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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

「知識の身体化」について

2008年11月19日 | 中学受験 合格力随想
ある本の中で、未来の教育のことが書かれていました。未来の教育は、「体験」を中心としたものとなるとのこと。これを実際の学習にあてはめてみると、例えば、英語では、「英語漬け」の生活をするのがいちばんいい学習の仕方で、それが難しい場合は、できるだけ「イメージ化」して覚えるということだそうです。これは、納得できる考え方です。

覚えることを「イメージ化」することについては、記憶術という方法があります。例えば、数字の「1」から「100」までの百マスの表を作り、そのそれぞれの数字に「イメージ化」できる言葉をあてはめていきます。「33」だったら「耳」というイメージです。そうすると、無味乾燥な数字がイメージ豊かに記憶できます。これは、だれでも多かれ少なかれやっていることですが、覚えることを必要とする学習すべてについて、意識的かつ体系的に取り組めばかなり成果が上がると思います。「体験」と「イメージ化」の本質は、「知識が身体化する」ことです。「知識が身体化する」とは、「学んだことが自分自身の血肉となり手足のように使える状態にする」こととお考えいただければいいと思います。では、これら以外に「知識を身体化する」ものには「反復」と「感動」あります。

私は、深く理解したいと思う本を読むときには線を引きながら読みます。そうすると、例えば二度目に読むとき、線を引いたところだけ読めば全体を思い出すことができます。さらにそのことを推し進めて二度目に読むときも線を引きます。そうするとそこが二重線になります。三度目に読むときは、更に波線になったり、四角で囲まれたりします。そのように、何度も繰り返して読むと、読んだ本が自分の中に消化されてくる感じがします。逆に言うと、一度しか読まない本は、その本のかなりの部分が未消化のままだと感じるのです。

何度も繰り返して読むような本があると、読む力が育つといわれるのは、この反復の大切さからきているのだと思います。同様のことが、学習についても当てはまります。参考書でも問題集でも、一冊同じものを繰り返し五回学習するというのが学力アップの鉄則です。読むたびに大事なところや印象に残ったところに線を引いておけば、二度目、三度目と繰り返すたびに反復の時間は短縮されていきます。

ただ、問題集の場合は、短縮されるとともに密度も濃くなってくるので、苦痛を感じる場合があります。それは、一度目にできなかった問題を中心に二度目の問題を解くので、二度目は解けない問題ばかりが続くからです。三度目も同じです。まさに解けない問題のオンパレードのため、この苦痛をのりこえないと問題集の反復学習はできません。個人的な経験では、一度目に解けない問題は、二度目も、三度目も普通は解けませんでした。ここで、「また、できない。何て自分は頭が悪いんだろう」とあきらめてしまうことが多くあります。しかし、実はご経験のある方もいらっしゃると思いますが、反復学習は四度目ぐらいから急に解けるようになるものなのです。それが、「同じ参考書や問題集を五回以上繰り返す」ということ本来の意味であり価値だと思います。

また「感動」については、受験のときに出た問題の内容は、何年かたったあとも覚えていることが多いものです。それは、その問題を解くときに、精神がいつもより集中していたためです。また、大人になって小学校時代の学習を思い出すとき、先生や友達と楽しくやっいたころの学年の記憶はたくさんあるのに、楽しくなかった学年のころの記憶はあまりないということがあります。学習の能率を高めるには、学習の質を高める必要があります。そしてそのためには、学習をするときの感情を活性化しておくことが必要です。それが、学習における「感動」の大切さということです。その学習に、「感動」をもたらすための方法」はいくつかいわれています。

第一は、楽しい雰囲気の中で学習を行うことです。学習をしたあとに褒められると、その学習の内容も定着します。

第二は、目標をもって学習を行うことです。目標には、将来の大きな目標ももちろんありますが、それよりも、もっと身近な目標をうまく生かすことです。例えば、制限時間内に行うことは、勉強に取り組む気持ちを活性化します。長い時間をかけているわりには成績が上がらないという子がいます。それは、長い時間をかけているために逆に集中度が低下しているということもあるのです。

小学校低中学年のころは、制限時間で学習をするよりも、ページ数などで目標を決めて、早く終わればあとは遊べるというふうにしておいた方が集中力が高まります。よくないやり方は、子供ががんばって早く終えたときに、「時間があるから、もう一題」と追加してしまうことです。こういうことをしてしまうと、子供はだらだら勉強する癖を身につけてしまいます。「よく学びよく遊べ」というのは、学習の密度を高めるためにも大切な考え方なのです。

第三の方法は、緊張感を持つことです。そのためには、悔しさをバネに学習する、叱責をきっかけにして学習するというのも、いい方法です。しかし、ネガティブな動機をもとに学習することは、学習の密度を高めはしますが、上手に工夫しないと、身体や精神に負担をかけることになります。子供を叱るときは、叱ったあとのフォローが大切で、「君ができるはずだと思うから叱ったんだよ」と叱った動機を明るく伝えておくことが必要です。

緊張感を持つためには、このほかに、五感をフルに活用して勉強するということも大切です。何かを覚えるときは、ただ読むだけでなく、手で書いたり声に出したりすると効果があります。昔の人の中には、英語の辞書を覚えるときに、覚えたページを1枚ずつ食べた人もいたそうです。それぐらいの気迫で覚えると、記憶も定着するということです。心理学の実験で、吊り橋の上で待ち合わせをすると、その待ち合わせた人に好意を持つというものがあります。緊張のある状況で遭遇した人物や事物は深く印象に残るからです。同じようなことを学習にも適用することができます。

第四は、潜在意識の活用です。子供に限らず人間は、無意識のうちに自分に対する限界を設けています。その限界は、自分に対して大きな影響力を持っていた人が、無意識のうちに言った言葉や動作が自分の潜在意識の中に入ったところから来ています。言葉や動作には、常に二重三重の情報が含まれています。

例えば、大人が子供に、「こんなのができないなんてダメだぞ」と言ったとき、子供の顕在意識に伝わる言葉の意味としては「ダメだぞ」だけです。しかし、その言葉を言った人の気持ちの中に、「本当にこいつはダメだ」という思いがあれば、その思いが同時に子供の潜在意識に伝わります。しかし、言った人の気持ちの中に、「こいつはできるはずだ」という思いがあれば、その思いが子供の潜在意識に伝わります。言われたことが事実になるのではありません。当然のように言われたことが、その当然さを実現しようとして事実になるのです。

子供に対して大きな影響力を持つ保護者の方の役割は重要です。保護者の方は常にご自分のお子さまに対して、「この子は、絶対にいい子になる」と固く思うことが必要です。そしてそれは、日々お子さまをお預かりしている私たち自身の心構えでもあります。


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