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釜山お墓参りをパクったブロガーに画像一覧をいたずらされ見られない記事がありますが発見次第修正していますのであしからず。

「1日1万歩」は根拠なし!そのウォーキング間違っています〈本当に健康にいい歩き方〉

2020年01月27日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(1/26(日) 12:33 婦人公論.jp)


東京都健康長寿医療センター研究所
運動科学研究室長青柳幸利





ウォーキング習慣で健康&長寿効果が期待できます。しかし、やり方によっては調子を悪くすることも。生涯を通した健康づくりの研究を行う東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利(柳は正しくは異体字)さんとともに、ウォーキングの間違った常識を見直します。

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◆「1日1万歩」「毎朝の散歩」では、効果ナシ!?

いつでも誰でも気軽に始められるウォーキング。わざわざトレーニングウェアに着替えなくても、買い物の行き帰りや仕事の合間などにできるとあって、生活の一部になっている人もいることでしょう。

そもそも、私たちは何のためにウォーキングをするのでしょうか?「健康の維持や増進のため」という人が多いのではないかと思います。何もしなければ右肩下がりになっていく体力を維持するのも目的の一つでしょう。

しかし、あなたが健康にいいと信じて続けているウォーキングが、かえって健康を害することもあるかもしれないのです。

私は長年、生涯を通した健康づくりの研究に携わっています。その結果、誤った認識のままウォーキングを行っていると、かえって不健康になってしまう場合もあるとわかってきました。

まずは多くの人がいいと思いこんでいる常識を見直していきましょう。

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こんなウォーキングしてませんか?

□ 朝起きてすぐのウォーキングが習慣です

□ 家事や仕事でたくさん歩いています!

□ 毎日、犬の散歩をしているから大丈夫

□ マラソン大会にも出場、体力には自信あり

□ 歩数計を長年愛用し、毎日1万歩を達成!

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これらはどれも間違いです。それはなぜ? 解説は次ページ!
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◆間違い〈1〉
×「朝起きてすぐのウォーキングが習慣です」

◆1日で最も体温の高い「夕方」がおすすめ!

人間の体温は1日のなかで変動しています。健康な人の場合、朝の体温は低め。それが日中に上昇し、午後4~6時にピークを迎え、就寝に向けて低下していきます。加齢により体温の高低差が小さくなると、不眠や不健康な状態を招く原因に。

体温が最も低い朝よりも夕方にウォーキングをして、血流をよくすると体温が上がり、眠りにつきやすくなります。不眠症の改善や、睡眠中の成長ホルモンの分泌が活発になるといった効果も期待できるのです

◆間違い〈2〉
×「家事や仕事でたくさん歩いています!」

◆運動の「強さ」も大切な要素

調査中にお会いした、老舗旅館の代の女将さん。朝5時から夜9時まで部屋の掃除、配膳、接客などで館内を歩き回る生活を長年送っていましたが、骨粗鬆症になってしまいました。原因の一つは、着物によるすり足のため、運動の「強さ」を欠いていたこと。また、1日の大半を屋内で過ごし、紫外線を浴びることが少なかったのも一因です。

ただ日常的に歩くだけではなく、一定以上の「運動強度」と、適度に太陽を浴びることが、健康には欠かせないのです。

◆間違い〈3〉
×「毎日、犬の散歩をしているから大丈夫」

◆愛犬のペースで歩くと、疲れも倍増

犬の散歩は日課にしやすく、楽しみにしている人も多いでしょう。ところが、犬のペースで歩くのはNG。元気な犬に引っ張られて早足で歩くこともあれば、老犬のペースに合わせて頻繁に立ち止まることもあります。

ウォーキングは自分に適切なペースで歩くことが大切。異なるペースで歩くと、疲労につながります。また、「散歩の時に歩いているから大丈夫」という慢心から、それ以外は家でゴロゴロ......なんてことにも。それでは本末転倒です。

◆間違い〈4〉
×「マラソン大会にも出場、体力には自信あり」

◆実は貧血に悩むトップランナーは多い

ウォーキングで運動の楽しさに目覚め、今ではマラソンランナー、という人もいるようです。でも、何事もやりすぎはよくありません。ランニングのような有酸素運動をすると血中のヘモグロビン数が増え、「酸素運搬能力」が高まる点は健康に◎。

一方で、力強い着地を繰り返すことにより、足裏の血管内を通るヘモグロビンを踏み潰してしまい、貧血になる可能性も。むしろ、適度な強度のウォーキングを続けるほうが、健康長寿にはプラスとなるでしょう。

◆間違い〈4〉
×「歩数計を長年愛用し、毎日1万歩を達成!」

◆歩数へのこだわりは捨てるべし

よく「1日1万歩歩きましょう」と聞きますが、その数字の根拠は何でしょうか?確かに歩数は運動をするうえでの一つの目安。ですが、歩数だけを見て一喜一憂することに意味はありません。「1万歩以上歩いているから健康だ」という認識も誤りです。

次回は、私が日頃から指導しているウォーキングの方法をご紹介します。それは、15年以上にわたる調査から導き出されたメソッドで、実際に多くの人の健康状態を改善できています。正しいやり方を、あなたもぜひ試してみてください。

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高血圧から起きる心臓の拡張不全! 冬場は高リスク、1日6グラム未満の減塩を

2020年01月23日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(1/22(水) 16:56 夕刊フジ)


東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長



 【怖~い「塩分過多」対策】

 塩分をとり過ぎると血圧変動で認知機能の低下につながる。アルツハイマー病との関連を示す論文も、昨年10月、英国の学術雑誌で公開された。塩分過多が高血圧につながることは周知のことだが、心臓、腎臓、胃にも悪影響を及ぼす。そこで、塩分過多による病気と対策について5回にわたり、専門医に話を聞く。

 塩分をとり過ぎると、血中のナトリウム濃度を一定に戻すために血液量が増え、心臓や血管に負荷をかけることで血圧は上がる。それが繰り返されると、診察室で140/90mmHg以上の高血圧と診断されることに。放置すれば心不全の引き金にもなる。

 「高血圧では心臓の左心室が肥大して、『HFpEF(ヘフペフ/拡張不全)』を起こしやすくなります。左心室の収縮は良好なのに心臓から出る血流が悪くなり、心不全のような状態になるのです」

 こう指摘するのは、
東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長。循環器内科で数多くの高血圧患者や心臓病患者などを診ている。

 心臓は、上が心房、下が心室の左右計4つの部屋に分かれている。健康な心臓は収縮することで、心臓の左上の左心房から左下の左心室に血液が送られ、さらに左心室から大動脈へ送り出されて全身へと血液が運ばれる。

 ところが、高血圧で左心室が肥大して「ヘフペフ」になっていると、心臓が膨らんだときに血液を上手くためることができない。心臓が収縮したときに左心室から送り出す血液量も減る。

