歌わない時間

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『クリスマス、タリス・スコラーズとともに』

2009年12月24日 | CD 中世・ルネサンス
Christmas with the TALLIS SCHOLARS
CDGIM 202

1986,87,88,98年ごろ録音。78分08秒/78分34秒。Gimell。1枚目は、中世以降のキャロル、コラール、「アベ・マリア」などクリスマスにちなむ曲集に、クレメンス・ノン・パパの《Missa Pastores quidnam vidistis》を加えたもの。2枚目はソールズベリー聖歌をたっぷり50分以上と、タリスの《Missa Puer natus est nobis》。最後のタリスのミサのみ、90年代後半。他は80年代の録音。

CD1の前半がこの2枚組の核となるクリスマス曲集。はじめのほうのキャロルはまあまあ。わたしはまちっと繊細な歌い方のほうが好みですが、タリス・スコラーズにしては押しの強さは抑えられています。"Lully, lulla, thou little tiny child"なんて、しみじみ聴かせますよ。そのあと、有名なジョスカンの"Ave Maria"、ビクトリアの"Ave Maria"、いづれも端正な演奏。Verdelotの"Beata es vigro / Ave Maria"って曲、はじめて聴いたけどこの曲好き。それからプレトリウス父子によるコラール編曲、"Es ist ein'Ros'entsprungen""Joseph Lieber, Joseph Mein""In Dulci Jubilo"の3曲がまた親しみのもてる好演。ここまででも、クリスマスのミニ・コンサート1回分のプログラムとしてじゅうぶん聴きごたえのあるもの。そしてこのあとクレメンスのミサがたっぷり30分あるのよ。クレメンス・ノン・パパの曲を聴いたのもはじめてなんですが、このミサは曲・演奏とも充実している。80分弱、しっかり楽しめましたわ。

CD2のさいしょから50何分間はずーっと単声の聖歌がつづくんですが、これがそれほど退屈ぢゃなかった。まあ仕事しながら聞いたからかもしれませんけどね。タリス・スコラーズ男声部の声の美しさと、鍛えられたユニゾンを楽しみましょう。トラック7の冒頭でいきなり鐘の音が入ってきてびっくりした。フィナーレの《Missa Puer natus est nobis》はGloria - Sanctus - Agnus Deiの3章。なんか輝かしいミサですよこりゃ。タリス・スコラーズらしくキンキラキンに歌いまくりますが、CDの前半が墨絵のような世界でしたから、キンキラキンでもいい。許す。

CD2枚とおして聴くと山あり谷ありでなかなかユニークなアルバムになりました。1枚目から2枚目の前半にかけてはむしろ刺激を抑えた地味めの音づくり。で最後のタリスのミサで一気に盛り上がる感じ。紙箱もCDの表紙も、さらにCD面にもフィリッポ・リッピの絵があしらわれていて美しい。センスのよいデザインのCDです。

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