素敵な恋愛物語『奥様は魔女』

　ハートフル・ムービーを観た。古い方にはご存知の物語で、旧作のリメイク版かと思ったが、さにあらずの映画『奥様は魔女』。１９６４年から放映開始されたアメリカン・ドラマ「奥様は魔女」は、女優：エリザベス・モンゴメリーが主役を勤めた魔女と普通の男性との家族物語。鼻をピクピクさせて、色んなものに魔法をかけてしまうサマンサ役が超人気だった。同時期に放映されていた「ルーシーショー」と人気を二分するほどの人気コメディドラマでした。若い女性に人気の「サマンサ・タバサ」のブランド名も、この魔女の奥様・サマンサとその魔女っ娘・タバサからの命名なのです。いろんなことを魔法で乗り越えるこのドラマは、時に楽しく、時に悲しい物語で、私もＴＶに噛り付いて観ていた記憶がある。当時流行っていたＴＶドラマ「逃亡者」の主人公で医師：リチャード・キンブルと同じくらい大好きな番組でした。そうそう、もうひとつ、「宇宙家族ロビンソン」も同様でした。
　日本でもかつて大ヒットした往年の人気ＴＶシリーズ「奥さまは魔女」を、オスカー女優ニコール・キッドマンと人気コメディアンのウィル・フェレル主演で現代風にリメイクしたファンタジー・ラブ・コメディ。落ち目のハリウッド・スターが「奥さまは魔女」のリメイクで復活を期し、相手役に無名の新人を大抜擢するが、なんと彼女は、普通の恋を夢みる本物の魔女だった…。共演はシャーリー・マクレーンとマイケル・ケイン。監督は「めぐり逢えたら」のノーラ・エフロン。
　ある日、魔女イザベル・ビグロー（ニコール・キッドマン）は、魔法を使わず普通の生活をし、普通の恋がしたいと人間界へ舞い降りる。一方その頃、最近すっかりヒットから遠ざかっている元トップスターのジャック・ワイヤット（ウィル・フェレル）のもとにＴＶドラマ「奥さまは魔女」のリメイク企画が舞い込んでくる。このドラマに復活をかけるジャックは、ダーリン役の自分を目立たせるため、サマンサ役には新人女優を起用したいと考える。ところが、なかなかイメージ通りの女性が見つからず苦労していたジャックは、ある日街で偶然イザベルを目撃、サマンサのイメージにピッタリと彼女を大抜擢するのだった。大ヒットシリーズでは、サマンサ役のエリザベス・モンゴメリーのように、うまく鼻ピクピクが出来る新人女優でなければならなかったのだ。こうして魔女であることを秘密にしたままジャックとの撮影に入ったサマンサだったが、いつしか２人は私生活でも恋に落ちてしまい…。
　離婚を望んでいたジャックは、イザベルの魔法のおかげから、離婚を妻から宣言され、大喜び。自宅に関係者を招いてのパーティーで大盛り上がりだった。この勢いで、関係にヒビが入っていたイザベルにプロポーズをするが、イザベルは自身が魔女である事を告白する。信じないジャックに、魔法を見せる。ほうきで空中を飛ばして見せた瞬間、ジャックは本物の魔女であった事に驚愕する。しかし、優しい、普通の女性以上な彼女を真剣に愛していた事に気がつく。人間界を離れたら１００年戻れないと言う魔女の掟があるが、それでも傷心イザベルは魔法の世界に戻る事に。必死に追いかけるジャックであった。そして、「ステージ１６」へ。ここは、「奥様は魔女」の撮影セットのある二人の最も落ち着く場所なのだ。イザベルは、最後の別れのため、二人の家のテラスでぼんやり眺めていた。そこに、ジャックがやってくる。「結婚しよう」の言葉に、イザベルは、「私は魔女だから、結婚しても幸せに暮らせないわ」と返す。ジャックは言う。「魔女だって、沢山人間界に住んで幸せになっていると思うよ。うーん、・・・・少なくとも一人はね！！」。「サマンサね！！！」とイザベル。そうなんです、あの旧作「奥様は魔女」でも、Ｅ・モンゴメリー扮するサマンサは、人間のダーリンと幸せに暮らしたんです。なんともハートフルな映画である。そして、ニコール・キッドマンの可憐さ、可愛さが余すところなく演出されていた映像。心に傷を負っていても、なんだか元気の出る映画ですね。こんな思いは、「ホリデイ」以来の感動かな。あの映画も、キャメロン・ディアスの素晴らしいハートフルな魅力に参ってしまいましたが・・・。旧作ＴＶシリーズのリメイクとの思いだったが、旧作を逆手にとって、その演出をしていくこの映画の構成に感嘆した。なるほど、こんな展開なら、旧作との比較という単純な評価にはならない。旧作ドラマにはない、本当の魔女としての恋を描くあたり、監督：ノーラ・エフロンの思いの強さなのだろう！！