アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

土と戯れた池田満寿夫

2010-05-23 | アーティスト
少し前の話ですが、三重県にあるパラミタミュージアムに行きましたのでご紹介します。

この美術館の目玉のひとつとして、池田満寿夫の「般若心経」シリーズがあります。
池田満寿夫といえば、アーティストであることはもちろん知っているし、芥川賞も取ったりしていて、ひと頃よくテレビなどにも出ていたのを覚えていますが、代表作といわれるとよくわからなくて人物像としてはぼんやりしている印象です。そんな彼が晩年には陶芸作品の制作に打ち込んでいたとのこと、そんなことは全然知りませんでした。
「土と火が創造と破壊を繰り返す〝陶"の世界に輪廻転生を感じ」たとの言葉のとおり、彼の陶芸作品は本当に土そのままを固めて焼いたような、滑らかな表面などとは無縁な、岩肌とか瓦礫を思わせる塊に何とも言えない表情の仏のお顔がついており、それが壮大な時間の流れや人工的なもののはかなさなどを感じさせてくれました。

この美術館は、何と!写真OKでした。こういうのも美術館サービスとしてはありだな、と思いました。だって自分なりのアングルを探すって楽しいもの。



この器のような作品には、般若心経が一文字ずつ彫られていますが、その作り方は陶芸の常識を超える土を機械で押し出して作るというもの。そういうことにこだわらないのは池田らしいといえるのでしょう。

マルチタレントゆえ未だ国内で正当な評価がなされていないと言われる池田満寿夫に、ここで出会えてよかったなと思いました。


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長谷川等伯@京都国立博物館

2010-05-06 | 展覧会
今年のGWのメインイベントのひとつ、京都へ「長谷川等伯」を見に行きました。HPによると夕方が待ち時間も少なくすいているようだったが、やっぱりスゴイ人で人気の絵の前は4重5重の人垣だった!我ながらこういうところに割り込むエネルギーはけっこうあるなあ、と思う。

さて、長谷川等伯とは何とも不思議な画家でした。能登の絵仏師として出発し、京都に出てからは狩野派と張り合って絢爛な作品を生み出し、そして行き着いたのは墨の幽玄な世界。多彩な作品で、そのどれもがスゴイ。
肖像画はとても緻密で、髪の毛の一本まで丁寧に描かれていた。肖像画に描かれた人は、そのあまりの写実ぶり、内面まで見透かされそうなのに驚いたのではないだろうか。お坊さんの絵に必ず描かれている靴がかわいらしかった。
いくつかお部屋がテーマで分かれていたが、やっぱり一番圧倒されたのは、『桃山謳歌―金碧画―』のコーナー。目玉である「楓図壁貼付」のドドーンとした木の幹は大迫力。もともともっと高さのある絵だったそうだ。近寄ったり離れたりして眺めてみる。よく見ると細かく描き込まれているというより、何と言うかデザインちっくだなあ、と感じた。
デザインちっくと言えば、「柳橋水車図屏風」はまさにデザイン化されていて、とてもおもしろいと思った。柳が類型化されてるんだけど生きてるみたいだった。「波濤図」の波もすばらしかったなあ!!

後半は、水墨画へ傾倒していった作品群が展示されていました。墨の濃淡で細かく描かれている作品もあるが、筆を叩きつけたような自由な筆致に感心してしまった。特に「枯木猿猴図」のお猿さんのホワホワとした手触りが感じられるような毛の描き方と、まるで墨が飛び散ったような木の描き方の対比。それでも木らしく見えるのだから素晴らしい。
そして最後にたどり着くのが(展覧会でも)「松林図屏風」。この何ともいえない空気感はなんだろう!松は筆をシャシャっと走らせたように描かれているけど、離れて見ると本当の松のようで、モノクロームの写真を見ているみたいだ。杉本博司さんが、テレビ番組で自身の作品との近さを語っておられたが、彼の焦点のぼやけた写真作品を見た感覚と確かに似ていると思った。
それにしても、この作品の前からは人垣が切れることがなかった。たった一人でひっそりとした展示空間でこの作品と対峙できたら、どんなにか幸せだろう~と、館の人をとってもうらやましく思ったのでした。

いよいよ5月9日まで。お見逃しなく!
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