ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

信じる力(再)

2007年12月27日 | 中学受験 合格力随想
本年1月に掲載し、ご反響のあった記事を敢えて前倒しで、今年も再掲示致します。今この時も、1分1秒を大切に頑張り続けるお子さまと保護者の方々へのささやかなエールとして…

『今日から本格的な中学受験日程の開始です。お預かりした小6生のあれこれを思い出していると、以前指導した生徒のことを思い出しました。いい機会なのでここにご紹介したいと思います。

その生徒にはとても憧れている中学がありました。彼はぜひその中学に入りたいと思い、毎日頑張って学習していました。ところが、なかなか成績は伸びません。その中学は、難関中学といわれている学校で、どう考えてもそのときの彼の成績では無理な状態だったのです。
お母さんは悩み、彼に言って聞かせました。「あなたの成績では、その中学は無理だ。塾の先生もそうおっしゃっているでしょう。他にもいっぱい、いい中学があるんだし、別の学校を受験しよう」、と。すると彼はポタポタとなみだを落とし、首を横に振って「いやだ。だって、オレそこに受かるもん」といったのです。

  「受かるもんって……、ほら見てごらん。偏差値、こんなに足りてないんだよ」
  「でも、オレは受かるもん」
  「なんで? どうしてそう思うの?」
  「どうしても」
  「だって、ほら、成績のデーターが……」
  「だけど、オレ受かるもん」

なんべん説得しても、同じでした。彼は、「受かるもん」としか言わず、もくもくと勉強を続けるだけでした。仕方なくお母さんは決心しました。そこまでいうなら受けさせよう、ダメなのはわかっているけど、とにかく受けて落ちれば彼も納得するだろうと。
試験当日、彼は遠足にでも行くような顔で家を出、たくさんの賢そうな受験生を見ても、一向に怯む様子もなく、楽しげに試験会場に消えていったということです。そして翌日の合格発表。彼の受験番号はしっかりと掲示板に張り出されていました。驚くお母さんに、彼は言いました。「ね、受かるって言ったでしょう」と。

お母さんは「あの子ったら、まるで合格するのがわかってたみたい」と、おっしゃっていました。そして、続けられたのです、「とにかく、信じこんでたみたい。絶対に自分は合格するって」。
彼の偏差値はたしかに低かった。けれど、彼にはそれを補って余りある別の才能がありました。それは、自分を『信じる力』、あきらめずに『努力し続ける力』。きらめくような才能なんかなくたって、この二つの力さえあれば、たいていの望みは叶うのだと改めて教えられたのでした。
このことを思い出すと今でも自然に涙がこぼれます。今このとき、このお話を自分の力を信じ入学試験に取り組んでいる全ての受験生に、エールを込めて送りたいと思います。
自分を『信じる力』、あきらめずに『努力しつづける力』に神は宿る。と言うことばとともに…。(平成19年1月20日掲載)』

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