アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

≪ST/LL≫高谷史郎 @ びわ湖ホール

2016-01-27 | その他

地元のびわ湖ホールで、貴重なステージが見られるチャンス!と思い、当日券を買い求めて見に行くことにしました。

高谷史郎さんは、アーティスト・グループである"ダムタイプ"の創設メンバーの一人。今回の公演のディレクションをされています。ダムタイプについては、アートへの興味が芽生えた頃から聞き及んでいて、一度は見てみたいな…と思いながら、今回までご縁がありませんでした。調べてみると、昨年の堂島リバービエンナーレで、最も印象的だったアーティスト池田亮司さんもメンバーであったとか…。ホホ~。

実のところ、いったい何が見られるのかもわからなかったのですが、舞台上には、実に幻想的で不思議な空間が出現しておりました。登場するパフォーマーは、女優の鶴田真由さん含め4名。舞台装置は極めてシンプル。正面にはスクリーン。目を惹くのは、舞台上に薄く張られた水、これがさまざまな効果をもたらし、視覚的にも聴覚的にも空間に豊かな表情を生み出していました。

パフォーマーたちの身体の動きは、実にしなやか。ちょっと他に目を奪われているうちにするすると現れたり、いなくなったり。ダンスというわけではなく、演じているのだと思うのですが、とても抽象的です。ステージからかなり遠い席だったので、顔の表情までわからなかったのは残念…。

今回の作品は、『わたしたちの認識を超えた「時間」と「空間」についての考察』がテーマということで、昨年の2月にびわ湖ホールのリハーサル室で制作が開始されました。ステージでも、途中、スクリーンにびわ湖の湖面らしきものが映っていたように思うのですが、舞台上に湛えられた水面の揺らぎといい、このびわ湖畔の地に触発されて創られているところもあるのかな、と想像しました。

途中、アイヌの子守唄らしきものの朗読などもあり、この作品に込められているストーリーやメッセージを、もっと深く読み解きたいところです。

映像や音楽は最先端であり、でもステージ上には肉体性と実体があり、クールで透徹した世界観が繰り広げられる…。いや~、一度見るとはまってしまいそう…。またチャンスがあれば、ぜひ見に行きたいです。

びわ湖ホールは、ホント、素敵なところなんですよ~。ホールの中の芸術を盛り上げるかのような、美しいびわ湖の風景。めちゃめちゃ寒かったけど、行って良かったです!

 

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映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』@立誠シネマ

2016-01-18 | 映画

 

楽しみにしていた映画鑑賞に、やっと行ってまいりました。場所は、立誠シネマ、木屋町通に面する元・立誠小学校を活用してさまざまな話題の映画を上映しています。以前、大興奮だったウィリアム・ケントリッジの展覧会が開催された場所でもあります。なんだか不思議な時間と空気が流れている場所。

これは、ある意味、異色の映画でした。ドキュメンタリーの主役であるはずのアーティスト内藤礼さんは、わずかなお姿と少しの声のみの登場で、まつわるエピソードも前半だけ。そして後半には、5人のさまざまな事情をかかえる女性たちが登場し、豊島美術館で一緒に時を過ごします。ナレーションは、監督ご本人の中村佑子さん。

これらをつなぐものが、「母型」。瀬戸内海に浮かぶ島、豊島につくられた白いドームのような豊島美術館。建築は、SANAAのメンバーである西沢立衛さん。この建物には開口部があり、そこからは自然の光や風、雨が吹き込みます。この中で展開されているのが、内藤礼さんの作品「母型」。床のそこここから水が湧き出て、小さな美しい粒となってころがる…。

この美術館できたのは2010年。そのとき開催された瀬戸内国際芸術祭に出かけたのだけれど、豊島美術館はあまりの混雑ぶりに立ち寄ることができませんでした。(そのときの豊島の様子はこちら) それ以降、訪ねるチャンスがないのですが、やはりこの美術館に行ったことのある人ない人では、映画の感じ方がずいぶん違うかもしれません。建物の内外の境目のない感じ、床の質感、空気の匂い、音の聞こえ方…。そんなものが映画体験をよりいっそう豊かにし、そこに集った女性たちの心情に共感できるのではないでしょうか…。

