時々新聞社

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旭川医大が患者に無断で製薬会社に検体提供。見返りに金銭の受領も

2008年02月29日 | 医療・社会保障
旭川医大病院(旭川市)が、患者から採取した血液などの検体を患者に無断で大手製薬会社4社に提供していたと発表した。氏名などの個人情報が渡されたケースもあり、4社は寄付金名目で計385万円を同病院に支払っていた。記者会見した病院長は「不適切だった」と謝罪した。
病院長によると、無断提供は2007年7月、学内からの投書で発覚した。4社はデンカ生研(東京都中央区)、アボットジャパン(東京都港区)、大正富山医薬品(東京都豊島区)、塩野義製薬(大阪市中央区)の4社であるという。
検体は病院内で廃棄処分される規定になっているが、臨床検査部の職員4人が4社から依頼を受け、2004年8月~2006年12月、梅毒TP抗体(1800検体)、HIV陰性検体(422検体)などを提供した。検体数は計2,579検体にのぼっている。
一方、4社は2005年5月~2007年6月、9回にわたり「医学研究奨励」の名目で計385万円を大学口座を経由して臨床検査部に支払っていた。
まったく信じられない事件である。
大学病院として、患者の病歴などは極秘中の極秘であるはずだ。特に、梅毒やHIV患者の場合は、それらが明らかになることによって、患者が社会的な非利益を受ける可能性があることは明白である。しかも、患者の同意(インフォームドコンセント)を得ずに、製薬会社に渡すという行為は、患者の人権を無視した行為であり、教育研究機関であり、かつ医療機関として自殺行為に等しい。さらに、研究目的で「謝礼」を受け取っていたというのだから、その倫理観は驚くばかりである。
同時に、製薬会社の対応もお粗末極まりない。
通常、研究目的で血液や組織検体を入手する場合は、入手先の医療機関の倫理委員会で審議を受け、承認を得た後に行うのが常識である。当然のことながら、倫理委員会は、検体を提供する患者から同意を得ることを命じるはずである。また、患者が特定できないように、イニシャルや記号などで匿名化を行うことを命じるはずである。そのような常識的な手続きさえ怠って、極秘に検体が横流しされており、しかも金銭まで受け取っていたとなると、これは「臓器売買」などとまったく差異はない。
今回の場合は、病院の検査部、製薬会社、双方とも倫理委員会を通さず、コッソリと検体を授受していたわけであり、その倫理観、患者無視の対応ははなはだしいものである。
医療機関、製薬会社とも、厳しい社会的制裁を受けることを強く希望するものである。