勉強が予定よりも早く終わると、保護者の方はつい、「そんなに早く終わるのだったら、もう少しほかのこともやっておこう」と言ってしまいます。しかし、それは余りよいことではありません。お子さんは、自分なりに、与えられた課題を早く仕上げて、お母さんに褒めてもらいたい、又は、早く勉強を終えて遊びに行きたいと思っています。
ところが、早く終わったことによって、その早く終わったことに対する罰であるかのように、新しい勉強が追加されるのですからたまりません(笑)。そういう勉強の追加をやると、子供はそれからだらだら勉強するようになります。早く終えない方が得だということを学習してしまうからです。
犬の躾にも、似たようなところがあります。広いところで犬を放して遊ばせたあと、「おいで」と言ってもなかなか戻ってこないことがあります。何度呼んでも戻ってこないので、やっと戻ってきたときに、飼主は犬を叱ってしまうのです。「どうして早く戻ってこなかったの。ゴツン」すると、犬は、戻ってくると叱られるのだということを学習してしまいます。その結果、ますます戻ってこない犬になるのです。
こんなときどのようにしたらいいかといえば、自分の都合で考えるのではなく、相手の立場になって考えるということ以外ありません。それは、犬であれ人であれ相手が自分よりも弱い立場にいるときほど必要なことです。こんな失敗は、効率性を求める局面に当たれば誰でもしています。つまり、本来犬の躾や人の勉強というものは効率性とは相容れないものだと理解すべきなのです。だからこそ、そういう間違いを経験した人は、必ずその経験を次につなげていく必要があるのです。
では、勉強が予定よりも早く終わったらどうしたらいいのでしょう。その前に、勉強は時間でやるのではなく、分量でやらせることが大事だと認識すべきです。「〇分の勉強」ではなく、「○ページの勉強」というように目標を決めます。その「〇ページの勉強」が見積もりよりもかなり早く終わった場合、保護者の方は、「わあ、すごい。早く終わったね」と喜んでおしまいにしておきます。そうするうちに、だんだんと、その子の実力に応じた分量がわかってきます。
しかし、その場合でも、目一杯の分量はやらせずに、少しものたりないぐらいの分量で続けていくことが大切です。少なめの分量であれば、子供は自分で勉強の仕方をコントロールすることができます。時間で決められたり、多すぎる分量を与えられたりすると、自分で自分の勉強をコントロールすることができなくなります。このコントロールする力がいわゆる自律心なのです。
犬の躾の場合は、別に書かなくてもいいかとも思いますが(笑)、犬に長いリードをつけて遊ばせます。そして、「戻っておいで」と言いながら、リードを少しずつ引っ張ります。そうすると、犬は当然引っ張られて戻ってきます。そこで、「えらい、えらい」と褒めてやるのです。できなかったことを叱るよりも、できるようにさせてできたことを褒めるのがコツです。(ここは犬も人も同じです。)
しかし、ここでもう一つ犬には大事なコツがあります。それは、叱るとき、ごくたまに厳しく叱ることです。いざというときには厳しいということがわかっているから、優しく褒められたときに嬉しくなるのです。(これはあくまで犬の心理操作だけのはずですが…)