歳時記俳句・水の秋

疲れ果て休む夜長に冷や珈琲
珈琲も音譜も沁みる良夜かな
夜降りし路面も濡れて薄ら寒

経験をよく腑分けする本の秋
機関車が峠を越えて本の秋
夏休み恙無きかな秋旱

秋更けてPC買わず初期化せり
物全てみな洗われて水も澄む
猛暑日も朝夕涼し鰯雲

無月でも心に浮かぶ明かりかな
人思う秋の夕焼け暮れにけり
それぞれの一日があり水の秋

歳時記俳句・雲間月

秋思かな愁いはすべて初期化せり
ＰＣの乗り換えきつく夜長かな
心には真知の有りて秋景色

冬瓜を百円で買い午後涼し
マンホール日本蜥蜴の子の速さ
二時と四時安納芋の菓子を食む

秋野菜見切り品見て立ち止まり
秋の米みな品薄で店寂し
高齢者公民館で夕涼み

秋茂み盛んに伸びて坊主刈り
雲間から明るく見ゆる秋の月
笑む時も寂しき時も星月夜

歳時記俳句・木槿花

二日間眠りに落ちる秋日和
晴天に悩みは遠く秋雀
生命が傾く理由読む夜長

大勢を欺く影を秋思う
秋暁にすぐ移りたし日々の筆
秋思ならこの年なりの気づきかな

秋愁や負荷の多さに息吹き待つ
秋薬師願い叶いて木槿咲く
中赤き木槿に白き木槿かな

秋桜が野に広がりてお出で草
盆休み終わりて帰る日々の庭
身に沁みる人の思いや虫の声

歳時記俳句・千草

夏休み学童たちの砂時計
秋学期近づきやがて白い冬
読む人の心が秋に全反射

江戸頃の西洋人を読む夜長
細胞を蘇らせる秋布団
日々深く日々若くなる爽やかさ

星たちの産声多し天の川
輝いて今を横切る流れ星
円相に近くなりけり秋の月

秋旱続く中でも山粧う
文字起きて燈火親しむ老眼鏡
星流れ秋の千草の匂いかな

歳時記俳句・乱れ咲き

混沌美　秋に無調の乱れ咲き
台風は逸れて朝焼いわし雲
秋暁に六割ほどの元気なり

確かさの観念探る夜長かな
空腹が程よい様な秋の空
ゲンピ茶を体に注ぐ爽やかさ

即興でメシアンを弾く文化祭
テーブルに赤紫の菊の花
秋の川羽ばたく鳥の美しさ

取り敢えず野分は去りて朝の秋
川沿いに溝蕎麦の花夢の景
眼の前に大の形の大文字草