アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

桃山時代の狩野派~永徳の後継者たち

2015-04-27 | 展覧会

今年の初夏は、京都が熱い!3月から始まっているPARASOPHIA(~5/10)はまだ行けてないのですが、他にもKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2015(~5/10)、京都銭湯芸術祭2015(~5/17)、そしてゼッタイ行きたいヤゲオコレクション(~5/31)などなど、アートイベントが目白押しなのだ。

そんな中、見逃せない展覧会として、狩野派の展覧会に出かけてきた。会場は、これまでも伊藤若冲、雪舟、長谷川等伯狩野山楽・山雪鳥獣戯画…数々のクオリティ高い展覧会を見せてくれている京都国立博物館、新設された館蔵品ギャラリーである平成知新館への再訪も楽しみだ~!

さて、狩野派は、室町時代から江戸時代にかけて、時代の権力者に寄り添ってきた御用絵師集団である。何といっても知名度ナンバーワンは狩野永徳だが、今回は「後継者」ということで、永徳の作品はなく、光信、孝信、山楽、探幽らを中心とした数々の壮麗な作品が展示されている。

100人程の絵師を抱えた一大工房であったとのことで、先日見たテレビ番組では、美術ライターの橋本麻里さんが「今でいうところのゼネコン」と評していたが、城を始めさまざまな建造物の障壁画、襖、屏風への絵画制作は、どちらかというと「芸術の制作」ではなく、「装飾工事の受注」だったのかも。その中に、驚くほどのクオリティの高いものもあれば、それほどでもないものもあったのだろうし、現存しているものは、本当にごく一部、きっと良い作品だから残ったのだろうと推察する。

特に戦国の混乱の世の中にあって、狩野派は生き残りをかけて、天皇・徳川家・豊臣家といった複数の権力者に対して、それぞれ絵師を仕えさせるという戦略をとったとは驚きだ。豊臣家に仕えた山楽は、豊臣家の滅亡で命の危機にもさらされたが、その後京都に留まり「京狩野」の祖となった。そこで山雪が誕生したと思うと、感慨深いものがある。

装飾的な松や鳥などを描いている襖絵などは、背景も金ピカでいかにも権力を誇示しているような壮麗さにあふれている。一方、洛中洛外図のような街の様子や当時の風俗が描かれている作品は、じっくり見ているととってもおもしろい。いろいろな画家のいろいろな作品があって、ひと口に特徴を述べることは難しいな、と感じた。

最後に展示されていた探幽の作品は、ちょっと他とはちがう独自性を感じて素晴らしいな、と思った。彼は幼いころから画才を発揮し、江戸幕府の御用絵師としての地位を不動のものとしたということだ。

平成知新館では、永徳とライバルであった長谷川等伯の作品が展示されていた。う~ん、私的には絵のおもしろさとしては、等伯に軍配をあげたい…。

それより、ギャラリーの中に絵巻物のお部屋があるのだが、「神仏の霊験」として展示されていた15~16世紀の作品のおもしろかったこと!神仏のありがたさを教える勧善懲悪ストーリーが絵と詞で描かれているのだが、絵がまるで現代の「マンガ」!わかりやすくってユーモアにあふれている。鳥獣戯画だけがルーツじゃないわ~と改めて感心した。ああいうの、いっぱいいっぱい見てみたい!

「狩野派」展覧会は5月17日(日)まで。永徳の作品はないからか?さほど混雑はしていなくてじっくり堪能できました!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アートにとって価値とは何か(三潴 末雄)

2015-04-20 | 

  アートにとって価値とは何か

最近、スマホに時間を取られているのと、目が弱ってきたせいで、すっかり読書量が減ってしまいました…。読みたい本はいっぱいあるのになあ~。

さて、本日紹介するのは、ミヅマアートギャラリーを主宰されている三潴末雄さんによる半生を記した自著。ミヅマアートギャラリーは、山口晃さんや会田誠さん、宮永愛子さんなど、今をときめく現代美術家を輩する画廊であり、インパクトが強烈だった「ジパング展」をキュレーションされていたことも記憶に新しい。会場となった高島屋の心意気に感心していたが、本書の中で、実は三潴さんによる戦略だったことがわかった。日本のアイデンティティを示す現代アーティストたちを広く知ってもらうために、昔から文化の大衆化を担ってきた百貨店を選び、またその外商による販売力も狙ってのことだった、と。

本の帯にもあったが、三潴さんは常に「闘っている」という印象を受けた。美術の世界に入る前、学生時代には学生運動に身を投じていたというのは意外だった。ミヅマアートギャラリーが開廊したのは、バブルが崩壊した直後の1994年。経営的にも苦しい中で、三潴さんは当時の輸入超過の美術をめぐる状況に憤り、この状況を打ち破る日本の画家を発掘し紹介していくことを決意する。

