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釜山お墓参りをパクったブロガーに画像一覧をいたずらされ見られない記事がありますが発見次第修正していますのであしからず。

「ラーメンライス」が歯周病の要因に? 主食の“重ね食べ”で発症が1.2倍

2022年09月26日 | 東京都健康長寿医療センター DR

9/26(月) 7:01FNNプライムオンライン

 

 

主食の“重ね食べ”という言葉をご存じだろうか?

 

“ラーメン”と“ごはん”、“うどん”と“おにぎり”といったように、炭水化物を主とするご飯、麺、パンなどを2品以上、同時に食べることをいう。この主食の重ね食べする人は、しない人と比べて歯周病を発症する人が1.2倍多いことが研究でわかった。

 

東京都健康長寿医療センター研究所が調査したもので、2017年に福岡県のバス会社に勤める男性バス運転手540人(平均年齢47.9歳)を対象に実施。

 

研究チームは「複数の主食を同時に食べること」を重ね食べと定義し、540人のうち、80人(全体の14.8%)が主食の重ね食べをしていた。そして、重ね食べするグループとしないグループの歯を比較したところ、歯周病とされる4mm以上の歯周ポケットを持つ歯の数が重ね食べするグループのほうが1.2倍多かったのだ。

 

また、重ね食べする人は、1日2回以上のブラッシングの頻度と歯間ブラシの使用頻度が、重ね食べしない人に比べて低いことがわかった。

 

主食の重ね食べと歯周病の関連は明らかとなっていなかった

「重ね食べが肥満になる」といったリスクは知られているようにも思うが、それだけではなく、歯周病にも関わっているようなのだ。では、なぜ重ね食べすると、歯周病になりやすいのか? 調査を行った東京都健康長寿医療センター研究所の岩崎正則研究副部長に詳しく話を聞いてみた。

 

 

――これまでにわかっている重ね食べのリスクにはどんなものがあった?

 

2015年大阪版健康・栄養調査の結果では主食の重ね食べの頻度が高いことと肥満の関連が報告されています。疾病のリスクについては分かりません。

 

なお、炭水化物は、主にエネルギー源として利用される大切な栄養素ですが、その多量摂取は肥満、糖尿病などのリスクとなること、また種々の炎症性疾患による死亡リスクが上昇することが示されています。

 

 

――ではなぜ今回、重ね食べの歯周病リスクを調査することにした?

 

野菜類やビタミン類に着目した栄養素・食事摂取状況と歯周病の関連はこれまでに研究されてきていますが、炭水化物を多量に摂ることとなる主食の重ね食べと歯周病の関連は明らかとなっていません。

 

私たちは一企業で行われる定期健康診断にあわせて歯科検診、食事調査、質問紙調査を実施する機会を得ました。そこで今回、男性労働者を対象に、主食の重ね食べの状況と歯周病の関連を明らかにすることを目的とする研究を実施しました。

 

 

――例えば、ラーメンをたくさん食べるよりも、ラーメンとごはんの重ね食べのほうがリスクは高いの?

 

研究の中で調べていないため、分かりません。

 

対策はセルフケア、プロフェッショナルケア、定期健診、禁煙

――重ね食べしていたグループが歯周病の割合が高かった理由は?

 

炭水化物に含まれる糖質は、その多量摂取が食後の高血糖状態を引き起こします。食後の高血糖状態が繰り返されると歯ぐきの炎症や歯を支える骨の吸収につながる物質が多く生産されます。そうしたことが関連していると考えられます。

 

 

――岩崎さんは、歯が多く残っている人ほど死亡リスクが低いという論文も過去に発表されている。具体的にどれくらい死亡リスクは低い?

 

ご自身の歯をきちんと維持されていた群は、歯が少なくなる群と比較して、死亡リスクが約半分でした。

 

 

――今後も重ね食べと歯周病についての研究はしていく?

