展」や「貴婦人と一角獣展」なども、素晴らしかったです。

今年は、昨年東京で話題になって2月に大阪にやって来る「アンドレアス・グルスキー展」、そして「ターナー展」はぜひ行きたいです。そしてそして「バルテュス展」が開催されます!しかも関西にもやって来る!けっこう大きな展覧会が関西にも巡回されるようになってきていて、そんなところに景気の回復を実感する今日この頃です。

それでは、皆さまも、今年1年、ぜひ素晴らしいアート体験と出会われますよう、お祈り申し上げます。

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