阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

モスクワで横断歩道を渡るのは命がけだった。 昭和50年代の海外あちこち記 その14   (本編のみ昭和50年代ではなく昭和47年9月の体験)

2024年10月03日 | 昭和50年代の海外あちこち記

1)休日に高台にあるモスクワ大学の正門に連れていってもらいました。ここからは首都モスクワが眼下に一望できます。

森と河とネギ坊主の教会のクラッシクな大都会の中に、帝政ロシア時代以降、共産党政権下で建設された威圧的なだけで美しくない壮大な官公庁ビルも沢山見えます。

 この高台へ次から次へと、式を終えたばかりに見えるウエデイングドレスの花嫁と花婿が友人達と車で上がってきて、何枚もモスクワの町をバックに写真を撮ります。

はしゃいだり、ふざけたり本当に楽しそうでした。

人前結婚式の後、ここで写真を撮ってから、役所へ結婚届を出しに行くというのが、当時のカップルのお決まりのコースで若いモスコビッチ(モスクワっ子)が

早くあそこで写真をとりたいと憧れていると聞きました。

2)訪問先への行き帰りは、商社の車で移動しましたが、この車が猛スピードで街中を飛ばします。大通りを横断する人は命懸けで渡るし、

乗ってるこちらも生きた心地がしないほどです。助手席に乗ったベテランの商社駐在員が大声のロシア語でロシア人運転手を叱りつけると

ようやく速度を落としますが、次に乗る時は又同じことで、前以上に怒鳴って何とか平常の速度に戻ります。

 あまり同じ事が繰り返されるので、その支店次長である大堀さんに運転手を毎回こんなに怒鳴らんといかんのですかと聞きました。

彼の答えによると、オフィスの事務員から運転手まで全てソ連邦外務省に申請してその部局に登録している人間が派遣されてくる。

必ず雇用するように義務づけられているので断る訳にはいかない。

 また当然ながら、その中に諜報部門の人間(エージェント)も送りこまれ紛れ込んでいる。

社会福祉政策の故か殆どが戦傷者の退役兵だが、無学文盲に近いのもいてその場合は社用車の運転にしか使いようが無いのが派遣されてくる。

 しかし彼らには軍用車を運転する感覚しかない。

色々やってみたが、この連中はまあ犬が悪さをした時と同じで、その場で怒らないとわからない、と言いました。

 どうみても立派な顔立ちの白人を犬呼ばわりして叱り付けるとは、何と言うことやと顔に出たのでしょう。

彼からすぐに言われました。

 この国は日本と違って社会階層差がきついんですよ、連中も社会的に生まれた時からずうっとそういう扱いをされているから そういうもんだとしか思ってない。

 この運転手に、このご主人様はいくら猛スピードで飛ばしても怒らないと一回思われたら、命がいくつあってもたまらないと言われてしまいました。

3)当方は九州若松で、ギブミーチョコレートとアメリカ占領軍のジープを追いかけた最後の世代ですから、

白人と見ると無意識に一歩引くという「擦り込み」をされてしまっていたなーと思いました。

その商社のモスコウ支店の次長さんは、ソ連の中央官庁の幹部役人の前でも、いつも背筋を伸ばし、愛想笑い一つ浮かべず堂々と振る舞っていました。

こういう社会主義国家の首都で単身赴任を続け、貿易ビジネスをやっている日本人がいるんやなと実地に知りました。

 今思えば商社マンの中に、社会主義国ビジネス専門に携わるプロフェッショナルの分野があった時代かも知れません。

出会いとは面白いもので、この商社の次長さんとは、5年ほどたったあと、北京で中国支店長として駐在されている時にもお会いしました。 

 私は機械メーカーの営業部門の社員として幾つもの大手商社の、個性豊かな商社マンたちと国内外のあちこちで仕事を一緒にさせてもらいましたが、

モスクワで出会った大堀さんは、今でも忘れられない方々の中のお一人です。

 今思えば彼らは皆、プロの「仕事師」でした。

彼らの世代が去ったのちに増えたのは、「サラリーマン商社マン」でしたが、それは日本が豊かになったことの現れ、またその証明かもしれません。

 

 (画像は全てネットから借用。昭和47年当時現地で撮影したものではありません)
 
 (本編は1972年・昭和47年9月に私的な理由で突然モスクワに行くことになった時の見聞に基ずく)

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