 つまり、心臓の収縮・拡張の動きは良好でも、心臓が送り出す血液量が減って心不全のような状態になるのだ。

 「ヘフペフは高齢者に多く、急性心不全を起こしやすく命に関わります。肺炎を起こしたときや、寒暖差などで血圧が乱高下したときに発症しやすいので注意が必要です」

 一方、左心室肥大の不整脈で、「心室細動」を起こすとやはり命に関わるという。心室細動は、心室がプルプルと震えたようになって血液を送り出せなくなり、自動体外式除細動器(AED)などで心臓の動きを元に戻さないと生死を分けることになる。

 さらに、もうひとつ。心臓の上の心房の動きが悪くなる「心房細動」では、心房内で停滞した血液に血栓が生じやすく、それが、脳の血管へと流れ着いて詰まる「心原性脳塞栓症」へとつながる。

 「塩分過多による高血圧は、いろいろな心臓病につながります。すでに高血圧の人は、減塩などの食生活の見直しと、適切な薬の服用で血圧コントロールを心掛けることが大切です」

 2019年改訂の高血圧治療ガイドラインでは、心房細動などの予防のため、治療目標値が130/80以下と以前より厳格になった。

 「冬場は血圧変動が大きいので突然死のリスクも高まります。1日6グラム未満の減塩を実践しましょう」と原田医師は警鐘を鳴らす。(安達純子)

                   ◇

 ■塩分過多の高血圧が引き金で起きる心臓病

 □HFpEF(ヘフペフ/拡張不全)…大動脈へ全身の血液を送り出す左心室の動きは正常なのに、血液をうまく送り出せない状態になる。急性心不全を起こしやすい

 □不整脈…心臓の拍動が乱れ、命に関わる心室頻拍(ひんぱく)や心房細動を起こしやすい

 □心房細動…心臓で生じた血栓が脳の血管を詰まらせる「心原性脳塞栓症」を起こしやすい。冬場の発症リスクが高いのでご用心
 

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1日10分の筋トレ&スロージョギングで細胞の炎症を予防 70代まで働く健康術

2020年01月18日 | 東京都健康長寿医療センター DR

東京都健康長寿医療センター
整形外科の宮崎剛部長




【今から始めよう!70代まで働く健康術】

 適度な運動が、骨組織での炎症を抑えて、骨を強化する仕組みを前回紹介した。それに関わるCas(キャス)という細胞内のタンパク質が、適度な運動の刺激で細胞の核に入ることで、炎症に関わるタンパク質を封じ込める。この働きを生かすために必要な運動量は、1日たったの10分でいいのだ。

 「シャーレの中の培養細胞レベルでの研究ですが、10分間の刺激でCasの働きは24時間継続しました。たった10分でも細胞に運動刺激があれば、炎症予防に役立つのです」
 こう話すのは東京都健康長寿医療センター整形外科の宮崎剛部長。

今回の研究を手掛ける一方、変形性膝関節症など数多くの患者も診ている。

 運動習慣が大切なことは、生活習慣病などと診断された人は主治医などから耳にタコができるほどいわれているだろう。「自宅まで一駅前から歩いている」「階段を使うようにしている」という人から、「週に2~3回、ジムに通っている」「草野球をしている」など、ハードなトレーニングをしている人までさまざまだ。では、「たった10分」の運動では何をすれば効果的なのか。

 「患者さんにお勧めしているのは、大腿四頭筋の筋力トレーニング(別項参照)です。まずは無理のない範囲で太ももを鍛えれば、変形性膝関節症の痛みの軽減につながります。一般の方にもお勧めです」

 片方の脚を上げて太ももに力を入れるだけの筋トレは、一見簡単そうだが、慣れていない人が行うと太ももが痛くなる。「太腿が筋肉痛になるほど行うのがコツ」という。単に脚を上げればいいのではなく、しっかり鍛えることを意識するのが大切だ。

 「大腿四頭筋の筋力トレーニングを難なく行える方は、その後にスクワットも加えましょう」

 宮崎部長らの行った研究では、培養している骨細胞に培養液の規則正しい流れで負荷をかけた結果、10分間でもCasは核内に入って24時間その働きを継続した。それを筋トレだけで再現できる。歩く習慣を持っていない人や、膝痛を抱える人でも取り組みやすい。

 「個人的な意見ですが、リズミカルな動きを加えると、より炎症を抑えるために役立つのではないかと考えています。筋トレで膝などを守りつつ、速歩も行う。段階を踏んで、1日10分間のスロージョギングまでできるようになればベストです」

 いきなりスロージョギングに挑戦すると故障につながるため、下肢の筋トレ、速歩、スロージョギングと、段階を踏んで1日10分間の細胞刺激運動をレベルアップさせていこう。全身の細胞の炎症抑制にも寄与する可能性がある。

 「いくつになっても、運動は遅すぎるということはありません。諦めずに取り組んでいただければと思います」と宮崎部長はアドバイスする。(安達純子)

 ■大腿四頭筋の筋力トレーニング

 〔1〕 椅子に座って右脚を床に平行になるように上げる

 〔2〕 右足首を垂直に立て、太ももに力を入れて10または20数える

 〔3〕 数え終わったら脚を下ろす

 〔4〕 左脚も同様に行う

 〔5〕 〔1〕~〔4〕を1日5~6セット行う。デスクワークの椅子でもOK。セット数をなるべく多くするように継続トレーニングを

 〔6〕 この筋トレが楽だと思う人は、スクワットも加えるとよい


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脳の栄養分、カマンベールチーズで増加 認識機能改善や認知症予防に期待

2019年11月07日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(11/7(木) 15:32 オーヴォ)

東京都健康長寿医療センター研究所
金憲経(キム・ホンギョン)研究部長




脳の栄養分、カマンベールチーズで増加 認識機能改善や認知症予防に期待



ワインやビールに良く合うカマンベールチーズには、「脳の栄養分」とも呼ばれる血液中のタンパク質「BDNF」を増やす効果があり、認知機能の低下抑制や認知症の予防に役立つかもしれない-。そんな研究結果を桜美林大、東京都健康長寿医療センターと明治の共同研究グループが6日、発表した。人生100年時代。おいしく飲み食いして健康に長生きできる秘訣(ひけつ)の一つにつながるか、期待される。

 カマンベールチーズは表面に吹き付けた白カビの働きで熟成が進み、柔らかい歯ごたえとマッシュルームのような独特の風味が特徴。原産であるフランス北部の村の名前から付けられた。カマンベールチーズを食べることで、認知症の50~60%を占めるアルツハイマー病の原因タンパク質「アミロイドβ(ベータ)」が減ったり、脳の記憶を司る海馬に多く存在し神経細胞の成長や再生を促進させるBDNFが増えたりすることは、これまでにも報告されている。しかし、これらは動物実験などの基礎的研究だった。今回、研究グループは、ヒトを対象にした初の試験でBDNF増加を確認した。

