≪空想≫
ウチの畑にいる虫たちが
日ごろからお世話になっているから
といって
自分たちでお金を出し合って
どうぞこの機会に
新しい技能を身につけてください
といって
結婚式でよくある
引き出物のカタログを
持ってきた
それでためらいなく
私は『フェンダー社ストラトキャスター・ギターを完璧に弾く技術』
を選択し
これは魔法で
たんなる「ギター教室」みたいなものじゃないから
たちどころに私は完璧なストラトの奏者になり
だから生涯に一度
演奏をするステージを
考えました
その時一緒にステージのあちら側に立って
自分のためにベースギターを弾いてくれるのは誰？
前に
日本の少女歌手がロスでレコーディングをして
その時呼ばれた
黒人のベース奏者が
ハラに響く板の厚いソリッドのベースを弾いていて
その時私は
なんであのじじむさい
形と色のギブソン社製ファイアーバード・ベースギターが
延々と製造されているかが
分ったのです
リラックスして
ニヤニヤして
ボムボム重くてあたたかい音を出しているあいつ
そうだ
エリック・クラプトンに
彼を守る黒人のネイザン・イーストがいるように
自分にはアイツがいる
それで手配して探してもらったら
いましたね
シカゴの安アパートと言うほどではない
そこそこのマンションに
私は駆け寄って
言いました
「どうしたんだ！すっかり白髪になっちゃって！」
「スターウォーズにやっと出た頃のサミュエル・ジャクソン
みたいじゃないか！」
ヤツは全てを察して
肩をたたいてくれました
☆☆☆
それで サァ！
演奏曲目ですけど
基本の
キースの「gimmi some shelter」でもいいです
ポールの「golden slumbers」も演ってくれるでしょう
きっかけにそもそもなった
少女歌手の「stand up」でもいいです
なんでもいいんです
その３曲ずっと繰り返してたっていいや
ああいいなあ
繰り返しますが
クラプトンにネイザンがいるように
自分にはヤツがいるんだ
今気がつきました
「ヤツ」
名前知らないんだけど
「スタンダップ」のＣＤ見れば
スタジオミュージシャンで
名前載ってるかな？
ダイジョウブ
捜せばまだシカゴの
まずまずのマンションで
私を待っていますって
それで
わたしは
畑に出る際
いつ虫たちからの申し出があってもいいように
身構えて向かっている
今日この頃です
