ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

家庭で作る感想文の力

2007年08月16日 | 中学受験 合格力随想
読書感想文というと、つい感想を書くことに主眼を置いてしまいがちです。ところが、感想や意見は、だれが書いてもあまり変化がなく、ある枠内に収まってしまいます。例えば、おいしいものを食べたときの感想を聞かれた場合、感想は、「おいしい」「すごくおいしい」「とってもおいしい」ぐらいに収まります。つまり、感想や意見には表現の変化をなかなか盛り込めないのです。

読書感想文の感想も同じです。単純に言えば、「おもしろい」か「つまらない」かが、感想の究極の形です。 しかし、同じようにおもしろいと感じても、その感じ方は人によってさまざまなはずです。では、さまざまなところはどこかというと、自分の体験に照らし合わせて感じた部分と、自分のこれからの行動に結びつけて感じた部分です。そこで、良い感想文とは、自分のこれまでの体験や、自分のこれからの行動に結びつけて書く部分を増やすということになります。

夏休みは、幸い時間がたっぷりあります。「道は生きている」の本を読んで、家族で道の探検などに出かければ、体験はどんどん増えます。「犬に本を読んであげたことある?」の本を読んで、試しに家で飼っているネコに本を読んでやれば、新しい発見があるはずです。そして、夏休みの最終日に、1日で感想文を仕上げようと思うのではなく、3、4日かけて毎日400字ずつ書くようにしていけば、負担はほとんどありません。この記事を読んで、楽しく楽に感想文を書いていってください。

〔ここでひと言〕…学校の先生方にお願いしたいことは、小学校低学年に読書感想文の宿題を出すようなことは、ぜひやめていただきたいということです。低学年の感想文指導には、何の教育的意義がないと私は考えています。


■■読書感想文の書き方■■

■いまの感想文指導には無理がある■
感想文が楽に書けるようになるのは、年齢的には小学5年生からです。小学1~4年生は、全体の構成を考えて書くという能力がまだ育っていませんから、大人が全体の方向づけをしなければ自分で本の流れに合わせて感想文の流れを考えていくという書き方はできません。また、小学1~4年生の場合、似た話がうまく見つかる場合と見つからない場合とでは、作品の出来に大きな差が出てきます。大人(親や先生)が近くにいて、「この次はこんなことを書いたらいいよ」とときどきアドバイスをしてあげなければまとまった作品を書くことはできません。

なぜ学校のふだんの授業で感想文を指導せずに、夏休みの宿題というかたちで感想文を書かせるかというと、感想文は(特に低中学年の場合は)、一人ひとり別のアドバイスをしなければならないからで、30人から40人を相手にした一斉指導ではそういうアドバイスはできないからです。感想文の宿題を書かせる時間があれば、その時間を読書に充てた方がずっと子供のためになります。

■子供まかせでは書けない■
「なんでもいいから自分で好きな本を選んで、自分で好きなように書いてごらん」ということでは、感想文は書けません。小学生の場合は、大人がなんのアドバイスもせずに感想文を書かせるぐらいなら、感想文を書くことそのものをしない方がいいのです。単に字数を埋めるだけの感想文は、何の勉強にもなりません。

■じょうずな感想文を書くコツはあるが■
書くからには、じょうずな感想文を書いて、コンクールなどに入選したいとはだれもが思うことです。作品の出来具合の半分は、似た話などの題材の部分に支えられています。また、もう半分は、感想の部分の一般化の深まりに支えられています。ですから、感動のある似た話が連想できるような本を選び、感想の部分で大人の人が一般化の手助けをしてあげれば、じょうずな感想文が書けます。

しかし、こういうかたちで親や先生がアドバイスをすることは、子供にとってはあまりうれしいことではありません。また、親や先生に支えられてじょうずな作文を書いても、教育的な意義はありません。ですから、感想文の目標はじょうずな作品を書くことにではなく、ひとまとまりの本を読み、ひとまとまりの文章を書く練習をするということに置くべきです。