 研究グループの東京都健康長寿医療センター研究所の金憲経研究部長によると、試験は東京都内在住で「軽度認知障害」と判断された70歳以上の女性71人を対象に実施した。71人を無作為に2グループに分け、1グループには市販のカマンベールチーズを、もう1グループにはスーパーなどで良く見かける市販のプロセスチーズを、それぞれ1日2ピース(33.4グラム)、3カ月間食べ続けてもらい、血液中のBDNF濃度を測定。その後、3カ月休み、今度は食べるチーズを入れ替えて再び3カ月食べてもらい、BDNF濃度を測った。するとカマンベールチーズを食べた場合はBDNFが6.18%上昇する一方、プロセスチーズを食べた場合は2.66%減った。金部長は「両者で本当に差が出るのか、試験前は半信半疑だった」と明かすが、今回の結果で「認知機能低下抑制、ひいては認知症予防の可能性が強く示唆された」と説明した。

 試験に使ったカマンベールチーズとプロセスチーズは、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物の量はほぼ同じだった。しかし、カマンベールチーズは白カビによって発酵する過程で、アミロイドβを除去する免疫細胞の働きを促すオレアミド(オレイン酸アミド)やデヒドロエルゴステロールという物質がつくられる。特にカマンベールチーズに含まれるオレアミドは、プロセスチーズの10倍以上だったといい、研究グループは「試験結果の裏付けになると考えられる」としている。

 ただ今回の研究で認知機能そのものは、MMSEという検査をしても、カマンベールチーズを食べた場合とプロセスチーズを食べた場合で差が認められなかった。これについて研究グループの桜美林大老年学総合研究所の鈴木隆雄所長は「血液中のBDNFは比較的早い反応として表れるが、認知機能は複雑なメカニズムの中で上がり下がりする。BDNFが上がったからといって認知機能がすぐ上るとは考えていない。タイムラグがあるのではないか」とした上で「より長期の試験で認知機能改善も確認できるか検証したい」と述べた。

 研究発表に続くトークイベントでは、認知症予防策として運動の重要さも指摘され、金部長は1日20分程度のウオーキングなどの有酸素運動を勧めた。「歩行速度が遅くならないようにすることが大事。歩幅を10センチ、握り拳一つ分広げて」と歩き方を実演した。また、管理栄養士でもある介護予防運動指導員の佐々木夏子氏は「バランスのいい食事や神経保護作用のある食事を勧めている。チーズはタンパク質も豊富で、運動後に手軽に食べられる」と推奨。料理研究家の小野孝予氏は「チーズを日々の食事に取り入れている人が増えているように思う」とした上で、ナトリウム排出作用や抗酸化作用に注目した「ドライフルーツ&ハニーナッツのカマンベールチーズ~ローズマリー風味」などを披露した。鈴木氏は「中年の時期からいい生活習慣を取り入れ、健康で自立した高齢期を過ごしてほしい」と締めくくった。

【認知症】メモ
 厚生労働省の高齢社会白書によると、2012年の認知症高齢患者は462万人で、65歳以上の7人に1人に当たる。25年には患者は約700万人、5人に1人に達すると推計されている。鈴木所長は「認知症のうち日本で最も多いアルツハイマー病の原因となるアミロイドβは、中年以上の多くで脳内にたまり始めている。認知症予備軍である軽度認知障害は約400万人おり、約半数は5年以内にアルツハイマー病に移行するが、正常な認知機能に回復する人もいる」として、軽度認知障害の段階から予防策を取ることが重要と指摘している。

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健康で若々しくいたいなら「貯金」より「貯筋」! 食欲の秋に最適の「脂肪を燃やし続ける」運動法

2019年10月23日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(10/22(火) 23:00 LIMO)





人生100年時代、年金だけでは老後が不安……という声も聞こえてきます。しかし、老後に備えた「貯金」ももちろん大事ですが、さらに大事なのは「貯筋」だ、と言うのは、5万部を突破した『世界一効率がいい 最高の運動』著者であり、医師・科学者でもある川田浩志さんです。

健康で長生きするカギは“筋肉”にあるという川田さんが勧める、もっとも効率のいい最新トレーニングとは? 
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健康寿命を伸ばすカギは「大きな筋肉」が握っている

「ゆっくり歩く人ほど死亡リスクが高い」という言葉を聞いたことがありますか? 

暴論のように聞こえるかもしれませんが、実はこれには医学的なデータの裏付けが存在します。東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)が2014年、65歳以上の男女1800人を対象に行った調査でも同様の結果が得られています。たとえば、高齢者の歩く速度から、その高齢者があと何年生きられるか、ある程度予測することさえできるのです。

100年人生を思う存分謳歌したいなら、健康寿命をいかに伸ばせるかがカギといえます。そして、その健康に直結するのが“筋肉”なのです。

筋肉について、少しお話ししましょう。

人の筋肉は大きく分けて「速筋(そっきん)」と「遅筋(ちきん)」の2種類があります。それぞれ、その色の特徴から「白筋」と「赤筋」とも呼ばれます。

「敏捷性」や「機敏さ」は、いわゆる「速筋(そっきん)」と呼ばれる、瞬発的な力を発揮する筋肉の量が決め手となります。つまり、「速筋の衰え」は、「体の老化」のひとつの目安になるわけです。

持続力に大きく影響する遅筋は、ウォーキングやハイキングなどの運動習慣で比較的、鍛えやすく衰えにくい筋肉です。それに比べて、速筋は意識して鍛えていないと、年齢とともにどんどん落ちていきます。

特に落ちやすいのが大腿四頭筋と腹筋の「大きな筋肉」です。太ももにしてもお腹にしても、体の支えとなる部分ですから、こうした部位の筋肉が落ちてくると自然と動作が緩慢(かんまん)になっていく……これが典型的な「老化現象」といえます。

これが「貯金」よりも「貯筋」という所以です。

いくら老後用の貯金を貯めても、まず健康でなければ人生の楽しみは半減してしまうでしょう。また、長生きしたとしても病気を患ったままであれば、医療費もかさんでしまいます。病気はいちばんの「金食い虫」なのです。

【続  き】

コメント (1)

脳機能の衰えを表す「傾眠」 老親の医療を見直す節目にも

2019年10月20日 | 東京都健康長寿医療センター DR

 
(10/20(日) 7:00 マネーポストWEB)


東京都健康長寿医療センター

総合内科部長の岩切理歌さん



ぼんやりウトウトしていて睡眠に陥りやすい状態のことを「傾眠」という。声をかけるなど軽い刺激で目を覚ます程度の状態で、高齢者にはよく見られるが、“昏迷”“昏睡”と続く意識障害の第1段階でもあるという。

