時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

ホワイトカラーエグゼンプション

2006年12月23日 | 政治問題
財界が切望し、厚生労働省が法制化を検討している労働時間の「規制緩和」策、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションについて、20-40代の会社員の73%が全く知らないと答えていることが、インターネットを使った連合のアンケートで判明したという。
厚労省は、一定の年収などを条件に「1日8時間、週40時間」の労働時間規制を撤廃するホワイトカラー・エグゼンプションの導入を検討中である。これは、今まで本紙でも指摘してきたように、財界から切望されているものである。早ければ、来年の通常国会での法改正を目指しているというから、国民も黙ってはいられない。
さて、今回の連合のアンケートは、10月に全国の正社員の男女約1000人を対象に実施し、「ホワイトカラー・エグゼンプションについて知っていますか」との設問に「内容まで知っていた」はわずかに9%、「名前は聞いたことがある」は18%、「全く知らない」が73%だった。
導入への賛否は「反対」が最多で46%。次いで「よく分からない」が40%、「賛成」が14%だった。「内容まで知っていた」と回答した人では「反対」が73%に上ったという。
賛否の理由では、反対の人は「無制限に残業を強いられる可能性がある」「サービス残業を制度で認めてしまう」など長時間労働を助長することへの懸念が強かった。一方、賛成の人は「人件費の削減につながる」などと答えたという。
反対者の多くが理由に挙げているように、この法律ができると、わずかばかりの給料の増額と引き換えに、無制限の残業が強要されることになりかねず、健康破壊はもちろん、深夜帰宅などで過程崩壊なども更に進むことが容易に予想される。内容が知られれば知られるほど、反対が広がるはずだ。
少し気になったが、「人件費の削減につながる」として賛成した14%は、いったいどういう立場の人間であろうか?管理職や現場労働者だろうか?少々乱暴な言い方だが、人件費の削減に賛成なら、自らの給料を全額返上して、削減に貢献してはいかがだろう。
ホワイトカラーの8時間労働制の崩壊、給与水準の低下などの労働条件の切り下げが進めば進むほど、やがてはそれが管理職や若い労働者、他の労働現場にも波及し、一層の労働条件の切り下げにつながるのは目に見えている。
産業革命後は、18時間、16時間労働などの過酷な労働条件が当たり前だった。その後200年にわたる歴史の中で、労働者や多くの国民の運動によって世界の国々で8時間労働制を確立してきたのである。そして、ヨーロッパなどでは、更なる短時間労働を法律で規制している国もある。
今回の政府・財界の企みは、これらの歴史そのものに逆行する策謀である。
労働者は、毎日何時間分かの労働力を企業に切り売りし、その対価を受け取ることによって暮らしているが、暮らしの目的は働くことにあるわけではなく、職場で過ごすことにあるわけではない。家族とともに食卓を囲み、友人とともにスポーツや趣味に興じるのが人間としての暮らしの目的であるはずだ。この人間としての原点を忘れないでいただきたい。
国民にとって都合の悪いことは、国民の知らないうちに次々と打ち出してくるのが、政府、財界の常であり、しかも、正直に「残業代不払い策」などと言わずに労働時間の規制緩和策、労働ビッグバン、ホワイトカラーエグゼンプションなどとごまかして、法案を作成しようとしていることだ。
先日も、厚生労働省の労働政策審議会において、この残業代ゼロ提案が再び提案され、労働側委員が強く反対し、削除を要求したことが報道されている。
国民と労働者の健康と生活を破壊するこのような法案の提案に対して、国民は瞬時も監視を怠ってはならないし、この企みの本質を理解した人たちが、経団連や厚生労働省に反対のメールやFaxを送ってくれることを期待している。