歌わない時間

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ガーディナー『パーセル/テンペスト』

2008年05月06日 | CD パーセル
Purcell
The Tempest
Hardy, Smith, Hall, Elwes, Varcoe, Thomas, Earle
Monteverdi Choir
Monteverdi Orchestra
John Eliot Gardiner
4509-96555-2

1979年録音。57分22秒。ERATO。1979年はたしかガーディナーがモダンから時代楽器へ移行した年。これはその2月の録音で、"Monteverdi Orchestra"と明記してあるからオケはまだモダン楽器のはずですが、モダン楽器のバロック演奏によくあるヌメヌメ感はぜんぜんないんですよ。相当意識して、時代楽器ふうの演奏スタイルを取ってるってことかなあ。とにかく時代楽器派の人にも違和感なく聴けると思います。エラートへの、ガーディナーのパーセル・コレクションはモダン楽器での録音が混ざっているというので腰がひけてしまう人もいるでしょうが、音わるくないし、演奏自体とてもいいです。

なにしろ『テンペスト』ですからもとはシェイクスピアなんですが、そこはパーセルのセミ・オペラの通例どおり、本筋とは関係ないところでにぎやかに歌ったり踊ったりするんですな。プロスペローやミランダが歌うわけではありません。序曲のあとすぐ出てくるのが'First Devil'と'Second Devil'で、デイビッド・トーマスとロデリック・アールというふたりのバスがいきなり二重唱します。トーマスはたしかこの年ホグウッドの指揮で『メサイア』を録れてるはずですが、『メサイア』よりこっちのほうが調子いい。

どこをとってもまさにパーセルの世界で、この作曲家らしい愛らしさと清涼感にあふれているので、パーセル好きな人にははづせない。それをまだ新進指揮者だったころのガーディナーがパーセルへの共感を込めて聴かせてくれる。ガーディナーにしてはめづらしくよく歌っているのがいいです。第3幕でメゾのキャロル・ホールが歌う"Dry those eyes"とか、第5幕でジェニファー・スミスが歌う"Halcyon days"とか(どちらも6分かかるパーセルにしては長いエア。)それからやはり5幕でスティーブン・バーコーが出てきて何曲か歌いますけどそれがまたバスの曲にしてはなかなかしみじみとしていて、耳に残ります。

それから特筆すべきはラスト。スミスとバーコーのデュエットがまづあって、それを合唱が受けて終わるんですが、めづらしくfではなくてmpくらいで静かに曲を閉じるんですよ。パーセルはときどきこの手を使うようですが、ここではよく効いています。

合唱は少なめで、アリアが多いです。The Trinity Choirのやり方のように、力のある歌手を集めた合唱団で、合唱からソリストが出て歌うようにするといいと思いますね。あー、そんなコンサートでこの曲歌ってみたいです。

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