歌わない時間

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「輩出」

2013年10月24日 | 気になることば
きょうNHKのテレビを見聞きしていたら「輩出」ということばが三回出てきた。三回とも誤った使い方だった。どうなってるのかNHK。そのうち二回はアナウンサーが中継のレポートの中で使い、もう一回は、世界遺産を紹介する短い番組の中で、江守徹のナレーション中にあった。

「輩出」とは「すぐれた人物が続々と世に出ること。」(『大辞林』)である。たとえば「四人の総理大臣を輩出している宏池会。」みたいにつかうのだ。出たのがひとりだけぢゃあ、ダメなのである。

江守徹は、ポーランドの世界遺産を紹介するくだりで、引用は正確ではないけれど、「ポーランドが輩出した教皇ヨハネ・パウロ二世」と言った。ヨハネ・パウロ二世はただ一人である。だから、ここで「輩出」というのはまづいのである。それなのに、全国向けの番組制作レベルでも、もうNHKではチェックが効かなくなっているのである。

昼間の番組のアナウンサーのことは、「輩出」を誤用したのは確かだがもう詳細は憶えていない。夕方の番組では、福岡局のアナウンサーが、高校からの中継で、「去年なになにを輩出した」と言っていた。この「なになに」も、一度だけのことで、複数ではなかったから、「輩出」というのはおかしい例であった。

「輩出」の誤用に、わたしは前から気づいてはいたのである。しかしこれまでは、現場の若いスタッフ(アナウンサーやらディレクターやら)が日本語を知らないだけなのだろうと思っていた。ところが、江守徹に読ませる原稿にまでこの誤った「輩出」が紛れ込んでいるところを見ると、事態は深刻なようである。

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