■書き方の手順「まず本選び」■
まず本選びですが、子供が「この本、おもしろいから書きたい」と言うような本が必ずしも書きやすい本であるとは限りません。子供が自分なりに似た話を見つけることができたり、想像をふくらませたりできるような本が書きやすい本です。この本選びは、大人がアドバイスをした方がいいようです。少なくとも、子供には「似た話や想像した話が書けるような本が、感想文の本としては書きやすいよ」と言ってあげるといいと思います。書きたいテーマが決まっているときは、インターネットの書店を利用して関連する図書を数冊用意すると話題が広がって書きやすくなります。

■書き方の手順「次に字数配分」■
感想文の宿題は、原稿用紙3枚程度(400字詰めで1200字)の分量で指定されることが多いようです。これだけの分量を1日で書くというのは大変です。無理のない字数配分は、1日1枚(400字)です。感想文の宿題をするために、4日間の予定を立てて、1日目に400字以上、2日目も400字以上、3日目も400字以上と書いていって、4日目に全体を通して要らないところを削り、清書するという予定を立てれば無理なく書くことができます。

■書き方の手順「1日目の400字」■
本のはじめの方から一ヶ所、似た話や想像した話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、自分の似た話を書き、最後に「たぶん」「きっと」「もしかしたら」などという言葉を利用しながら、自分の感想を書きます。
・本の引用(1)→似た話(1)(もし…だったらと想像してもよい)(たとえも入れる)→感想(1)(たぶん、きっと、もしかしたらなどと考えてみる)

■書き方の手順「2日目の400字」■
2日目も同じです。本の中ほどから一ヶ所、似た話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、似た話を書き、感想を書いていきます。
・本の引用(2)→似た話(2)→感想(2)

■書き方の手順「3日目の400字」■
3日目も同じように、本の終わりのほうから一ヶ所選んで書いていきますが、最後の感想のところがちょっと違います。1日目、2日目は、引用した小さな箇所の感想でしたが、3日目は本全体についての感想を書いていきます。小学5・6年生の生徒の場合、この感想は、「○○は(人間にとって)……である」というような一般化した大きな感想を書いてまとめます。この感想の部分は、お母さんやお父さんと話し合いをして、子供自身の考えを深めていくといいと思います。そして、「私はこれから」などという言葉を使い、この本から得たことを自分のこれからの生き方にどうつなげていくかを考えてまとめます。中学生の場合は、結びの5行に「光る表現」を入れていくとよいでしょう。
・本の引用(3)→似た話(3)→大きな感想(○○は人間にとって……。私はこれから)

■書き方の手順「4日目の清書」■
4日目は清書です。お母さんやお父さんが全体を通して読んであげると、要らないところが見つかると思います(書いた人自身には、要らない部分というものはなにかわかりません。これは大人でも同じです)。この要らない部分を削ります。それに、書き出しの部分に本の引用として情景描写の部分を入れられれば、書き出しの工夫ができます。これは無理のない範囲でやっていくといいでしょう。

■書き方の手順「できたらほめる」■
書いている途中でも、書き終えたあとでも、親が「これは、おもしろいね」「それは、いいね」と、子供の書いた内容のいいところやおもしろいところをどんどん認めてあげることが大切です。多少おかしいところや変なところがあっても、子供が書いた内容をできるだけ尊重してあげてください。これと反対に「これは、こうした方がいいんじゃない?」「そこは、ちょっとおかしいんじゃない?」などという否定的なアドバイスをすると、勉強でいちばん大事な子供の意欲をそぐことになります。大事なことは、いい作品を仕上げることではなく、手順にそってできるだけ自力で書く力をつけることです。

■学校では本当の感想文指導はやりません■
感想文の指導には、生徒ひとりずつ異なるアドバイスが要求されます。更に作品として完成させるためには、書いている途中にも頻繁にアドバイスをする必要が出てきます。このような対応は、普段、学校授業の中ではできません。その意味では、夏休みの家庭での感想文への取り組みは、良い教育的機会と言えるかもしれません。

澪標
にほんブログ村 受験ブログ 中学受験へ



最新の画像もっと見る