アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

「ビアズリーと日本」@滋賀県立近代美術館

2016-02-21 | 展覧会

ビアズリーという画家の印象は、くっきりしたモノクロの画面と充満する妖しい雰囲気…!でも、考えてみると、彼自身のことも他にどんな作品があるかも、あまりよく知らないんですよね。というわけで、ビアズリーについて知る良い機会となりました。

オーブリー・ビアズリーは、19世紀末にイギリスに生まれ、なんと!25才の若さで亡くなりました。彗星のごとく現れた若き才能が活躍したのは、わずか5、6年程だったといいます。彼を一躍有名にしたのは、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の英訳版に飾られたイラストでした。

展覧会では、美しいビアズリーの肖像写真に始まり、初期の風刺画や、世に出るきっかけとなった『アーサー王の死』、そして『サロメ』をはじめとする文学作品のイラスト原画や掲載書籍の数々が展示されています。おもしろいのは、その頃、西洋の美術に強い影響を与えたジャポニスムにまつわる展示が同時に行われていること。北斎漫画をはじめとする浮世絵、伊勢型紙、それを取り上げている当時の書籍などなど。ビアズリーの作品には、確かに影響が見られる気がします。特に線描で囲まれた空間の生かし方などは日本画や浮世絵を思わせるし、チラシ掲載の作品にもあるように、平面的な装飾などは、型紙の引用があるように感じます。

でも、独特なんですよね!人物の表情がもたらすものだろうか…?黒と白だけのシンプルな世界なのに、ムンムンと充満する色めきときらびやかさ。何なのでしょう!!

興味深いのは、ビアズリーが美術担当として複数の雑誌の創刊に関わっていたこと。「イエローブック」や「サヴォイ」といった現物も展示されていまして、(書いている内容はわからないのだけど)記事とビジュアルが一体となった美しい雑誌でした。「月映」もそうだったんだけど、美術家が雑誌を作ろう!という当時の動機について、もっと知りたいな~、と思います。(今はあまりない気がして…。どうなんだろ?)

展覧会の後半は、ビアズリーに影響を受けた日本の作家たちが紹介されていました。まず、ビアズリーを日本に紹介したのは、かの有名な雑誌「白樺」だそうです。高畠華宵など多くの画家がビアズリーの作風を反映させながらも、独自の「サロメ」を描いていたのはおもしろかったです。

また、「月映」の3名の木版作品も、モノトーンの魅力に影響を受けたとして紹介されていました。再会できて、嬉しかった!そして、昭和初期の資生堂のビジュアルをつくった山名文夫のイラストもとっても素敵でした。

ビアズリーを軸に、日本美術が還流しているような、そんな美術のライブなうねりを感じることのできる興味深い展覧会でした。よかったです!

そろそろ春の息吹が感じられる美術館を、ぜひ訪ねてみてください!展覧会は3月27日(日)まで。

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「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」@国立国際美術館

2016-02-07 | 展覧会

「エッケ・ホモ」とは、ラテン語で「この人を見よ」を意味します。新約聖書の中で、罪を問われ鞭打たれたイエス・キリストが、棘の冠と紫の衣をかぶせられ、人々の前で発せられる言葉。磔刑へとつながるキリストの受難として、多くの名立たる画家がこれを主題に作品を描いています。

美術において、「人間」を描くのは主要なテーマであり、古今東西を問わず普遍的。特に近現代以降、人間の存在自体を否定しかねない複雑な時代において、作品に描かれる人間は単なる「人物像」ではない様相を示し始める…。そんな、人間の存在を問い直すような作品が約100点、国立国際美術館の所蔵品を中心に展示されています。

ちょっと重苦しいテーマのようだが、展示されている作品は、有名な作家のものがたくさんあって興味深かったです。最初のコーナー「日常の悲惨」では、荒川修作、工藤哲巳、村岡三郎などの作品から、60~70年代の、破天荒で猥雑に蠢くような迫力が感じられました。それなりに古びていながらもノスタルジーに抗っているようで。

次のコーナー「肉体のリアル」の目玉は、小谷元彦さんの映像作品「Terminal Impact」でしょう。観客の目が釘付けだったもの!これは、以前、京都芸術センターでの小谷さんの展覧会で見たもの。2回目だけど、やっぱりインパクト大きかったし、特に今回の展覧会のテーマの文脈でとらえると、ホント、「人間って何だろう?身体が生きてるってどういうこと?」みたいな疑問が湧いてきます。

続いて、小谷さんの「New Bone」骨の作品と、フランシス・ベーコンの絵画が2点。この流れは、まさしく「人間」を観念的存在から単なる「部品」や「骨」や「肉」へと移しかえるような、J・G・バラードの作品世界(椹木野衣さんの「後美術論」精読中~)を思わせる展開で、興奮しましたヨ!