その傾眠の裏に病気が疑われる場合は速やかに受診すべきだが、高齢者は病気の症状が出にくいこともある。

家族にもわかりやすい受診タイミングは“食事が摂れない”“血圧・脈拍・呼吸数”が目安になるという。
東京都健康長寿医療センター総合内科部長の岩切理歌さんが話す。

「高齢者は、若い人に比べても個人差がとても大きいのです。後期高齢者の75才と95才では、年齢差は元より、今は独居の人も多いため生活環境もバラエティーに富んでいます。80代を超えるとさまざまな機能低下が顕著になり始め、認知症は目に見えて増えます。当院の調査では90代の約9割はなんらかの認知機能が低下し、活動や食事にもムラが出てきます。しかも機能低下の度合いは人それぞれ。傾眠傾向の出方もまちまちです。

 したがって受診のタイミングも“こんな症状が出たら”“一般的な平均値を超えたら”といったことを目安にしない方がいい。それよりも本人の“平常値”との比較が重要です。平常時に血圧、脈拍数、呼吸数、体温などを測って記録しておき、傾眠など気になることがあった時に測定して大きな変化があれば、体内で何かが起こっている可能性もあるので受診しましょう。また自力で水分、栄養が摂れないのは高齢者にとって命取り。3食中2食続けて食べられなければ、受診を考えましょう」(岩切さん・以下同)

ではウトウトしている老親にはどう対処すればよいのだろう。

「基本的には、“夜はしっかり眠り、昼間は覚醒している”というサイクルをできるだけ維持した方がよいので、やさしく声をかけたり、散歩などに誘って体を動かすよう促したりするのがよいと思います」

 ただこれが“正しい”ということではないと、岩切さんはきっぱりと言う。


「病気が疑われる場合は速やかに受診すべきですが、傾眠自体は年を重ねればごく自然なことともいえます。たとえば認知症が進んで、日中はほとんど傾眠状態でも介助すれば食べられて、コミュニケーションは取りにくいけれど、安定して健康状態を長く維持している人もいます。これもその人なりの生き方。ひとつの老いの形なのです」
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 若い世代にとっては、不調や病気があれば一刻も早く治療をして元の状態に戻すための医療だが、高齢者にその見方は必ずしも当てはまらないという。
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「でも傾眠は悪いことばかりでもないと私は思います。いろいろなことができなくなる老いを、ハッキリした頭で自覚するのもまたつらいもの。それを和らげるようにウトウトしている時、本人は穏やかで安らかかもしれません。そんな面も含めて、ご家族は慌てず騒がず見守っていただきたいです」
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傾眠は節目。医療関係者と家族で手を携えて

「生命維持に重要な脳の機能がちょっとしたことで落ちてしまう。傾眠傾向になってきたということは、難しい段階に入ってきた、ひとつの節目と考えた方がいいかもしれません」
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 どんな人も少しずつ体の機能が衰え、必ず最期を迎える。70代、80代でも元気で活動的な人が多い今、つい忘れがちだが、自分の親が、ゴールまでの道のりのどのあたりにいるのかを、意識し始めた方がいいと、岩切さんは言う。
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「これから、いろいろなことが起こってくると思います。たとえば、口から食べられなくなった時に点滴や胃ろうをするか。延命治療はどうするか、最期をどこで迎えるか。どの段階でどれだけお金がかかるのかも、そろそろ考えておく段階といえます。
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 もちろんご本人と少しずつ話し、意向を聞いておくことも大切ですが、事前に考えておいても直面した時に迷うことも多いのです。そんな時、いろいろな人の意見を聞けた方がいいですね」
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 そのために、ケアマネジャーやかかりつけ医、訪問医や訪問看護師など、身近な専門家、親の生き方をよく知り、よい意見を寄せてくれる人との関係をつくっておくことが大事だという。
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「最後の段階になると、医療や介護のたくさんの専門分野の人がかかわります。そこで“要求”ばかりするのではなく、足並みをそろえて仲よく。なんでも相談できる間柄になっておきましょう。家族がいい状態でいることが、ご本人のいちばんの幸せです」(同)
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※女性セブン2019年10月24日号
 

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トイレと浴室 病気・事故リスクを減らすリフォーム術とは

2019年10月16日 | 東京都健康長寿医療センター DR
 
(10/16(水) 7:00 NEWS ポストセブン)




定年後、自宅で過ごす時間はより増えていくが、住環境によって病気や事故のリスクが高まることはあまり知られていない。特に気をつけたいのが、トイレや浴室だ。
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【×=内鍵のついたトイレ 〇=「呼び出しブザー」で緊急対策】
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 例えば、排便時にいきむことで血圧が変動し、胸痛や吐き気などの異変が生じるケースがある。その際に、トイレの内鍵をかけていたことで家族がドアを開けられず、対応が遅れることもある。介護アドバイザーの横井孝治氏が言う。
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「緊急事態に備え、要介護者がいる家庭では、『鍵をかけない』というルールを決めることが多い。ただ、鍵をかけないのは心理的に抵抗がある方もいます。そうした場合は、外側からも開錠できるタイプに替えておくといい。緊急時には、マイナスドライバーやコインで鍵を開けられます」
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 トイレ内で急病の兆しがあったら、いち早く家族に知らせることも大切だ。
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「手が届く範囲に、大きな音が鳴る『呼び出しブザー』を置いておくべきです。3000円程度から購入できます。また、トイレや浴槽では暖房をつけていないため、リビングとの温度差で血圧が変動して『ヒートショック』を起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを招きます。その対策のためにも、お風呂場にもブザーを設置したほうがよい」(横井氏)
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東京都健康長寿医療センター研究所の推計によれば、入浴中のヒートショック関連の急死者は年間約1万7000人だった(2011年)。
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 トイレや脱衣所に暖房を設置するのがベストだが、「1000円以内で手に入る『隙間風防止テープ』をドア、窓の隙間に貼るのも効果的」(環境衛生コンサルタントの松本忠男氏)という。
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【×=和式トイレを使い続ける 〇=「簡易様式便座」で転倒防止】
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 また、和式トイレには「転倒リスク」が付きまとう。
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「膝を直角より深く曲げる体勢を取るのは体に負担がかかり、後ろ方向に転んで骨折したり、頭を打ち付けてしまう可能性もある。かぶせるだけで洋式便座にできる『簡易洋式便座』を取り付けましょう。3000~5000円程度で手に入り、段差のないトイレでも使用できるタイプもあります」(横井氏)

