「地域医療再生への処方箋」と題する地方議員セミナーを受講しました。
講師は元埼玉県庁職員、城西大学経営学部助教授 伊関友伸氏
著書「まちの病院がなくなる」時事通信社「地域医療再生への処方箋」「自治体病院の歴史」三輪書店など
以下に本日の講演内容を紹介します。
医師不足問題の原因9の理由。患者の感覚変化、コンビニ医療指向、医療の高度化専門化等。
これまでの医学部定員の経緯を追うと、国では6年前から医師数の抑制を緩和し増員へ転換。平成23年までの4年間で1300人も医学部の定員は増えている!! 宮城県で70人の養成とは此れ如何に!
医師数を国際比較すると、人口千人当たりの医師数では、日本はギリシャ、スウェーデン、オランダの半分以下。OECD諸国平均数の3分の2の水準になっているが。
医療の高度専門化により1人の患者に複数名の専門医が担当者している現在。1人の医師で何人も担当していた“赤ひげ先生”時代は今昔物語。
勤務医は劣悪な労働環境にあり、休憩取れない休日なし。心を病む医者が18%もいる厳しいデーターあり。
女性医師が増加している現況に対して、勤務医でありながらも妊娠、出産、育児が可能な女性医師のための労働環境づくりが肝要。女性の医者が勤務医を続けられる環境づくりは自治体病院医師不足解消の有効な方策。
常勤医師の週間勤務時間数は平均66時間。しかし時間外労働時間数が少なくなく、これに加わる。
2004年新臨床研修制度が導入されたことにより大学病院の医局に若手医師が残らなくなり、公立病院の医師確保が困難になった。新制度で都会の大病院に流れるようになっ手から、自治体病院の医師不足が深刻に。
総合病院は現在、悪循環が好循環かの二極化傾向が進んでいる。一旦スタッフ不足になれば悪循環の連鎖から抜け出せなくなる。成長する病院か衰退する病院かの2分離方向。
患者の思いと医師の本音の格差
・患者“いつでも最高水準の医療を。待ち時間は短く、医療費は安く、死なない”
・医師“納得できる仕事、患者からの尊敬、自分の時間がある、眠りたい、技術を向上させたい”
舞鶴市民病院や松原市立松原病院、志木市民病院の事例を紹介。運営環境が急転し経営困難に陥った3事例。
医療施設(20床以上)の自治体病院数は11.5%で医療法人が65.5%を占めるが、自治体病院が、救急センターの39%、災害医療センターの50%前後、へき地医療の69%、周産期母子センターの43%を占め医療機関のセーフティネットになっている。
ガバナンスレベル、マネジメントレベル、オペレーションレベルの課題を分析すると、経営的視点が弱い自治体病院の現状が浮き彫りになる。
地域医療の危機は、実は地域の民主主義のレベルを高めることに!
患者と医療スタッフが相手の立場を考えて、発言し行動することから、地域医療は立ち直る。それは民主主義でないか。
地域医療の再生の過程は民主主義に繋がるものであり、民主主義の再生につながるもの。
しっかりした情報提供と住民間(患者)の議論があれば、人々は節度ある行動を始める可能性あり。それは地域民主主義の再生につながるもの。
以上、1日目。伊関氏は成る程、自治体病院の現状とあり方について前線で研究しているだけに、豊富なデーターと事例を基にしたその内容は深い。