 

具体的な計画はありませんが、今回対象となっている研究は現在のところ学会発表したレベルでしかなく批判的な吟味を受けていません。只今、論文化の作業中です。

 

 

――最後に歯周病にならないためのアドバイスをお願いしたい。

 

セルフケア(歯磨きなど)とプロフェッショナルケア(歯科医師・歯科衛生士によるケア)、禁煙などの生活習慣の改善、そして、かかりつけ歯科医を持ち定期検診を受けることが重要かと思います。

 

なお取材では、「重ね食べの中でどんな組み合わせが歯周病になりやすい?」「主食1つでおかずをたくさん食べるのは歯周病になりやすい?」なども質問したが、現段階では調査していないためわからないとのことだった。いずれにせよ、重ね食べは肥満だけでなく、歯周病のリスクもありそうだ。日常的に重ね食べしている人は気を付けたほうがよさそうだ。

 

 

 

 

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「SNS上での交友関係が豊かでも、現実世界でそうとは限らない」 中高年を対象にした調査で明らかに

2022年05月06日 | 東京都健康長寿医療センター DR

参照記事:5/4(水) 21:00 ねとらぼ

Facebook友人数が多いほど、困った時に助けてくれる友人が多いとは限らないという結果に


「SNSの友達数がたくさんいたとしても、困ったときに助けてくれる友達の数が同様に多いわけではない」という研究結果を東京都健康長寿医療センター研究所 が発表しました。

 研究では、中高年層が多く利用するSNS「趣味人倶楽部」の会員を対象に、Facebookの友人数と現実の交友関係の関係性を調査。Facebookで友達の数が多い人は、現実でも同じように豊かなつながりを持っているのか調べています。

 アンケートに答えた会員のうち、40歳以上でFacebookのアカウントを持つと回答した2320人を対象として、Facebookの友人数に応じた「実際に親密な付き合いをしている人の数」と「実際に困った時に助けてくれそうな人の数」を解析。

 すると、Facebookの友達数が500人以下の場合は、友人数が増えるにつれて、現実の「親密な付き合いの人」と「困った時に助けてくれそうな人」の数は増えています。しかし「困った時に助けてくれそうな人」に限っては、友達数500人で頭打ちに。友達数が500人以上でも、201~500人の場合と同程度にとどまりました。

 研究チームは「SNS上の友達が多くても、困った時に助けてくれるような実際に機能する相手は一部に限られてしまう」と推測しています。

 今回の研究は、コロナ禍でSNSの交流が急速に進んだが、現実世界の交友関係にどのような影響があるか明らかにすることを狙いとしています。研究チームが「現実のつながりを完全に代替できるものではない」と言及するように、SNSはあくまでも現実のつながりを補完・強化する役割にとどまるようです。

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誰もが“ごみ屋敷症候群”になる可能性あり…どう支援すべき? 調査した医師に聞いた「認知症との関係」 

2022年01月08日 | 東京都健康長寿医療センター DR

東京都健康長寿医療センター研究所
福祉と生活ケア研究チーム

井藤佳恵医師


1/7(金) 20:01  FNNプライムオンライン
参照記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/23c232900bebf180e84e17606680eca9862c46a9

適切な支援がなければ、誰もが“ごみ屋敷症候群”に!
片付けられず、物がたまっていき、家の中が足の踏み場もない状況になってしまういわゆる“ゴミ屋敷”。

この"ゴミ屋敷"で暮らす高齢者について、東京都健康長寿医療センターが10年間の追跡調査をまとめた。その結果、一人暮らしの高齢者の認知症が進行し、身体機能が衰えたとき、適切な支援がなければ、誰もがディオゲネス症候群、(いわゆる“ごみ屋敷症候群”)になる可能性があることが明らかになった。

そもそも「ディオゲネス症候群」とは、日本語でいうと老年期隠遁症候群、いわゆる“ごみ屋敷症候群”などとして知られる症候群。住居の衛生状態が保てず、自身に無関心で、支援を拒み、社会的孤立状態にある等の特徴があると言われている。

東京都健康長寿医療センター研究所の福祉と生活ケア研究チームの井藤佳恵医師は、東京都内で精神科医として自宅を訪問、対応した270人の高齢者のうち、61人をディオゲネス症候群と定義し、これに当てはまらない残りの209人と比較した。