 洋式トイレへのリフォームを検討する手もある。
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「要支援1以上であれば、最大で20万円の工事まで自己負担は1割で済みます。20万円以上を超えた分の費用は自己負担となりますが、検討に値する」(横井氏)
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【×=浴槽が滑りやすい 〇=底に「滑り止めマット」を】
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 転倒リスクが最も高い場所は浴室だ。床で滑ったり、風呂の縁をまたぐときにバランスを崩す事故は後を絶たないという。
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「特に浴槽の縁が高い場合は要注意です。浴槽に出入りする際に、膝を高く曲げてまたぐことになる。浴槽内や浴室の床で滑るリスクが高まります。
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 浴槽の底や手すり、床に『滑り止めマット』を敷くだけでも、転倒のリスクは大きく軽減できます。それでも心配な方は、浴槽の縁に介護用の手すりを取り付けてもよいでしょう。ただし、吸盤タイプの簡易式手すりに全体重を預けるのは危険です。手すりを検討するなら、専門業者にワンポイントでリフォームの相談をしたほうがよいでしょう」(横井氏)
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※週刊ポスト2019年10月18・25日号

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訪問看護師支援の人材育成や認知症対応力を評価 - 東京都健康長寿医療センター業務実績評価書

2019年08月31日 | 東京都健康長寿医療センター DR
 
(8/30(金) 16:15 医療介護CBニュース)




今後も、地域の医療・介護を支える人材や次代の高齢者医療・研究を担う人材の育成に取り組んでほしい―。東京都が公表した地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの2018年度の業務実績評価書では、「高齢者の地域での生活を支える研究」や「地域連携」など20項目について、評価を行ったり、業務改善を促したりしている。【新井哉】

 評価書では、高齢者の医療と介護を支える専門人材の育成について、地域の訪問看護師への支援を通じて専門人材の育成に取り組んだことや、研究生や学生の受け入れなどを行い、今後の高齢者医療・研究を担う人材の育成に貢献したことを取り上げ、引き続き人材育成に取り組むよう求めた。

 項目別の評価も掲載している。「地域連携」は、評定S(計画を大幅に上回って実施)、同A(計画を上回って実施)に次ぐ位置付けの同B(計画を概ね順調に実施)だった。

 「地域連携」の項目の評定欄には、入院初期からの介入や看護師、MSW(医療ソーシャルワーカー)らによる多職種カンファレンスなど、早期退院に向けた取り組みを実施したことや、地域の医療機関や訪問看護師との連携を強化し、退院後も継続して質の高い医療、介護を受けられる環境の整備に努めたことを記載。「今後も、紹介率の向上など、更なる地域連携の強化に向けて取り組んでほしい」とした。

 評定Aだった「認知症医療」については、精神科・緩和ケア病棟を除く全病棟において、認知症評価シートを原則全入院患者に施行するなど、認知症の早期ケアに努めたことを評価欄で取り上げ、「高度な技術を活用して早期診断の推進及び診断精度の向上を図るとともに、地域の人材育成や地域連携の推進に努め、地域における認知症対応力の向上に貢献していることは高く評価できる」とした。

 地方独立行政法人の業務実績評価は知事が行うもので、評価の実施に当たっては、東京都地方独立行政法人評価委員会の意見を聴くこととなっている。

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糖尿病で注意すべき尿トラブル“3つの症状” 「過活動膀胱・神経因性膀胱・腹圧性尿失禁」

2019年06月30日 | 東京都健康長寿医療センター DR

6/29(土) 16:56 夕刊フジ


東京都健康長寿医療センターの荒木厚副院長



 【コワイ病気が潜む「頻尿」の正しい対処法】

 1日8回以上もトイレに行く頻尿の原因はさまざまだが、糖尿病の人は尿トラブルを抱えやすいという話をご存じだろうか。

 糖尿病で高血糖状態が続くと、尿で糖を排出するために尿量が増え、同時に喉も乾くと一般的にはいわれる。高血糖を薄めるべく尿量が増えて脱水になるため水分を欲し、たくさんの水分を飲むことで尿量が増えてトイレが近くなる。このような自覚症状を指摘する話は多いが、実際に多くの糖尿病の人を悩ます尿トラブルは異なる。

 「糖尿病と診断された人は、多くの場合、高血糖の多飲多尿の症状は出ません。むしろ、(1)過活動膀胱(ぼうこう)(2)自律神経障害による神経因性膀胱(3)腹圧性尿失禁による尿トラブルを抱えやすいといえます」

 こう指摘するのは、東京都健康長寿医療センターの荒木厚副院長。長年、数多くの糖尿病診療・研究を行い、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017年」の作成にも携わっている。

 順を追って見ていこう。

 (1)過活動膀胱は、膀胱の動きが異常になって「我慢できない尿意」(尿意切迫感)を伴う頻尿が特徴。糖尿病の人は、理由はよくわからないが過活動膀胱を起こしやすい。

 (2)神経因性膀胱は、高血糖の持続による糖尿病の合併症のため、膀胱を支配する自律神経が障害され、尿を十分に出しきれなくなり、排尿後も膀胱に尿が残る状態(残尿)が生じる。さらに進行すると尿が出なくなり、膀胱に1リットルもの大量の尿がたまり、尿閉となることもある。

 (3)腹圧性尿失禁は、くしゃみなど腹圧が高くなったときに尿漏れしてしまう。お腹に脂肪が溜まった人や、骨盤底筋という筋肉が緩んでいる女性にも起こりやすい。糖尿病で肥満の人は、腹圧性尿失禁に悩まされやすいのだ。

 (1)~(3)のいずれも糖尿病の人を悩ますが、特に(2)には注意が必要だ。

 「神経因性膀胱は、残尿によって膀胱炎も起こしやすくなります。膀胱炎が悪化すると、菌が腎臓の尿の出口の腎盂(じんう)にも炎症が及び、腎盂腎炎になって高熱をきたし、抗生物質で治療しないと致命的となる場合もあります。腎盂腎炎を繰り返すと腎機能が低下し、結果として腎不全につながることがあるのです」

 糖尿病の合併症のひとつ「糖尿病腎症」は、高血糖状態が続くことで腎臓のろ過装置ともいうべき糸球体が壊れ、腎機能が低下して腎不全に結びつく。一方、神経因性膀胱に伴う膀胱炎で、腎盂腎炎を繰り返すことでも腎機能は低下してしまう。高血糖状態が続くと免疫力も低下しやすく、膀胱炎などの感染症のリスクは高まる。それを避けるには、日頃からの血糖値管理と尿トラブルがあるときには、早めに主治医に相談しよう。

 「健診で高血糖が指摘されたときには、きちんと検査と診断、適切な治療を受けることが大切。糖尿病治療薬によっては、副作用で頻尿の症状が出ることもあります。主治医とよく相談して対策を立ててください」

 糖尿病の喉の渇きと頻尿は、時には重篤な事態の前触れとなることもあるから、甘く見てはいけない。それは、次回紹介する。(安達純子)

