アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

SANAA×歴まち大津の未来@三井寺

2015-07-19 | その他

たまたまTwitterで見つけた情報だったのですが、SANAAの妹島和世さんのお話が聞けるってことでこのフォーラムに申し込んでみました。主催された「歴まち大津の未来を考える会」というのは、大津のまちが有する豊かな自然と伝統に育まれた歴史的文化的資産を、斬新なアプローチで保存・活用していこうと活動している会で、今回会場となった三井寺の執事長さんもメンバーです。

なぜ、妹島さんが招かれたかというと、このたび、マイ・ホームミュージアムである滋賀県立近代美術館が既存館の改修および新館の増築を含む大規模な整備を行うことになったのですが、その全体プランの設計者としてSANAAが選ばれたからなのです!

新生・滋賀県立近代美術館についての詳細はこちら

妹島和世さんと西沢立衛さんによるSANAAは、言わずと知れた金沢21世紀美術館やルーブル・ランスの設計者であり、彼らの案が選ばれたと聞いて、私は大変うれしく思いましたし、どんな美術館が出来るのだろう!と、とってもワクワクしています。

さて、このフォーラムの参加者には、大変すばらしい特典がありました!歴史ある三井寺(園城寺)は、国宝の金堂をはじめ、「三井の晩鐘」で知られる鐘楼や弁慶の引摺り鐘、左甚五郎の龍の彫刻など見どころ満載のお寺なのですが、実は普段は非公開の国宝の建造物があるのです。今回、その「勧学院客殿」「光浄院客殿」を特別に見せていただけたのですが、これは値打ちありました!

勧学院は1600年、光浄院は1601年に建てられており、桃山時代を代表する初期書院造りで寝殿造りの要素も残しているという貴重な遺構。古には政治的な位置づけでもあった寺院で、要人の客室として使われたとのこと、寺院の中にあったため、このように保存され現在まで残っているのだと、僧侶の方が名調子で解説してくださいました。

どちらの建物も狩野派の手による迫力の襖絵、床貼付が残されており、特に光浄院は狩野山楽によるもので、庭とつながるように描かれた床貼付から襖絵は、スケール感がありました。庭園は珍しいことに、客殿の縁側のすぐ下まで食い込むように池が広がっていて、涼やかにたゆたう水の風景に心癒されます。ところで床貼付のことを障壁画って言うんだ…。知りませんでした~。(障壁画ってもっと大きいイメージないですか?私だけ?)

こういう客殿の見学って、廊下から部屋を眺めることが多いと思うのですが、思い切り中に入れて、間近で襖絵や床貼付を鑑賞でき、しかも縁側に座ってお庭に癒されたりして、ホント素晴らしい体験ができてよかったです。楽しかったワ~。

フォーラムでは、妹島さんがSANAAがつくって来た建造物の経緯やコンセプトを、特に美術館を中心に紹介され、その後、「歴まち大津」のメンバーを交え座談会が行われました。

お話の中で、妹島さんたちが滋賀県立近代美術館の素晴らしい環境を評価し、それを生かせるデザインを考えてくださったのがうれしかったし、金沢で実現したような、単に建物だけではなく、「ここは私たちの場所だ」と思えるような仕掛けも試みてくださっているのに、とっても期待!

また、今回新しい美術館には、今、閉館してしまっている琵琶湖文化館の価値ある仏教美術品等を展示・収蔵する場所や、数々の県内の歴史ある社寺が所有する素晴らしい文化財を保護する拠点を確保することが、滋賀県の仏教関係者にとって悲願であることも、三井寺執事長のお話からひしひしと伝わってきました。

新しい美術館は、2019年までのオープンを目指しています。わが地元の美術館が生まれ変わるのを楽しみに待ちたいと思いますし、たくさんの人が訪れて満足してもらえる素敵な美術館になることを期待しています!

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生誕110年 片岡球子展@愛知県美術館

2015-07-06 | 展覧会

片岡球子の迫力に充ちた作品に衝撃を受けたのも、やはり愛知県美術館のコレクション展だったように思います。いざ、球子に会いに名古屋へ!

1905年に生まれ、103歳まで画業を追求した片岡球子の生誕110年を記念する本展覧会は、院展に初入選した作品から代表作の富士山や面構シリーズ、そして晩年に取り組んだ裸婦に至るまでの画業を辿る60点の作品と、作品制作の裏側を語るスケッチや資料なども加えた回顧展。球子芸術をめちゃ堪能できます!

小林古径に「ゲテモノ」と評されたと言う球子の人物像は、うーん…何と表現すればよいのか、確かにデフォルメされ歪んでいるような、ヘタウマなような、でも何とも言えない味があり、まさにその人らしさを表出しているような、力強く迫力のある表現なのです。

50歳まで教師を続けたという球子、やはりそれ以降の作品の充実ぶりには素晴らしいものがあると思いました。作品も本当に大きいものが多かったです。

大迫力だったのは、富士山や浅間山など、山を描いた作品たち。きょうの日曜美術館では、球子は表現を追求するために、日本画の枠を超えて木工用ボンドに油絵具を混ぜて、何と!手で描いたのではないか、と言われていました。見ることにこだわった球子の目に映った山肌は、光が色とりどりに乱舞し、力強い画材の存在感が迫って来るようで圧倒されます。

そして球子が尊敬する歴史上の人物を描いた「面構(つらがまえ)」シリーズ。ちらしに載っているのは足利尊氏。これは京都の等持院にある足利尊氏の像をもとに描かれたそう。日曜美術館で何度も描いた球子のスケッチが紹介されていたが、実際の像を見ると、球子が受けた印象に共感ができて、球子が理解した足利尊氏がわかるような気がしました。

その他にも、上杉謙信や北斎、写楽、豊国などの浮世絵師、雪舟、一休さん…球子のとらえた人物像を見るのが楽しいし、その人が背負う背景を踏まえた画面づくりがおもしろいなあ!と思いました。

私は、今回、何といっても球子の装飾性といいましょうか、特に人物像の着物の柄の細かさと美しさに目を奪われました!きょうの番組では、描く人物の時代背景なども調べ上げ、当時の着物の柄も研究し尽くし表現に生かしたというエピソードがありましたので、今思えば、あの美しい衣裳の柄ひとつひとつにも意味があったのかな…。

衣裳の柄の素晴らしさや山の迫力ある表現のみならず、球子の作品は印刷物ではその素晴らしさがなかなか伝わりません!絵の背景なども相当凝った描き込みがなされています。大きさも含め、実物の作品に対峙してこそ味わえる迫力と感動がありました。

103歳まで描き続けた片岡球子は、わがホームミュージアムの滋賀県立近代美術館がコレクションを所蔵している小倉遊亀と少しイメージがだぶります。二人とも日本美術院を代表する女流画家であり、画家に専念する前は教師をしていて、ともに100歳を超えるまで描き続けました。遊亀さんもデフォルメした人物像を描いているので、決して対照的とは思いませんが、やはり球子の絵画の個性的なのは群を抜いている気がします。同時代の二人の関係性なども、興味があるところです。

展覧会は、7月26日(日)まで。日曜美術館は、来週12日夜8時から再放送。生前の球子へのインタビューなどもあり興味深いですよ!

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