歌わない時間

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ピノック『ヘンデル/ベルシャザル』

2008年05月04日 | CD ヘンデル
Handel
Belshazzar
Rolfe Johnson, Auger, Robbin, Bowman, Wilson-Johnson
Choir of the English Concert
The English Concert
Trevor Pinnock
477 037-2

1990年録音。57分09秒/52分35秒/61分18秒。Archiv。ピノックの指揮はいつもながら誠実で、ただしその分ドラマティックな彫りの深さもいつもながら不足ぎみですが、ソリストも合唱もよく歌えているのでそんなに不満を感じさせません。わたしの買ったのはTRIOという安売りシリーズで再発された盤で、歌詞はついていませんでした。トホホ。だからってわけでもないんですが、わたし《Belshazzar》はボーカルスコアを買ってしまいましたよ。

新バビロニアの王ベルシャザルがアケメネス朝ペルシャのキュロス王に滅ぼされる話で、さらにベルシャザルの母后ニトクリス、バビロンに捕囚されているイスラエルの預言者ダニエル、キュロスのもとに身を寄せるアッシリアの貴族ゴブリアス、以上がおもな登場人物です。

ロルフジョンソンのベルシャザルはCD2に入ってようやく登場ですが、傲慢な悪王をしっかりと、しかしドギツ過ぎず、なかなか巧く歌っています。しかしタイトルロール以上にこの曲ではオジェーのニトクリスの存在感が強烈。序曲が終わったあと、10分くらいはニトクリスがたったひとりで歌い続けるし。というかこのオラトリオは全体に独白のレチタティーボが多めに入るんで、歌手たちの力量が問われる難曲だと思います。オジェーもいいし、キュロスのキャサリン・ロビンもテンション高くて素敵です。

個々のナンバーでは、第1幕でキュロスが歌う"Great God! who, yet but darkly known"がいかにもヘンデルらしい雄大なフレーズで大好きです。それから第3幕のニトクリスとキュロスの二重唱"Great victor, at your feet I bow"も情感たっぷりで、いいです。ただしこの二重唱はもすこしテンポをゆっくりめに取ってじっくり聴かせてほしかった。合唱では第2幕冒頭の"See, from his post Euphrates flies!"がとくに有名。二重協奏曲でも耳にする調子のいいメロディですね。

『テオドーラ』を聴いたときにも思うことですが、ヘンデルって人は異教徒の合唱を書くのがとても巧いです。そこはかとただようマガマガしさ、とでも申しましょうか。

2008年夏のエクサンプロバンス音楽祭では、ヤーコプスが『ベルシャザル』を指揮するそうですよ。こりゃ来年くらい、CDになってリリースされそうですな。

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