 ■糖尿病で起こりやすい尿トラブルのポイント

 過活動膀胱による我慢できないほどの尿意切迫感を伴う頻尿。高血糖での自律神経障害による神経因性膀胱で、尿が出し切れずに頻尿や尿漏れなどにつながる。肥満でお腹に脂肪がついていると、くしゃみやしゃがんだときなどに腹圧によって腹圧性尿失禁も起こりやすい。

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「ワイン飲みはボケない」という研究結果の気になる中身

2019年06月21日 | 東京都健康長寿医療センター DR
 
(6/21(金) 5:57 デイリー新潮)




一本のワインボトルの中には、全ての書物にある以上の哲学が存在している――とは、パスツールの名言だが、おまけにワインには認知症になりにくい効果もあるというのである。

 大阪大学大学院医学系研究科の樺山舞助教(地域看護学)らが、そんな“嬉しい”研究結果を明らかにしたのは6月6日のこと。
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 その樺山助教が言う。

「この研究は2010年から始まった『SONIC』(健康長寿研究)というプロジェクトの一環なのです。大阪大学と東京都健康長寿医療センター研究所との共同で行っているものですが、参加する研究者も医学だけでなく、看護学、歯学、心理学、社会学など幅広い分野にわたっている。具体的には、どんな生活をしていると健康で長生きするのか聞き取り調査を続け、集めたデータから、長寿につながる原因を解き明かそうというものです」

 対象者は、関東と関西に住む3千人以上のお年寄り。それを70歳、80歳、90歳に分けて、追跡調査してゆくというものだ。調べるのは、健康状態から、日常的な運動や趣味、食事など多岐にわたり、1回の聞き取りや検査に約3時間。それを3年ごとに追いかけるというから、いかに大がかりなものか分かるだろう。

 で、ワインである。

「調査の一つにお酒を飲んでいる人とそうでない人。また、お酒の種類でどのくらい認知機能に差が出るか調べてみたのです。調査は私と大学院の研究生で行いました。そのために東京へは20回以上通ったでしょうか」(同)

 認知機能を評価するのに「MoCA―J」という方法がある。記憶力や注意力、復唱力などを測るのだが、点数が高いほど認知機能が高い。樺山助教らは1217人を対象に調べたところ、ワインを飲まない人たちのグループが「23点」、飲むグループが「25点」という有意な差が出た。

「しかも、70代でも80代でも、飲まない人たちより認知機能が高かった。一方で、ビールや日本酒などワイン以外を飲む人たちは、飲まない人と差が出ませんでした」(同)

 それなら、明日からチューハイをやめてワインにしようというのは早とちり。

「ワインを嗜むお年寄りの層が、知識欲の旺盛な人たちや健康に気をつかうタイプである可能性もある。いずれにせよ、分析はこれからです」(同)

 もちろん、「飲み過ぎはだめ」としっかり釘を刺すこともお忘れではなかった。

「週刊新潮」2019年6月20日号 掲載
 

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老化防止と関係の深いビタミンC 不足すると無気力やうつ状態にこまめな摂取を 雇用延長時代を生きる健康術

2019年05月09日 | 東京都健康長寿医療センター DR
 
5/8(水) 16:56夕刊フジ

東京都健康長寿医療センター石神昭人DR



【雇用延長時代を生きる健康術】

 老化は誰にでも訪れるが、いくつになっても健康で働きたい。そのアシストに、ビタミンCが重要な役割を果たすことが近年、分かってきた。

「私たちの研究では、ビタミンCが不足したマウスは、ビタミンCが十分なマウスと比べて寿命が4分の1に短くなることを明らかにしました。健康的な寿命をまっとうするために、ビタミンCは欠かせません」

 こう話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム分子老化制御研究部長の石神昭人氏。2000年、老化指標といわれる酵素の「SMP30」がビタミンCの合成に関わることを発見するなど、長年、老化とビタミンCの研究を牽引している。

寿命が4分の1に縮んだマウスは、臓器全体が萎縮して老衰のような状態で息絶えた。しかも、普通に過ごしている状態でも脚を骨折するなど、骨ももろくなっていた。

 このマウスのビタミンCの1日摂取量を人間に換算すると、2・5ミリグラム。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」ではビタミンCの推定平均必要量は1日85ミリグラム(推奨量は100ミリグラム)なので、はるかに少ない。前回紹介したように、石神氏の研究では高齢で血中のビタミンC濃度が低いと、筋力や身体能力が低下していることも分かっている。

 「人間はビタミンCを体内で合成することができません。意識して食事でとらなければ、老化の促進はもとより病気につながります」

 ビタミンC不足の代表的な病気は「壊血病」。中世の大航海時代の船乗りたちが、偏った食事で口や鼻から出血などして死に至ったことで知られる。その後、風邪やがんなどの病気との関係も解明されてきた。ビタミンCには、体内で細胞や遺伝子を傷つける活性酸素を抑制する抗酸化作用が強いため、がんなどの病気予防としても注目を集めている。

 「ビタミンCは、腎臓の上に位置する副腎に最も多く存在し、ビタミンC不足になるとアドレナリンの合成ができなくなり、無気力やうつ状態を引き起こします。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんでは、血中ビタミンC濃度が低いと報告されています。私たちのマウスの研究では、ビタミンCが肺砲を修復する働きがあることが分かりました」

 石神氏が勧めるビタミンCの1日摂取量は1000ミリグラム。こまめにとるとよいそうだが、他のビタミン類はどうか。ビタミンAやビタミンB群など、不足すれば病気に関わるものは多い。

 「人間に必要なビタミンは13種類あり、体内で起こるさまざまな化学反応を助け、生命活動を維持するために不可欠です。体内でほとんど作れず、作れたとしてもごく微量ゆえ、意識してとることが重要です」

 老化と深い関係があるのは、ビタミンC以外にビタミンDやE。ビタミンDやEが不足すると、骨粗しょう症などを生じやすくなる。ビタミン摂取を意識して、病気や老化を退けよう。

 ■老化と関係の深いビタミン

 □ビタミンC…1日の必要所要量は成人男女とも100ミリグラム。多く含む食材は、イチゴ、ミカン、レモン、ブロッコリー、トマト、ピーマンなど

 □ビタミンD…1日の必要所要量は、成人男女とも5.5μg(マイクログラム)。多く含む食材は、しらすやイワシなどの魚類、しいたけやマイタケなどのキノコ類

 □ビタミンE…1日の必要所要量は成人男性6.5ミリグラム、成人女性は6ミリグラム。多く含む食材はアーモンド、カボチャ、ホウレンソウなど

 ※「日本人の食品摂取基準2015年版」から抜粋

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白血病、治癒すれば選手復帰も=移植要否など検査-患者団体「頑張れる姿を」