その結果、ディオゲネス症候群と診断されたグループの、中等度以上の認知症の割合は54.1%とそうでないグループの27.2%より高かった。また、「歩行」「排泄」「入浴」の支援の必要性がある割合もディオゲネス症候群と診断されたグループのほうが高かった。
さらに、1年以内の死亡率はディオゲネス症候群では17.5%で、そうでないグループの9.1%より高いことがわかった。

一人暮らしの高齢者がなりやすい
では、我々の身近な人が「ディオゲネス症候群」と診断された場合どう支援すべきなのか?また、ディオゲネス症候群ではない高齢者が気を付けるべきことはどんなことなのか?東京都健康長寿医療センター研究所の福祉と生活ケア研究チームの井藤佳恵医師に詳しく話を聞いてみた。

――なぜこの研究を始めた?

「本人の意思の尊重」「最期までその人らしく」ということがさかんに言われています。
ですが、精神科病院に勤めておりますと、「家が“ゴミ屋敷”だから自宅で暮らすのはもう無理です」と地域保健に関わる専門職の方に連れてこられる認知症等の患者様が少なからずいらっしゃって、しかも入院した途端に家の賃貸契約を解除されてしまって、戻る家がなくなってしまう、ということが未だにあります。

誰もが、国家に干渉されずに自由に生きる権利(自由権)と、社会的、経済的弱者が人間らしい生活を国家に保障される権利(社会権)をもっています。「ごみ屋敷」に至ったことが、たとえ認知症等の精神疾患を背景とするものであったとしても、精神疾患を抱えることは、自由権を否定してよい理由にはなりません。この方たちの自由権と社会権のバランスをどのようにとることが「人権擁護」と言えるのか、ということはとても難しく、大きな課題だと考えています。

どういう関わりがこの人たち本人にとって「よい関わり」なのかということを考える上で、まず、この人たちはどういう人たちなのか、という実態把握が必要だと考えこの研究を始めました。

――ディオゲネス症候群になりやすい人の特徴は?
今回の研究からは、ディオゲネス症候群は、社会的孤立状態にある一人暮らしの高齢者の、認知症が中等度以上に進行し、身体機能が低下することと関連することが明らかになりました。
ここでいう「社会的孤立状態」とは、東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一先生の定義に従い、「必要な社会的支援の利用を可能にする社会的ネットワークがない状態」としています。

――今回の研究結果で驚いた部分は?
ディオゲネス症候群に関する最初の医学論文は1966年にノッティンガムから発表されました。以降、ダブリン、シドニー、パリ、香港などの大都市から研究報告がありますが、今回の東京のディオゲネス症候群も含め、この症候群が時代も文化も超えて非常に均一な性質をもつということに驚きます。

「ディオゲネス症候群」と「認知症」どちらが先?
――認知症からディオゲネス症候群になる?それともディオゲネス症候群から認知症になる?

必ずしも認知症が背景にあるわけではなく、背景に認知症もないし、その他の精神疾患もない、つまり精神科的には診断がない、という方もいらっしゃいます。認知症が背景にある方もいらっしゃいますが、今回の研究は、認知症を発症しそれが進行していく過程と、住まいの環境が変わっていく過程を同時に追ったものではありません。ですから、どちらが先なのかということを科学的に検証したという研究ではありません。

ですが、お家にお邪魔させていただくと、例えば床が見えないくらい物がたくさん積み重なっている、テーブルの上には新聞や食器、カビの生えた食物が雑然と置かれている、けれどもそういったものの奥にある食器棚には、とてもきれいにお皿やカップが並んでいる、というようなことが珍しくなくあります。

そうすると、住環境は以前からこういう風なのではなかった、几帳面で整理整頓が得意な方だったのではないか、ということが想像されます。そのような状況からは、高齢期になり認知機能や身体機能等が低下してくること、そうなったときに適切な支援が得られないことが、住環境が変わっていくことにつながっているのではないかと考えています。

