ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

蛍への思い

2007年08月26日 | 中学受験 行雲流水録
蛍が見られる時期が今年も来て、過ぎていきました。みなさんは蛍を見たことがありますか?蛍は清流にしかいません。絹糸をつくる蚕という蛾の幼虫がいますが、この蚕は桑の葉しか食べません。それと同じように、蛍は幼虫時代に「かわにな」という虫しか食べないのです。この「かわにな」が清流にしかいないため、ほたるも清流に生息しているとのこと。

日本人は、ずっと昔からほたるの美しい輝きに心をよせてきました。平安時代には、人の魂が抜け出て美しく飛び交っているのだと考えていたようです。ほたるが成虫になって飛び回ることのできる期間はたったの十日間。この短い期間に「虫が光る」というこの単純な行いを人間は魂に結び付けて考えていたのです。

水の音に涼しさを感じたり、紅葉を愛でて楽しむといった直接的な感覚以外のものに思いを馳せることができるのは、日本人のすばらしい感性の一つだと思います。このすばらしい感性の一断面を切り取り表現していくことに、文章作法の醍醐味があります。

子どもたちの文章表現が、はじめは、「おいしかった」「楽しかった」というわかりやすい気持ちが書かれていたのに、だんだん学習を続けてくると「おいしく感じられることの幸せ」や「楽しみを自分で見つける喜び」など、複雑な感情が表されるようになってきます。

この思いを言葉にすること自体、かなりたいへんな作業ですが、言葉を選んで気持ちにぴったりの表現を工夫することで、子どもたちの言葉は確実に豊かになっています。それと同時に、心も豊かになっているのです。この変化は、どの子どもにも必ずあらわれます。それはほたるの光にも似たかほそけき煌めきですが、私たちを魅了してやみません。

澪標
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