2019年02月13日 | 東京都健康長寿医療センター DR

時事通信 2/12(火) 20:58
 
東京都健康長寿医療センターの宮腰重三郎・血液内科部長



競泳の池江璃花子選手(18)が診断された白血病は、がん化した血液細胞が増殖する血液のがんで、さまざまな種類がある。

 抗がん剤による化学療法が中心だが、骨髄などの造血幹細胞移植が必要と判断される場合もある。白血病の生存率はかつては低かったが、近年は向上しており、専門家は「仮に移植が必要になっても、治癒すれば選手復帰は可能だ」と話す。

 厚生労働省の調査では、2016年に白血病と診断された患者は国内で約1万3700人。うち10代は約300人だった。

 大きな分類では、がん化した細胞の増殖が急速な「急性」と、ゆっくりの「慢性」がある。また、がん化した細胞のタイプから「骨髄性」と「リンパ性」に分けられる。まずは検査などでどの種類か確定させ、治療法を検討する。

  東京都健康長寿医療センターの宮腰重三郎・血液内科部長によると、例えば慢性骨髄性白血病などは、化学療法のみでの治癒が見込め、移植が必要ないケースが多い。

 移植が必要な場合でも選手として復帰できる可能性はあるが、治療による体力の低下は避けられず、移植後には肺障害など合併症の恐れもある。宮腰氏は「いかに体力を維持し、肺障害を少なくするかがポイントになる」と指摘する。

 慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」代表の田村英人さんは、「今は医療が発展した。ぜひ復帰して、白血病にかかっても頑張れるという姿を見せてほしい」とエールを送った。 

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冬に多いヒートショック 風呂やトイレ、温度差対策を

2019年01月23日 | 東京都健康長寿医療センター DR

 




底冷えする季節は、家の中の寒暖差が大きくなって血圧が乱高下し「ヒートショック」が起きやすくなる。入浴時の転倒や失神、脳梗塞などの原因になる。室内でも防寒対策を心がけて、事故を防ごう。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく変動し、体に負担がかかって体調不良に陥ることを指す。意識が低下するほか、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの原因にもなる。

症状が重いと死に至る危険もある。10月から4月は、狭心症や心筋梗塞などによる心停止の事故が増えるという報告もあり、背景としてヒートショックが考えられている。

多摩平の森の病院(東京都日野市)の高橋龍太郎院長は「冬場は特に、ヒートショックによる入浴関連の事故が急増する」と注意を促す。


東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)の2011年の調査によると、年間約1万7千人が入浴中の心肺停止で救急搬送されていた。月別に見ると、1月の件数は最も少ない8月の11倍に上った。

暖かい部屋で過ごした後、入浴しようと室温の低い脱衣場で服を脱ぐと、血管が収縮して血圧は上昇する。寒い浴室に入ったり、急に湯につかったりすると、刺激で血圧はさらに上昇する。

風呂でしばらく温かい湯につかるうちに、今度は血管が拡張し、血圧は急降下する。このとき意識を失って浴槽内で溺死することが、冬場の入浴時の事故の主な原因と考えられている。

ヒートショックが起こるのは入浴中に限らない。小田原循環器病院(神奈川県小田原市)の杉薫院長は「夜間寒いトイレに行くとき、朝新聞を取りに屋外に出るときなども血圧が変化しやすい」と話す。

発生リスクが高いのは血圧の調整機能が低下しがちな高齢者など、血圧が不安定な人。糖尿病や高脂血症など生活習慣病のある人も要注意だ。高橋院長は「ヒートショックは若く健康な人でも起こることがある。自分は大丈夫と過信せずに、生活環境の温度差を意識し、対策を取って」と助言する。

室温が下がりやすく注意が必要なのが、肌の露出が多くなる浴室やトイレなど。脱衣所の室温は小型の暖房器具などを使って18度以上にする。シャワーで熱めの湯を高い位置から浴槽に注ぐと、蒸気の働きで浴室内を20度前後に暖めることができるという。

湯温は41度以下に保つ。「42度と41度では、体にかかる負担がかなり異なる」(高橋院長)。温度調整ができない場合は、湯温計を使おう。

入浴方法にも気を配りたい。浴槽に入る前にかけ湯をして、湯に体を慣らす。湯につかる時間は1回10分以内に。浴槽では急に立ち上がらないようにして、立ちくらみを防ぐ。食後1時間以内や飲酒後の入浴は避ける。

一人暮らしの場合は、周りに人がいる公衆浴場や日帰り温泉を使う手もある。入浴後は湯冷めに注意。気温が下がり過ぎない日没前に入浴するのも有効だ。
杉院長は「寒い場所に移動するときは、スリッパや厚手の靴下をはくなど体を冷やさない工夫が大切。体表近くに太い血管が通る首筋は冷気の影響を受けやすい。屋外に出るときはマフラーを巻くなどの対策を取って」と話す。

日本気象協会(東京・豊島)と東京ガスが共同開発し、インターネットで公開している「ヒートショック予報」も参考になる。全国約1900地点の7日先までのヒートショックリスクを5段階で示している。リスクの高い日は脱衣所の室温や浴槽の湯温などに十分注意する。高齢の親など離れて暮らす家族にも電話などで一声かけると、事故防止につながる。

(ライター 荒川直樹)
[NIKKEIプラス1 2019年1月12日付]

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高齢で発症する「前立腺がん」増加中 「PSA検査」の活用を 健康寿命UP術

2019年01月21日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(夕刊フジ 1/21(月) 16:56)

高山 賢一研究員




【健康寿命UP術】

 超高齢化社会の到来で、加齢とともに発生しやすい前立腺がんの患者数が増えている。亡くなる人も右肩上がりだ。前立腺がんは、男性ホルモンの影響を受けて増殖するといわれるが、加齢に伴い男性ホルモンは低下するのが一般的。少なくなるはずの男性ホルモンに関わる前立腺がんが、なぜ高齢で発症しやすいのか。

 「高齢になると、体内で生じる活性酸素などによる酸化ストレスの影響で、細胞内の遺伝子変異が起こりやすいことが、ひとつの要因と考えられます。前立腺は生殖器であり、加齢で男性ホルモンが低下しても、その刺激を受け、前立腺がんが生じると思われます」

 こう説明するのは、東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チームの高山賢一研究員。前立腺がんのうち、悪性度が高いケースのメカニズムを解明し、新たな診断や治療法の開発の研究に力を注ぐ。

 悪性度の高い前立腺がんは、男性ホルモンの作用がより強化されているが、高山氏らの研究はその仕組みの一端を解き明かしつつある。遺伝子の変異で悪性度が高くなるがんが生じる。

 遺伝子は、細胞を作って維持するために欠かせない。持って生まれた遺伝子(=DNA)から情報の一部を転写したRNAによって、細胞や組織に必要なタンパク質が作られている。遺伝子情報は膨大なので、RNAが転写したときに不必要な情報は排除する。これをスプライシングと称する。

