ビアズリーという画家の印象は、くっきりしたモノクロの画面と充満する妖しい雰囲気…!でも、考えてみると、彼自身のことも他にどんな作品があるかも、あまりよく知らないんですよね。というわけで、ビアズリーについて知る良い機会となりました。
オーブリー・ビアズリーは、19世紀末にイギリスに生まれ、なんと!25才の若さで亡くなりました。彗星のごとく現れた若き才能が活躍したのは、わずか5、6年程だったといいます。彼を一躍有名にしたのは、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の英訳版に飾られたイラストでした。
展覧会では、美しいビアズリーの肖像写真に始まり、初期の風刺画や、世に出るきっかけとなった『アーサー王の死』、そして『サロメ』をはじめとする文学作品のイラスト原画や掲載書籍の数々が展示されています。おもしろいのは、その頃、西洋の美術に強い影響を与えたジャポニスムにまつわる展示が同時に行われていること。北斎漫画をはじめとする浮世絵、伊勢型紙、それを取り上げている当時の書籍などなど。ビアズリーの作品には、確かに影響が見られる気がします。特に線描で囲まれた空間の生かし方などは日本画や浮世絵を思わせるし、チラシ掲載の作品にもあるように、平面的な装飾などは、型紙の引用があるように感じます。
でも、独特なんですよね!人物の表情がもたらすものだろうか…?黒と白だけのシンプルな世界なのに、ムンムンと充満する色めきときらびやかさ。何なのでしょう!!
興味深いのは、ビアズリーが美術担当として複数の雑誌の創刊に関わっていたこと。「イエローブック」や「サヴォイ」といった現物も展示されていまして、(書いている内容はわからないのだけど)記事とビジュアルが一体となった美しい雑誌でした。「月映」もそうだったんだけど、美術家が雑誌を作ろう!という当時の動機について、もっと知りたいな~、と思います。(今はあまりない気がして…。どうなんだろ?)
展覧会の後半は、ビアズリーに影響を受けた日本の作家たちが紹介されていました。まず、ビアズリーを日本に紹介したのは、かの有名な雑誌「白樺」だそうです。高畠華宵など多くの画家がビアズリーの作風を反映させながらも、独自の「サロメ」を描いていたのはおもしろかったです。
また、「月映」の3名の木版作品も、モノトーンの魅力に影響を受けたとして紹介されていました。再会できて、嬉しかった!そして、昭和初期の資生堂のビジュアルをつくった山名文夫のイラストもとっても素敵でした。
ビアズリーを軸に、日本美術が還流しているような、そんな美術のライブなうねりを感じることのできる興味深い展覧会でした。よかったです!
そろそろ春の息吹が感じられる美術館を、ぜひ訪ねてみてください!展覧会は3月27日(日)まで。