
最近読んだ本の中で読書をしない子供に本を読ませる方法について書かれている本がありました。それには絵本がよいのだそうです。大人が読んでいいと思う絵本、大人が読んで感動する絵本を子供にも読ませる。絵本というと子供の読むものと思われがちですが、読み聞かせをすると、大人の私が読んでも感動する絵本がたまにあります。また、絵本や童話から題材を取った中学入試の問題もつくられています。そこでそんな一冊をご紹介します。

『きつねのおきゃくさま』(あまんきみこ文)は、腹ペコきつねがやせたひよこに出会い、もっと太らせてから食べようともくろむところから始まります。しかし、ひよこに「優しいお兄ちゃん」と呼ばれてぼうっとしてしまうのです。

太ってきたひよこは、ある日散歩に出かけ、やせたあひる・うさぎに出会い、「どこかにいいすみかはないか」と聞かれ、きつねの家を紹介します。そして四匹で暮らし始めます。きつねは三匹が太ってから食べようと考えているのですが、ひよこ・あひる・うさぎはきつねのことを「神様みたいなお兄ちゃん」と呼びます。

そんなある日、山からおおかみが下りてきます。ひよこ・あひる・うさぎにきつねがいるのを見つけ、食べようとします。そこへきつねは飛び出し、おおかみと勇敢に戦います。おおかみは逃げていきますが、その晩、きつねははずかしそうに笑って死んでしまいます。三匹はそんなやさしい、神様みたいな、勇敢なきつねのお墓を作り、涙を流します。

―ここでお話が終わるのですが、初めて読んだ時は胸が詰まって、最後が読めませんでした。信頼されたきつねの心がだんだんと優しい気持ちに変わっていく様子が伝わってくるのは絵本だからこそと思います。短い文と絵が読み手にこれほどの大きな感動を与えることができるのは、良書であるとともにイマジネーションを刺激する絵本ならではの特性かもしれません。

どんな本を与えたらいいのかわからないという場合は、まず、親が読んでみて、いいと思った本を子供に与えればいいのです。絵本ならすぐに読めますし、子供も入りやすいと思います。大人がいいと思った本は子供にもきっと心に残る本となるはずです。
澪標