 「悪性度の高い前立腺がんでは、スプライシングが活性化されており、V7という男性ホルモン受容体など変異したタンパク質群が作られます。V7は男性ホルモンと結合しなくても活性化するため、悪性度の高いがんの増殖を後押しするのです」

 スプライシングの仕組みは複雑だが、がん細胞では起こりやすい現象だ。最初に酸化ストレスなどで遺伝子変異が起こって生じたがんは、ホルモンなどを利用して大きくなり、新しい血管を作って増殖を繰り返す。免疫を逃れる仕組みも備え、さらには投与された薬から逃れるため、別の増殖できるような仕組みまで生み出す。そのひとつと考えられるのが、スプライシングの活性化に伴うV7の誕生だ。

 「異常なスプライシングを標的にすることで、新しいがん治療の道は開けました。しかし、新薬が誕生するまで、治療困難な前立腺がんを封じ込めるには、早期発見・早期治療の心掛けが大切です」

 早期段階では、前立腺がんは自覚症状に乏しい。人間ドックなどのオプションの血液検査「PSA検査」がひとつの目安となる。

 「PSAは、前立腺肥大症でも値が高くなるため、必ずしも前立腺がんとは限りません。しかし、前立腺がんの疑いを知る上で、ぜひ活用していただきたいと思います」と高山氏は話す。

 転ばぬ先の杖として、検査を活用しよう。(安達純子)

 ■前立腺がんの検査  

 □PSA検査…前立腺やがん組織から放出される腫瘍マーカーを血液検査で計測する

 □直腸診…肛門から医師が指を挿入して前立腺の状態を直接確認する

 □画像診断…肛門から超音波を発するプローブを入れる経直腸エコーや、CT検査、MRI検査などが必要に応じて行われる

 □生検…前立腺がんの疑いが強い場合は、前立腺の組織の一部を細い針で採取し、顕微鏡による観察からがんの有無を調べる

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高齢者の閉じこもり防げ まず週1回外出で悪循環脱出

2018年12月28日 | 東京都健康長寿医療センター DR

NIKKEI STYLE 12/27(木) 10:12

介護事業所の職員に付き添われながら買い物を楽しむ古市さん(左)(山形県天童市



足腰の衰えなどが原因で外出せず、一日中家で過ごす「閉じこもり」の高齢者が増えている。放置すると寝たきりや要介護状態を招く恐れがある。閉じこもり気味の高齢者に外出を促すにはどうすればよいか。自治体の取り組みや専門家の話を基に対処法を探った。

11月下旬、山形県天童市のスーパー、おーばん久野本店に、通所介護事業所の車で送迎された70~90代の高齢者5人が集まった。「時間は1時間です。ゆっくり回ってください」。担当者から説明を受けた後、高齢者は買い物を楽しんだ。

天童市が10月から始めた「ショッピングリハビリ事業」だ。買い物をきっかけに外出を促す狙い。対象は介護保険で要支援とされた高齢者で、9つの介護事業所と4つの商業施設から協力を得た。利用者は週1回、自宅から商業施設に送迎してもらう。利用料は月1410円。15人が利用する。

古市信子さん(88)は必要な食料や好きな果物を買い込んだ。「送迎があるから楽。いい気分転換になる」と満足げだ。別の女性(88)は息子に説得されて9月に運転免許を返納したばかり。「車がないと買い物にも苦労するので、非常にありがたい」と話す。

もうすぐ冬本番。「雪で外出を控える高齢者は多い。体を動かす機会が減るので、店内を歩いて身体機能の維持をめざしたい」と市保険給付課の後藤栄さんは話す。支払いをすることで脳の刺激になり、店員らとの会話で孤独感も和らぐ。

閉じこもりとは何か。厚生労働省の「閉じこもり予防・支援マニュアル」分担研究班長の安村誠司・福島県立医科大教授は「週1回も外出しない状態のこと」と話す。行動範囲が家の中か庭に限られ、めったに家の外に出ない。生活機能や能力がどんどん低下し、やがて起きられなくなり寝たきりや要介護状態になる。

逆の見方をすれば、最低でも週1回外に連れ出せば、悪循環から逃れられるともいえる。東京都板橋区の認知症高齢者等外出支援サービス事業「ごいっしょサービス」も、そんな狙いがある。週に1回程度、認知症の高齢者宅にボランティアを派遣し、散歩の付き添いや話し相手になってもらう。高齢者の外出機会を増やし、家族の休息時間を確保するのが目的だ。

小山充明さん(56)は週1回、母親の幸子さん(91)のためにこのサービスを利用する。ふだん母親は自室で寝ていることが多いが、「利用を始めてから生活にメリハリがつくようになり、表情も明るくなった」と効果を認める。

安村教授によると、閉じこもりの要因は3つある。1つは骨折や膝痛、病気の後遺症などで身体機能が低下するといった身体的要因。もう1つが心理的要因。転倒に対する恐怖心や配偶者を亡くした喪失感などで、外出意欲をなくす。3つ目が社会・環境要因。近所付き合いがない、家の周りに坂が多いなど外出を消極的にさせる環境を指す。

気をつけたいのが、同居家族が高齢者の外出を禁じる行為だ。事故を心配し、子供や嫁が「危ないから外に出ないで」とつい言いがち。言われた高齢者は外出意欲を失う。親への気遣いが閉じこもりを誘発する皮肉な結果になりかねない。

離れて暮らす老親の閉じこもりを防ぐために、子供にできることは何か。安村さんは「週に1回電話して、外出の有無を尋ねるのがいい」と話す。こまめに親と話すようにして、近所への買い物やちょっとした散歩でもいいから、週1回は外出するよう促すことが大切だ。

■高まる死亡リスク 人との交流も重要

閉じこもりは死亡リスクを高める要因にもなる。東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)が7月に発表した調査によると、閉じこもっていない高齢者に比べ、閉じこもり傾向がある高齢者の方が死亡率が高いことがわかった。

調査は2008年から14年にかけ、埼玉県和光市の65歳以上の健康な高齢者(08年当時)1023人を追跡した。2~3日に1回しか外出しない「閉じこもり傾向」と週に1回も他人と話さない「社会的孤立」に分け、死亡率を比較。閉じこもり傾向にも孤立にも当たらない高齢者の死亡率は4.7%だったのに対し、両方該当する高齢者は12.8%と大きな開きがあった。

閉じこもり傾向は完全な閉じこもりの前段階といえる。調査を担当した桜井良太研究員は「外出しないよりはした方がいいが、外出先で他人とどうかかわるかも重要。できるだけ人と話をするなど、質の高い外出を心がけるべきだ」と指摘する。



[日本経済新聞夕刊2018年12月19日付]

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