内藤礼さんは、ずっと昔から気になっている作家です。1991年、佐賀町エキジビットスペースで展開された「地上にひとつの場所を」を見に行ったことは、今ではかなりの貴重な体験です。天幕のような空間に入っていくときの密やかなドキドキ感、靴を脱いであがった柔らかな布の感触を、今でも覚えています。そこに展開されていた小さくてはかなげなものたちと淡い光を、息をのんで見つめた、その体験自体が作品であったのだと感じます。

それから、直島で作品を見て以来、内藤礼さんのお名前を聞くことは、本当にまれでした。2009年の鎌近(もうすぐ終わってしまいますね…)の展覧会は、ホント行きたかったな~。露出も少ないので、かなり謎に包まれたアーティストという印象です。そういう意味では、この映画は、内藤さんをよく表現しているといえます。

それでも中村監督が、長い時間をかけて内藤礼さんと信頼関係を築いていった暖かい軌跡がうかがえました。そのような関係性のもと、監督の個人的な体験が語られ、登場する女性たちの心情が織り成した、私家集のようなドキュメンタリーでした。個人的には、一番若い中学生の女の子の表情や言葉が、グッときたなあ。豊島美術館の中での映像は、本当に美しかったです。

今年は、瀬戸内国際芸術祭の年ですね。豊島美術館、ぜひ行きたい!でもどうなんでしょう、あの映画のように静謐な時間を体験できるものなのでしょうか??

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2016年 謹賀新年 ~昨年の展覧会を振り返る

2016-01-02 | 展覧会

あけましておめでとうございます!今年は本当に暖かく穏やかなお正月です。明るく前向きな気持ちで新しい年を過ごせる気持ちになりますね~。

昨年、鑑賞した展覧会は、このブログに掲載したもので20本、それ以外も合わせると25本ほどだったでしょうか。毎年、この24、5本の壁を超えることができません。仕事の休日数と相関関係があるんだかないんだか…。

そんな中、私が選ぶ昨年の展覧会BEST3を発表いたします!

第3位「生誕110年 片岡球子展」(愛知県美術館)

大好きな片岡球子の作品を、初期から晩年まで一堂に見ることができた貴重な機会でした。画家の人生を辿り、画風の変遷を重ね合わせて見ることができる。特に長く教師を続けていて、辞めた50才以降の作品の充実ぶりは素晴らしく、自分自身の年齢を考えると励まされるものがありました。実物を見てこそわかる、表面の作り込みにも感動!

第2位「琳派 京を彩る」(京都国立博物館)

やはり2015年は琳派をはずせません。京都の力を結集して名作をずらりと揃えた展覧会には、恐れ入りました~。「琳派」の流れが、今の日本の美術やデザインに与えている多大な影響を改めて思い知ることができました。俵屋宗達の「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の流れるような鶴の動きは、ホント素晴らしかった!

そして、第1位は「堂島リバービエンナーレ2015」(堂島リバーフォーラム)

 

いつも新しいアートとの出会いをもたらしてくれる「堂島リバービエンナーレ」。今年は何と言っても写真の池田亮司さんのインスタレーションがおもしろかった!音、映像、シチュエーション、視覚、聴覚、なんだか体じゅうで感じるような感覚が新しい。めちゃめちゃ先端のようで、なぜかまったり癒されてしまうところも不思議で…。このアートイベントも3回目ですが、こじんまりした会場ながら、バラエティに富んだ作品が見れて楽しいんですよね。テーマも、地球や水、川といった自然の営みにつながっている感じが良くて。次回も楽しみにしています!

 

改めて振り返ってみますと、あまり大きな目玉となる展覧会は少なかった(もしくは見に行ってなかった)ように思います。それでも、本数が少ないだけに、ひとつひとつの展覧会には、大きな動機を持って出かけました。

「北山善夫展」や「バーネット・ニューマン」などは、はるばる遠くまで出かけたかいのある展覧会だったと思います。また、東京で見た「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」や「Don't Follow the Wind」などは、今の時代だからこそ見るべき展覧会であったと思っています。

昨年もいろいろなアートとの出会いがありました。今、私にとってさまざまな情報源となっているのは、やはりTwitterです。これがなければ、本当に何ものにも出会えてなかったのではないでしょうか。これからは、自分の興味に沿った情報へのアンテナを張ることが、とても大事になってくるように感じます。

日頃、当ブログをご覧くださっている皆さまには、本当に感謝いたします。皆さまの興味に少しでもお応えできたなら、大変うれしく思います。今年も、相変わらずボチボチな感じになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。心わくわくするアートとの出会いに期待いたしましょう!

コメント (2)
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