海外旅行の魅力。やはり、日頃まみれている日常から隔絶され、日本の常識が通じない環境に放り込まれ、自分の価値観を揺さぶられながら、見たことないもの・聞いたことないもの・味わったことないものを体験することじゃあないだろうか。
インドから始まった海外への旅熱が、『旅行人』を初めとする雑誌・書籍へと結実する編集人、蔵前さんの80年代から現在への遍歴をまとめた興味深い本。けっこうページ数は多くてぶ厚いんだけど、軽い紙を使っているのか、持ち運びは苦にならず。ちょっとくすんだ紙質がインドっぽい…?(こじつけ)
しょっちゅう書店には行っているのだけど雑誌『旅行人』はあまり認識がなかったなあ…。リアルタイムに読んでみたかった気がする。でも蔵前さんとこの出版社が出したグレゴリ青山(グレちゃん)の本はけっこう読んでいるし、今回我が家の本棚を掘り返してみると98年出版の「旅行人傑作選1 世界の果てまで行きたいぜ!」という本が出てきた。これは貴重だ!『旅行人』の歴史を知った今読み返すと、いっそうオモシロいだろう。
思えば私の青春時代と重なる90年代、よく海外旅行に出かけたもんだ。休暇は長くても10日間だったので、もちろん蔵前さんのように、バックパッカーとかは無理なんだけど、いわゆるフツーじゃないところに、いろいろ行った。ネパール、エジプト、トルコ、ケニア、メキシコ…。インドも興味はあったんだけどね~、トランジットで立ち寄ったときに水でやられてから尻込みしてしまって、まだ旅はしたことがない。「価値観が変わる」という声は、よく聞きます。
この本を読んでみると、私がよく出かけていた90年代は、今思うと、きわめて世界が平穏で旅行がしやすい時代だったんだってことがわかる。エジプトやトルコは、今ならちょっと行けないものね。幸せだったんだな~、しみじみ。
知られざるバックパッカーの世界は、超ディープです。そしてそんな世界に生きている人が思いのほか多いのにも驚いた。(今の若者は、どうなんだろ?)世界のいろいろな街の旅人向けの宿に、日本人が集まって情報交換できる場所がそこここにあるとは。人間は本来、一人で何とかする強靭さと、生きるために人とつながるしたたかさを持ち合わせているものなのだな、と感心する。そして自分もそんな力を持てる、発揮できる人でありたいな~と思うんだ。フィールドが「世界」っていいなあ!
ちょっとご無沙汰している海外旅行、億劫にならないうちに、また出かけたいものだ。そして、旅人が心配なく出かけられる平和な世界であってほしい。