アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

瀬戸内国際芸術祭 ~豊島~

2010-10-31 | 旅×アート

閉幕を目前にした火曜日、小豆島のわらアート・マンモスが強風で倒れたって!!あら~、あともう少しで力尽きたのでしょうか…。立ってるお姿を拝見できて良かったです。いよいよ今日までですね~、明日から撤去などが始まってしまうのでしょう。

さて、わが芸術祭レポート、2日目の豊島をお届けします。今回の芸術祭で、直島と並んで人気の高い島、この島への道行でまさに「島」を舞台にしたイベントならではの不自由さを実感することとなりました。

2日目の朝、小豆島から豊島へのフェリーが非常に混み合い乗れないかも…と聞いていたので、30分以上前に港へ。無事乗船できましたが、どんどん人が乗り込み座席に座れない人も。人々が手に手にしているのは、美術出版社のガイドブック。(雨でボロボロになってしまった)

はっきり言って存在さえ知らなった小さな島へ、こんなに人を動員してしまうチカラって…。アートだけではないでしょうけど可能性は感じる。

まずは、20・ビューティ(オリファー・エリアソン)。暗い蔵の中に人工的に噴出される霧、そこにライティングされることで幻想的なゆらめきが現れていました。近づいたり離れたり、始めは?だった観客たちの心をグッと掴んでいました。次に32・ノリとたゆたう。(大阪芸術大学豊島アートラボ)、ここは体験型ってことで、薄暗いお部屋に靴を脱いであがると凹凸をもって柔らかい布が張られており、そこに寝転ぶと天井から光が降り注ぐ。ゆらゆらと揺られていると気持ちが落ち着く感じ。ここで面白かったのは、案内役のおじさん。作者の意図に忠実に体験してもらおうと一生懸命で、これも含めて作品だなあ~と思ったりしました。

さていよいよ33・心臓音のアーカイブ(クリスチャン・ボルタンスキー)へ。朝いちでしたが、人数制限があり15分ほど待って入館。待っている間もドクンドクンと心臓の音が漏れ聞こえ、初めての生ボルタンスキー作品にわくわくです~。展示室の中は細長く真っ暗で壁には鏡が張られている。心臓の鼓動と連動して電球が明滅、音は大音響だ。誰の心臓の音かはランダムらしいのだが、人によって全然音の大きさとかリズムとか違うのです。途中、ホントに音が小さく電球がほとんど光らないのもあり、何だか生命力の強弱ってあるのかしら??などと思ってしまいました。リスニングルームではパソコンで世界のいろいろな人の心臓音が聞けて、またレコーディングルームでは自分の心臓の音も録音できるとのこと。自分の心臓音であの部屋をチカチカさせてみたい衝動に駆られましたが、時間もないので我慢しました。ここは常設になるので、またいつか訪れたいものです。

出てくるとついに雨が降り出す。移動方法はバスしかない。港に着くと豪雨。途中で傘が壊れるしビショビショと濡れて、案内所で傘をお借りしました。オープンしたての豊島美術館は超人気で、整理券待ちとのことで涙をのんでパス。森万里子作品も雨で足場が悪く鑑賞できないとのこと。
唐櫃岡周辺の作品を巡りましたが、19・空の粒子(青木野枝)は、神社に寄り添うように、鉄の錆びた感じ、クモの巣の張った様子が、ずっと以前からあるように馴染んでいました。いろいろ物議をかもし出したとも聞きますが、地元の人に愛されるといいなあと思いました。23・藤島八十郎をつくる(藤浩志)は面白かったですね。架空人物ではありますが、そのへんに寝転んでいそうな実在感がありました。なかなか愛すべき趣味の持ち主、猫がいついているのがいっそう現実感を引き立てていました。
バス停までの行くのに、畑の中を通って明神池へ。25・豊島の気配(戸高千代子)は、とても美しい作品でした。池に何本も立てられた半透明のオブジェ。風が吹くとふわりふわりと舞うように見えて、鳥のような花びらのような。取り囲まれた棚田の緑をバックにたいそう幻想的で美しく情趣あふれる作品で、今回一番気に入りました。

さていよいよ楽しみな甲生へと向かいたかったのですが、とにかく帰りの高速船の乗船整理券をゲットしなくてはならないし、バスは混み合って乗れるかどうかわからない始末だし、ちょっと時間的に無理!と自ら判断し、甲生地区の作品、塩田千春さんやスー・ペドレーさんは泣く泣くあきらめました…。こういう「何としても見たい!」という衝動を抑えて現実的な行動を取ってしまうあたり、年取ったなあ…とトホホな気分でした。
そのかいあって、無事高松行きの船に乗船。最後に高松港にそびえるタワー、2・Liminal Air- core-(大巻伸嗣)を拝んで、今回のアート巡りは終了~。最後にうどんを食してバスで京都まで帰りました。