これは、村上隆さんの本にも書かれていたが、美術業界においては、やはり今なお「西洋美術の文脈」で作品の価値が評価されることが世界基準であり、そこに乗らない限りは「お土産物」でしかない、ということが本書の中ではとても強調されていた。これって、単なる美術ファンにはあまりよくわからないのだが、きっとアジアで活動する作家にとって実に巨大な壁として立ちはだかっており、また「商売」となると、ホントに切実なんじゃないか、と感じる。

そこに抗って、三潴さんが擁したのは、前述の3名はじめ、鴻池朋子さんや池田学さんなど、「日本」を根底に持ちながらも、新しい解釈で他にはない表現を繰り広げている作家たちだ。彼らの作品を見ると、深い血の奥がざわめくような感覚を覚え、異世界を見たのとは違う驚きがある。これは同じ日本の作家だから、としたら、外国の人が彼らの作品を見た時、いったいどんな感覚を持つのだろうか?興味ある。

三潴さんは、現在、日本に留まらず広くアジア、とりわけインドネシアの作家に注目しているとのこと。中国やシンガポールにもギャラリーを開き、豊饒な土着文化を持ちながらユニバーサルな作品を生み出す才能の発掘を行っている。

西洋に出かけ日本のアイデンティティを背負って闘った画家として、藤田嗣治と岡本太郎の二人を讃え、今の最先端アートとしてChim↑Pomやチームラボを評価する三潴さんには、共感するところがとても多かった。先日、日曜美術館で特集されていた「光琳は生きている」でも、三瀦さんが評価するアーティストが多く出演していたのは、そろそろ三潴さんの闘いの戦果があらわれてきたってことだろうか。

「価値観」って難しい…。知らないうちに染められているんだろうな~。それを揺さぶってくれるようなアートに、これからもどんどん出会いたいと思う!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フェルディナント・ホドラー展

2015-04-07 | 展覧会

1月から始まっていて、今年に入って真っ先に行きたかった展覧会だったのに、あっという間に時間はたって、結局最終日に訪ねることになったのでした…。場所は兵庫県立美術館。

スイスを代表する画家、ということでしたが、私は今回の展覧会で初めて知った画家でした。40年ぶりの回顧展だそうですが、あまり知られてませんよね?そーでもない??でも、めちゃくちゃ見たかったんです…、なぜなら絵の中に「リズム」があることにとっても興味を持ったので。

ホドラー(1853-1918)はまさに世紀末を生きた画家で、不安に満ちた時代を背景に、クリムトなどと少し似た匂いがします。画家になる前は看板職人をしていたこともあってか、画面の背景などが装飾的で、人物を描く際にもふち取りが見られたりして、決して平面的ではないのだけれど、とても独特な画風だと思いました。

おもしろいなあ!と思ったのは、やはりリズムに充ちた人体表現。「オイリュトミー」と題された作品に描かれた5人の老人、「死」に向かって歩いているということですが、軽くうつむいて歩く様は、5人それぞれでありながら、妙に調和したリズムに充ちていて、衣服の白さも相俟って、むしろ清々しい「生」に充ちているような印象。

この作品以降、ホドラーの関心は当時スイスの音楽家が提唱した前衛的な舞踏「リトミック」の思想とも呼応し、身体の動きによって表される人間の感情と、身体が生み出すリズムの表現の追求へと向かいます。

確かに描かれている人物は「動いている」ところであり、その一瞬を捉えながらも、そこはリズムがある…リズミカルな動きを切り取っているといえばいいのか…?そしてそのポーズの意味するところをいろいろ想像してしまう…。描かれている人物は神話的で崇高さを感じさせます。絵を見ていると、そのポーズを取ってみたくなる!(ってホントにやってしまいました)

彼が愛したアルプスの山や湖の美しい風景も、本当に同じ場所を繰り返し描いていて、それが並べられて展示されていること自体にリズムを感じるし、1点1点の絵の中にも雲の動きや水のさざ波、鳥の描き方なんかもとてもリズミカル。リズムがあるということは、何だか軽やかなんですよね~。

晩年には、市庁舎や博物館の建物の中の壁画を多く手がけました。その下絵なども展示されていて、最初のイメージから、どんどんリズムが整えられていく様子が窺えて興味深かったです。機会があれば、実物を見てみたいなあ~!作品が紙幣になったり、そういう意味でも本当にスイスの国民的な画家だったのですね!

また一人、「こんな画家がいたなんて!」という新鮮な驚きと感動がありました。大変おもろしかったです。

会場入口にはこんなんもありました。3D!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする