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健康保険証の交付について

2010-01-06 20:18:01 | 社会保険労務士

今日は、健康保険被保険者証交付について独り言。
(以下、「保険証」と略す)

原則論
保険証の交付は、資格取得届出から7日~10日後に郵送されるしくみだ。
「保険証を早く欲しい」という希望は、恒常的によくある話だ。
福岡では、かつては保険証は届出時に即時交付されていた経緯もあり、古い記憶しかなければ「すぐもらえるもの」と誤解しかねない背景もある。

保険証がない状態だったらどうなるのか??
保険証が無くても、当たり前の話だが病院での受診は可能だ。
問題となるのは、「いったんは全額負担となることが原則」ということだ。

病院側の立場では、同じ診療をしても受ける報酬は主に「健康保険診療」、「労災保険診療」、「自由診療」に分けられる。
そして、診療報酬で健康保険や労災保険を通す場合は、病院は毎月末で締め切って翌月初旬に計算し、社会保険報酬支払基金や労働局に提出する流れだ。

以上から、いったん全額負担した場合のその後には2通りが考えられる。
①後日保険証が届き、受診月内に病院に提示
 →通常は病院から7割が払い戻される
②後日保険証が届くが、病院の診療報酬計算に間に合わない、又は間に合っても病院に断られる
 →別途協会けんぽへ「療養費請求手続」をして、7割が払い戻される

以上から、結論として「保険証が間に合わなかったから全額負担となった」ということにはならないしくみだ。
全額負担となってしまうケースは、受診時に保険証を提示せず、かつ、その後何も手続をしなかった場合、ということになる。
「保険証がないと病院に行けない」という方がいるが、大いなる誤解だ。

証明書
とは言っても、資格取得時に受診の予定がある場合は、同じ月内に保険証を病院に提示できることが望ましい。
毎月中旬くらいまでには届出ができれば通常は問題ない。
法律上は入社日から5日以内の届出と規定されている(実務上は1カ月以内程度なら特段問題ない。また、2カ月以内なら行政も通常と同様に受け付けるが事業所の給与計算で混乱する可能性がある)。
そこで、毎月1日~15日までの入社は遅くとも当月20日までに手続完了するよう心がければ、保険証問題の主たる部分を回避可能である。
※「主たる部分」とは、後日療養費の請求手続を行わざるを得なくなる状態を指す

問題となるのが毎月20日以降の入社の場合だが、この場合は当月中に保険証を手にできない可能性が高い。
この場合、健康保険被保険者である旨の「証明書」の発行を請求する方法がある。
証明書の制度は、緊急でやむを得ない場合に限って認められる制度。受診予定もないのに発行を請求してはならない。
以上のようにどうしても必要な場合は「証明書」を請求することになるが、証明書が送ってくるまでに数日要するためそれでも間に合わない可能性はある。
間に合わなければ、やはり療養費の請求となってしまう。

最後に
保険証はとても大切なものだ。
しかし、健康な状態であれば用がないものでもある。
従って、資格取得手続がついつい延び延びになり、ある日病院に行かざるを得ない状態になって「急ぎで手続」なんてことはよくあることだ。
小職が社会保険労務士業でなければ、絶対にこの部類だ(笑)。

資格取得手続は、法律上の適用要件を満たせば絶対にしなければならないものだ。
ということは、年金手帳の確認と被扶養者の状況さえ確認できればすぐ届出ができるわけだから、早くしておくに越したことはない。

中には、「手続をした翌日に退職した」というような話もある。
これは非常に問題で、事業所としては保険料をドブに捨てたようなものといえよう。
この点については、文章では何とも書きがたい...

ついでに
社会保険の話ばかりだったが、採用時には雇用保険の取得届も必要だ。
法定期限は社会保険が入社日から5日以内であることに対し、雇用保険は入社した月の翌月10日までと異なる。
雇用保険については、同一月に採用した者については、翌月上旬にまとめて手続きすればよい。
このように、必ずしも社会保険と同時にしなければならないわけではない。

この時期、3月卒業の学生を4月入社前の期間についてアルバイトで雇用するケースがよく見受けられる。
学生であっても、要件を満たせば社会保険は強制加入なので注意を要する。
一方、雇用保険は原則として学生は適用除外だ。
ただ、そのまま卒業して就職することが明らかである場合は、例外的に被保険者となれる。
従って、変な話だが、内定者を卒業前に雇用する場合は、雇用保険については加入・加入しないの選択肢があるという珍しい状態となる。