豊島は鄙びた感じの島に、ほのぼのとしたアート作品がマッチしていて、とても良かったです。またやはりこの芸術祭に関わる地元の人の力も大きいものだと感じました。案内所の親切なお兄さん、ちょっとイラ立っていたバスの運転手のおじさん、張りきっていた船のおじさん、本当に人生の中でもめったとない大イベントだったのではないでしょうか。ところで、百聞は一見に如かず、なのに写真がなくてすみません。今回は初めてビデオカメラを入手して動画の撮影に明け暮れてしまいました。

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瀬戸内国際芸術祭2010 ~小豆島~

2010-10-30 | 旅×アート

行ってきました!瀬戸内国際芸術祭。もう閉幕間近であったので、雨の中にかかわらず、どこも大勢の人が訪れていました。行程は、小豆島→豊島→高松、1泊2日。

まずは、姫路から小豆島へフェリーで渡る。10月というのに、フェリーの甲板の風はすごく心地よい。お天気、もってくれ~!
島の北東の福田港に着くので、そこからバスで移動。けっこう時間もお金もかかりました。

まず訪れたのは、66・小豆島の家(王文志)。いきなりのハイライトです。ここは日曜美術館で見てすごく来たかったんだ~。
もっこり象さんが頭を突き合わせているようなお家、実はすべて竹で編まれているんですね。アーチのような通路を抜けていくと、丸いお部屋に出ます。部屋の中央は一段高くなっており、人々が靴を脱いでそこにあがり、座ったり寝転んだりとくつろいでいました。もちろん床も竹。寝転ぶと床下から気持ちの良い風が吹き抜けて、すごーく心地良かったです。いろいろな人が一堂にゆるく集まっている感じで、しかもお子さんがけっこう多くて楽しそうにはしゃいでおり、何だか良い雰囲気を醸し出しておりました。この季節でも十分気持ち良かったけど、夏なんかもっといいかもね~。ここは、芸術祭が終わるとなくなってしまうのでしょうか、もったいない気がしました。

この家を囲むように何本も立てられているのが、67・声なき人々の声(ダダン・クリスタント)。高さ5メートルほどの竹に笛のように穴が開いている。風が吹くとかすかにボーボーと音がするので、じっと耳を澄ませてみる。立てられた時は青竹だったのでしょうけど、もうすっかり茶色くなっていました。

この作品のすぐ近くに中山農村歌舞伎舞台があり、ちょうどその日の夕方に公演が行われるとのことで、舞台のセッティングをしていました。少し離れたところには肥土山農村歌舞伎舞台もあり、島に根づき大切に守られてきた芸能文化を垣間見れました。機会があれば実際の舞台も見てみたいものだと思いました。

また途中、田んぼの中に、巨大なマンモス発見!65・わらアート(武蔵野美術大学わらアートチーム)、象と鯨、これは例の若冲の新発見された作品を模しているにちがいない!と一人興奮していたのだけど、ダンナは鯨を亀と思い込み、見知らぬ人にもそう教えてしまったとのこと、そー言われれば亀にも見える…。ついに降り出した雨にそぼ濡れて、しっとりした風情でした。

そこから、なかなか来ないバスにしびれを切らして雨の中を徒歩で常盤橋まで移動、61・心の巨人(河口龍夫)、62・土と生命の図書館(栗田宏一)を鑑賞。

 


今は廃校となった小学校の図書館、少し色褪せているようではありましたが、フツーに本がいっぱい置かれている中、瀬戸内地域他、いろいろな地域の土を採集して和紙にのせたものが、規則正しく並べられている。その色のバラエティ豊かで美しいこと!土なのにすごくフワフワの、何か羊毛とかそういう繊維の塊に見えました。採取順に並べただけとのことでしたが、そのグラデーションもすごく素敵で、うっとりしました。ここでは地元の人が訪れていて、もう終わるのが残念だな~とお話されてました。学校は廃校と思えないほどキレイでした。建物も使われるとイキイキするのでしょうか。

というわけで、1日目の小豆島の行程は終了。

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白洲正子「神と仏、自然への祈り」 準備中

2010-10-16 | 展覧会
わがミュージアム、滋賀県立近代美術館にて、秋の目玉展覧会がただ今準備中、10月19日(火)よりいよいよスタートです!

きょうは久しぶりに解説ボランティアに訪れたのですが、企画展の狭間でもあり、お客様は極少でございました…。かわりにこんな日の特典といっちゃあ何ですが、19日より開催の展覧会の準備の様子を覗かせてもらいました。

この展覧会は、白洲正子の生誕100年で13回忌にあたるこの年を記念し、彼女が執筆した随筆の中で触れている、神・仏像や絵画の名作を中心に展示し、季節感あふれる映像を交えて、美意識あふれる彼女の世界を紹介するもので、滋賀県の寺社から数多く出品されております。米原市の太平寺観音堂からは、円空さんの十一面観音立像も出品されます。この頃興味を持っている円空仏に初めて対面できるので、すごく楽しみです。

