鹿児島市夫婦強殺 被告に無罪判決/鹿児島地裁 (2010 12/10 10:50)南日本新聞
鹿児島市で昨年6月、高齢の夫婦が殺害された事件の裁判員裁判で、鹿児島地裁(平島正道裁判長)は10日、強盗殺人と住居侵入の罪に問われ、 死刑を求刑された無職白浜政廣被告(71)=同市三和町=に無罪を言い渡した。死刑求刑事件の無罪判決は裁判員裁判で初めて。 白浜被告は「(現場に)行っていないし、やっていない」と一貫して否認。同事件は殺害の直接証拠はなく、 弁護側は被害者夫婦に執ような攻撃が加えられていることから、 「動機はえん恨と考えるのが自然」として、強盗目的とした検察側立証に反論していた。 事件は2009年6月19日午前6時ごろ、鹿児島市下福元町の男性=当時(91)=方で、男性と妻=同(87)=の他殺体が見つかった。 県警は被害者宅で採取された指紋・掌紋が白浜被告と一致したとして同29日、殺人容疑などで逮捕。鹿児島地検は住居侵入と強盗殺人罪で起訴していた。 裁判員裁判では東京地裁などで4件の死刑求刑があり、いずれも有罪判決(3件死刑)が言い渡されている。 ♪地元新聞南日本新聞は判決前に下の引用した記事を書いていた。 本社在京記者クラブメディアと違って、 (検察と警察にやはり多少は遠慮がちながらも)ジャーナリズムとしての当然の取材と報道をしている。 引用開始・・ 求刑死刑と捜査 (2010-12-04) 鹿児島市下福元町の高齢者夫婦殺害事件。悲惨な現場に残されていた指紋などから逮捕、起訴された被告は裁判でも全面否認したが、鹿児島地検は死刑を求刑した。 有罪か無罪か、さらに有罪なら極刑も認めるのか。12月10日の判決言い渡しに向け、6人の裁判員と3人の裁判官は難しい判断を求められる、と各マスコミは報じた。 しかし、それ以前に論じなければならないこともあるのではないか。捜査は本当に十分なされたのだろうか。 「難しい判断を求める」ことになったのは、鹿児島県警、鹿児島地検にもその責があるかもしれない。と言ったら、酷過ぎるだろうか。 「事件の前足、後ろ足をまず調べるべきだが、今回はそれが立証できていないようだ」。事件捜査に詳しいある関係者はそう懸念する。 裁判で出てきた証拠からは、被告と被害者夫婦が顔見知りだったという事実はない。近所でもない。事件の半年ほど前に被害者宅を望める高台に行ったという過去はある。 年金生活だが、パチンコで大負けしてカネに困っていたかもしれない。 お金欲しさで被害者宅を狙ったとして凶器を準備せず、午後8時ごろ、その場にあったスコップで窓ガラスをたたき割って侵入したとされるが、 被害者や近所の耳目を引くようなそんな物騒なまねをするだろうか。お金が本当に欲しかったら、まずはこっそり目立たないように犯行に及ぼうとしないだろうか。 犯行現場や周辺に被告の靴と一致する跡はなかった。車のタイヤ痕も一致しなかった。被告の車の中から現場や犯行とつながる証拠も出てきていない。 もちろん事件発生から逮捕までに10日たっているから、その間に証拠が隠滅された可能性はあるが、いずれにせよ証拠がない以上、判断はできない。 カネ目的だったのに現場に現金が計13万円ほど、通帳も残っていた。被害者夫婦をスコップで何十回もたたいたとされるが、 そんなに激しい犯行現場で被告の髪の毛は特定できなかった。鉄製のスコップの柄や取っ手に皮膚細胞片も検出されなかった。 指紋も出ず、肝心の凶器と被告との関連はわからないままだ。 一方、現場のタンスなどに残っていた指紋が、コンビニ強盗未遂の前科のある被告の指紋と一致したとして、 それまで捜査線上に上っていなかった被告が重要容疑者となる。県警はすぐさま翌日、任意同行を求め、そのまま逮捕する。 「任同をかける前にまずは、被告の周辺捜査をじっくりすべきだったのでは」という指摘は一部関係者から出ているようだ。 ただ逮捕後は徹底した周辺捜査が行われ、事件との関連は何も出てこなかった。 否認する被告にポリグラフ(一般に言われる嘘発見器)はかけられていない。「通常、捜査上の心証をつかむには必要なのになぜ?」と先の関係者。 無理はしなかったということか。そして、県警は自白を取れなかった。えん恨による犯行ともみられるような悲惨な現場。 被告が犯人だとしたら、なぜあのような大胆で残虐な犯行に及んだのか、 その自供があって初めて合点のいく事件の概要がわかっただろう。 もちろん、これだけ注目された事件だから、あとで自白の任意性、信用性に問題をもたれないためにも、代用監獄(警察の留置場)は使わず、 ちゃんと拘置所(鹿児島の場合は拘置支所)に収監して、真剣勝負の取り調べを行い、自供をとらなければならなかったはずだ。県警はそれができなかった。 被告は「現場に行ったことはない」と犯行を否定している。本当に犯人ではなかったら、これらの疑問は解消できないで当然のことだ。 鹿児島地検は、タンスなどの指紋のほか、逮捕後に採取した被告のDNAと侵入口とされる窓の網戸についていた細胞片が一致したことと、 割れて立てかけてあった窓ガラス片にも指紋があったことを根拠に被告が強盗殺人犯である、とする。被告が「行ったことがない」と否認しても、 侵入痕と物色痕があることから犯人でありえないはずがない、というわけだ。 ただ、指紋やDNAが住居侵入の証拠だとみても殺人行為と結びつく直接の証拠は提示されてない。厳しい言い方をすれば、強盗殺人の罪を問いながら、 その証拠を導き出せなかったプロの捜査側、訴求側としては胸を張れるものと言えるだろうか。 一方、弁護側は「指紋は不自然な付き方をしているなど誰かが細工したもの、DNAは採取方法に疑問がある。資料が残っていず再鑑定もできない」と 証拠価値に疑問を投げかけている。その主張の根拠をもっと示してほしいと言っても、捜査権のない弁護側には難しいだろう。 最終弁論では「ずさんな捜査」と断じ、「疑わしきは被告人の利益に」と、刑事裁判の鉄則を説いた。 (宮下正昭) ♪検察側に立って、検察がリークした内容で文面を構成してきた大手マスメディアの記者ではとても書けない内容だ。 しかも今回の判決はこの記者の推定を越えて踏み込んだものだった。 くにたみの身になってお上の手抜き、不始末、いい加減さをチエックするのはメディアが預かる大きな役目。 南日本新聞はその役割を果たしている。この事件のようなヤメ検ではない真っ当な弁護士もいるし、このような新聞社もある。 日本は捨てたもんでは決してない。大手新聞もテレビも、本来の仕事をせんとエビゾー君を追いかけるので喜んでいたら、誰も新聞買わんようになり、 テレビ見るのは入院患者だけになりそうですよ。 |
2010年12月12日(日)「阿智胡地亭の非日乗」掲載
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