日本の最高額紙幣は長らく聖徳太子だったが、昭和の終わり頃から福沢諭吉が一万円札の顔となった。
数カ月前、福沢諭吉の「福翁自伝」を読んだ。
そして、いま、「学問のすすめ」を読んでいる(岬龍一郎氏訳)。
まだ全17編のうち4編までしか読んでないが、とても素晴らしい内容だ。
「これらは誰もが学ぶべき実学であり、身分上下の区別なく、すべての人間がたしなむべき学問である。こうした心得を持っていれば、それぞれがそれぞれの職業で、その務めを果たし、生計を立てることができる。そうなれば一身も独立し、一家も独立し、ひいては国家の独立につながるのである。」
「(無法者)自分自身は国家の法律で守られ、それを頼りながら、不利益なことに対してだけは平気で法を破るからである。」
「国民の一人ひとりが自分の行動を正しく保ち、学問に志し、広く知識を取得し、おのおのの立場に応じた才能と人徳を磨くことである。同時に政府は、政治をわかりやすく国民に伝え、その政策が国民に平安をもたらすように努めるべきである。そして国民と政府が一つとなって、わが国の繁栄と平和を築くことこそ、私のすすめる学問であり、その目的はこの一点にある。」
「人間、独立心をなくして他人に頼る者ばかりが多くなると、国民全体が依頼心の強い者ばかりとなって、個人的な援助をする人はいなくなる。たとえていえば、目の不自由な人に、誰も手を引いてくれる人がいないのと同じことだ。」
「一国の危機存亡に関わるとき、国民の立場だからといって、政府のみに国家の安全を任せ、ただ傍観してよいという理屈はどこにもない。日本人としての名前を持っているということは、すでにわれわれは日本人であり、この国で生活する権利を持っているということだ。権利があるということは、当然、それに伴う義務と責任があるということに他ならないのである。」
「もし役人のほうが民間より利益が多いというのなら、それは税金の無駄遣いというべきである。多すぎる利益をむさぼるのは紳士のやることではない。無芸無能の人間がたまたま幸運で役人となり、高い給料を取って贅沢をしている者がいるとしたら、それはわれわれの友ではない。」
学問のすすめ、という著作の存在は、日本人なら誰でも知っているだろう。
小職も、おそらく小学生のときから知っている。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」という誰でも知っているフレーズから始まるこの書、40歳をすぎて初めて内容を読むことになった。
時代背景は明治初期(明治4年~9年)だが、それから約140年後の今日でも十分通用する内容だ。
小職は、温故知新という言葉が好きで、「有限会社温故知新」という会社まで設立したところであるが(設立以来休眠中)、ますます「温故知新」を確信したところだ。