最後のコーナー「不在の肖像」では、人物が不在の中でその存在を浮かび上がらせる作品を集めていました。内藤礼さんの繊細な作品「死者のための枕」や、オノデラユキさんの「古着のポートレイト」、塩田千春さんの「トラウマ/日常」など、少し心が凍るような不在感を感じる作品。ヨーゼフ・ボイスのフェルトのスーツもありましたが、こちらの方が時代が古い分、いくぶん牧歌的な感じもしました。

一番驚いたのは、孫原&彭禹という中国人のアートユニットによる「I am here」という作品。実物大(より大きめ?)に作られたイスラム系の兵士が壁の穴を覗き込んでいます。ごっつい身体なんですが、近寄って手とか見てると、まるでホンモノぽくて、動き出すのではないかと少し恐怖を感じました。初めて知ったアーティストでしたが、調べてみるとけっこう過激な作品をつくっているようですね。覗いている穴は、壁の反対側から覗き返すことができ…目が合います。

そんなこんなで、思いの外バラエティに富んだ作品を楽しむことができた展覧会でした。同時に開催されていた竹岡雄二さんの「台座彫刻」の展示もおもしろかったし、コレクション展では、リヒターの抽象絵画や、ニコラ・ド・スターンの作品を初めて見ることができ、収穫でした。

それぞれ展覧会は、3月21日(月・休)まで。

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素敵な書店、「誠光社」に行ってみた!

2016-02-02 | 

個性的な品揃えで知られている書店「恵文社一乗寺店」の名物店長だった堀部篤史さんが、独立してご自身のお店「誠光社」を開店されました。昨年11月のオープン以来、SNSで流れてくる来訪者の声や、店とか商品とかの写真を見てると、興味ワクワク~。先日、ついに訪ねてまいりました。

場所は京阪線・神宮丸太町駅から徒歩5分ほど、庶民的な雰囲気の路地を入ったところに、ありました!「誠光社」の看板が。

京都の町屋らしい奥に長い店内、明るい木板のナチュラルな雰囲気。奥のレジカウンターには、噂の堀部さんがいらっしゃいました。こぢんまりしているのだけど、書棚に詰まっているどの本も、見事に興味深いです。まさに、店主のテイストで「編集」されている本の並び、お~、この本の横に、これ来るか~!みたいな、楽しく新鮮な驚きがいっぱいです。新刊もあれば、古書もあり。まさに本のセレクトショップ。

堀部さんが、このお店を始めた理由は、こちらの記事で拝見。本の流通の裏側って、思いの外フクザツそうですね…。どんな商売でも、支持してくださるお客様に喜んでもらえる品揃えをして、ロスなく売り切っていくこと、それが目指すべきところで、しかも相当に難しいことなんですよね。そんな全うな商売の原点に挑戦されてるんだな…と感心いたします。

小さなお店なんだけど、お客様もけっこう入ってました。じっくりひとつひとつの棚を眺めているとあっという間に時間がたちます。こんな素敵なお店を応援する手立てとしては、もう、売上に貢献するしかない!と思っているのですが、時間的余裕がなく、とりあえず、こんな小さな買物になりました…。

  現代アートの行方 (はとり文庫 2)

三瀬夏之介さんの作品には、とっても興味を持っているのですが、なかなかお目にかかれません。(昨年のパラソフィアの関連展、見に行こうと思っていた日のお昼に終了してしまっていたのは、大きなショックでした…。)

いかにも、他の書店で売ってなさそうな本を選んだつもりでしたが、Amazonでも売ってた…。次はゼッタイ、そこでしか買えない本を狙います!

レジカウンターの前には、小さな展示スペースがあって、かわいらしい折り紙細工が飾られていました。期間限定で、いろいろな作品が見られるようです。また、時々は、ゲストを招いてのトークイベントも行われています。どんな感じかな~。行ってみたいな~。

本を媒介に人が集い、情報が発信され、文化のダイナミズムが生まれる…そんな場所であり続けてくださることを、とっても期待しています!また、行こう!!

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