展示会場には、まだお立ちになっていない仏像が台車に寝ておられたり、いかにも古そうな木造作品を、作業員の方々が大事そうに設置したりなさったりしておられました。作品たちもケースに納まってしまうと、なんだか手の届かない遠い存在になってしまうのですが、きょうのような場面を見ると、とても近しく生き生きしている印象を受けました。非常に興味深かったです。

どんな展覧会になるのかな~。とても楽しみです。お客様も団体鑑賞の予約がどんどん入っているようで、うれしい限り。皆様もどうぞご期待ください。
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『ミックマック』

2010-10-09 | 映画
私の街の映画館であった滋賀会館シネマホールが閉館して以来、好みの映画を見る機会がすっかりなくなってしまいました。きょうは久しぶりに大阪のガーデンシネマで鑑賞、『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作である『ミックマック』。意味は"いたずら"。
フランス映画にしては珍しい勧善懲悪ストーリーではありましたが、ストーリーや映像の味付けはまさしくフランスのエスプリって感じで気が利いててよかったです。登場人物たちもえらく個性的、ガラクタで作られた家もすごく凝っていたし、アクションシーンもふんだんで、撮影にもずいぶんとお金がかかっているようでした。でも『アメリ』でもあったように、時折マンガちっくな映像が織り込まれているのが楽しい。

さて、脇役のひとりに、皆からアーティストと呼ばれている発明家のおじさんがいまして、その人が作る動くおもちゃ(アート作品??)がすごく目を引きました。何せガラクタで作られているので武骨で不気味でもあるのですが、何だかカワイイんだ!!最後のシーンに出てくる衣装を吊るしたハンガーがダンスを踊っているようにクルクルと舞う作品?は、ホント、ロマンチックで素敵でした。

映画鑑賞の後、チラシを物色していて見つけました。『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』。東京などではもう上映されているようですが、大阪そして京都はこれからいよいよです!レンブラントの「夜警」をはじめ、数々の名品を有するこの美術館は、実際未だに改修工事が終了していないとのこと、改修工事をめぐって展示室では絶対見られない美術館の舞台裏と本音の人間模様を描いたドキュメンタリー…だそうです。面白そうすねえ、ぜひ見にいきたいと思いました。

ドキュメンタリーってわりと好きです。でも映画作品になっているということは、事実をただ写しているのではなく、編集によってつくり手の意図が反映しているんですよね。そのギリギリな感じがすごくおもしろいなあと思うのです。美術作品でいうと、ドキュメンタリーに当たる作品ってどんなだろう。やっぱり写真かな??
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「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」中野京子

2010-10-04 | 
「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」に引き続き、中野京子さんのヨーロッパの名家の物語を絵画で読み解く第2弾を読了。(光文社新書)
冒頭には、ブルボン家の家系図が載っておりますが、ハプスブルク家とは密接に関わっており、スペインでは、両家が入り乱れております。
また、両家は長きに渡って争っていましたが、マリー・アントワネットによって結びついた一時もありました。そんな両家の歴史を見ていると、マリー・アントワネットという女性は、なんと運命に翻弄されたのだろう…と感じ入ってしまいます。

さて、ハプスブルク家12の物語が肖像画中心に語られていたのにくらべ、本著では、リゴー『ルイ十四世』といったバリバリの肖像画もあるのですが、ヴァトーの『ジェルサンの看板』やユベール・ロベールの『廃墟となったルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』などの風俗画的なものや、ルーベンス『マリーのマルセイユ上陸』やダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』など、重要な人物を題材に壮大な物語を描いた作品などが取り上げられており、ハプスブルク家の物語が、個々人のドラマティックな人生が垣間見れるのに対し、12枚の絵画を通してフランスの歴史が眺められるようになっており、それもまた興味深いことです。

以前フランスを旅行し、ヴェルサイユ宮殿を訪ねた時、あまりの壮麗さに目がクラクラし、マリー・アントワネットがプチ・トリアノンで農村を模したのも無理はない、少しはホッとしたかったのでは…などと思ったものでした。その宮殿を建てたのはルイ14世、太陽王であります。彼の時代に、フランスの文化的優位性を築いたのは、今に至る功績なのですね。(反目していたオーストリアのマリア・テレジアでさえ、フランス語で手紙を書いていたそうです。)

その太陽王の肖像画、もっとも私の目を惹いたのは、儀式用というマントです。ものすご重そうで、表地はブルボン家の紋章刺繍入りのブルーのビロード、肩のところをわざわざ大きく折り返すのは、高価な裏地(白テンの毛皮)を見せつけるためだそう。後ろの方で出てくるルイ15世や、18世やシャルル10世の肖像画も、みんなこのマントをはおって同じように肩を折り返してるんです!思わず同じもんかな?と目を凝らしてしまいましたが、サイズや柄が少し違うようでした。
あと気になったのは、ムッシュかまやつばりの頭が盛り上がった鬘?とそのマントからすらりと伸びたタイツをはいた足とかわいらしいヒールのついた靴ですね。よくよく見るとホント変わったファッションです。

そんなことはどーでもいい、とおっしゃる方は、ぜひ本著をお読みくださいませ~。
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