時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

大手銀行をめぐる2つの話題

2006年12月20日 | 財界
三菱東京UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループが年内にも政治献金を再開することに対し、批判が噴出し、とうとう献金を断念したと報じられている。不良債権処理が終わった大手銀行は巨額の利益を上げているのに、過去の赤字を理由に法人税を払っていないし、超低金利の預金金利や手数料など利用者への還元も不十分だ。それにもかかわらず、政治献金だけは「黒字企業だから当然」と特別視している姿勢には、「大手銀行のご都合主義」との厳しい指摘があり、今回の見送りが決定した。受け手の自民党も献金を辞退すると表明した。
本紙でも、この件は厳しく批判してきたが、世論の盛り上がりが献金にストップをかけたことは喜ばしい限りである。
もう一つは、大手銀行の自民党への融資の問題だ。
自民党に対する大手銀行の融資残高が05年末で約80億円に達し、3年間で倍増したことがわかったという。03年春に実質上国有化されたりそな銀行が同期間に自民党に対する融資残高を10倍に急増させたためだが、三菱東京UFJなど3大銀行は融資を圧縮しており、自民党から3大銀行への返済をりそなが肩代わりし、その残高は54億円に達している。
自民党本部の毎年の政治資金収支報告書によると、05年末の銀行の融資残高はりそなが約54億円と突出。大手銀行は旧東京三菱(現三菱東京UFJ)銀行が3億7500万円、旧UFJ(同)、みずほ、三井住友各銀行が7億5000万円だそうだ。
この記事を見て、つくづく自民党と銀行との癒着を再確認した。
そもそも、返済が必ずしも確実とは言えない政党への融資に大手銀行は当時から慎重だったらしい。政党は営利企業、営利団体ではない。にもかかわらず、何を担保にこれほど多額の資金を貸し出すのだろうか。もちろん、自民党にも資産があり、収入もあるだろうが、それはあくまでも使うための資産であり、収入であって、利潤を生む性格のものではない。結局のところ、銀行にすれば政策的な優遇などを期待しての融資(事実上のわいろ)であろう。
銀行は前述のとおり、政治献金の再開を中止したが、もし再開すれば自民党への融資の返済原資を今度は、銀行自身が穴埋めすることになる。利益を受けるのがお金を借りている自民党というのはとんでもない話だ。元は公的資金という名の血税であり、顧客サービスを徹底的に切り捨てて溜め込んだお金が、自民党に還流されるという典型的なわいろ政治である。
大手銀行は93年の総選挙の際、当時の都銀8行が自民党に総額100億円の協調融資を実施した。将来の企業献金を返済にあてることが融資条件で、当時の経団連の平岩外四会長が「経団連が返済に協力する」との念書を銀行側に示したと言われている。
このように、自民党は銀行からの献金を含む将来の企業献金を担保にして、銀行からお金を引き出し、その見返りに公的資金の投入、ゼロ金利政策による預金金利の引き下げなど、徹底した銀行支援策を行ってきたのだ。こういう政党と財界・大銀行との癒着を根本から断ち切るのが、企業献金の禁止である。
企業献金にストップをかけることは、日本の腐敗した政治構造を是正するうえで特に重要な課題であり、今回のように大銀行が献金をストップすることになれば、日本の政治を浄化するうえで大きな一歩になるに違いない。