――ディオゲネス症候群と診断された人はどう支援すべき?
まず、ご本人がそう希望する場合を除いて、ディオゲネス症候群の人は自宅での生活はもう継続できない、精神科病院か施設に入ってもらうしかない、という考え方を変えるところから、と思っています。

一般用語として広まっている「ゴミ屋敷」という呼称についても、少なくとも「支援者」であるなら、簡単に使ってよい言葉ではないと思います。ご本人が「ゴミ」と認識しているものもありますが、そうではなくて、捨てられなかったり、捨ててよいのかどうかわからなくて困っているものもあります。

考えてみれば、初めから「ゴミ」であるものはなくて、何かの役割を終えたものを私たちは「ゴミ」として捨てているにすぎません。ですから、支援というのは、そこにあるものがその人にとってどういう役割をもっているのか一緒に考えるところから始まるのではないかと思います。

いきなり片づけるのではなく、そういった丁寧な過程を踏むことでその人との間に信頼関係を築くことができたら、支援の方向性も見えてくると思います。片づけることは手段であって、目的ではありません。支援―被支援関係も、人と人との関係です。「これじゃダメ」という否定から始めるのではなく、ああ、こんな風に暮らしていらっしゃるのですね、とまず受け止めるところからしか、人と人との関係は築けないのではないでしょうか。

――ディオゲネス症候群ではない高齢者が気をつけることはある?

高齢になり、認知機能や身体機能が多少なりとも衰えてくることは、誰もが経験することです。困っていると誰かに相談することや、助けを求めることは、人にとって当たり前で必要なつながりだと知っていることは、大切なことだと思います。
また、「調査の対象者は65歳以上なので、それより若い人のゴミ屋敷化については他の背景があると考えられている」とのことだった。

散らかった部屋にあるものを、支援する側はついつい不要だと思って捨ててしまう。しかし、そうではなく、その部屋の住人とともにそこにあるものがどういう役割を持っているか、一緒に考えるところから始めることが支援する上で重要なようだ。

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介護の働き方改革 キーワードは「生きがい就労」と「多世代交流」

2021年12月17日 | 東京都健康長寿医療センター DR

12/16(木) 21:00 なかまぁる
参照記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/b66b70dc1df9571dd803c92eb9697db1fd631ea9

東京都健康長寿医療センター研究所
「社会参加と地域保健研究チーム」研究部長
藤原佳典医師


ライフステージに応じた社会活動として元気な高齢者には「生きがい就労」が効果的だと指摘しています。ボランティアでなく就労であり、お金に価値を置くのではなく生きがいに価値を見いだす。シリーズ「これからのKAIGO~『自分にできる』がきっと見つかる~」の6回目は、生きがい就労を深掘りしました。

課題:アクティブシニアや地域を巻き込むメリットを見いだせない
介護イノベーター:藤原佳典さん(ふじわら・よしのり)

北海道大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院老年科などを経て、2000年から東京都老人総合研究所研究員、11年より東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム研究部長(チームリーダー)。「世代間交流」「多世代共生の地域づくり」「ソーシャル・キャピタル(社会資本関係)」の視点から高齢者の認知症予防とフレイル予防の研究を続ける。高齢者就労支援研究会「ESSENCE」を主宰し、高齢者就労についての多面的な意義について研究を進めている。

就労はフレイル予防の重要なカード
高齢者の社会活動は、就労、ボランティア活動、趣味・稽古の活動、友人・近所づきあい、通所サービスの利用といったように、さまざまな方法があります。少子高齢化で生産年齢人口が減少する中、高齢者の中には生涯現役を望む人がいたり、就労へのニーズが高まったりしています。介護の仕事と似たようなことを行うことがある、ボランティアに対する感覚も変わってきているようです。

「ボランティア活動を呼びかけても、以前のように高齢者の心にはそれほど響かず、今や就労が社会参加や社会貢献の重要な柱になりつつあります。地域に根ざした高齢者の就労支援のあり方を考えていく必要があるでしょう」

健康寿命を延ばすことが社会の大きな課題となっています。加齢に伴い、体力や気力が弱り始めることは自然なことですが、そうした要介護状態になってしまう危険性が高い状態であるフレイル(虚弱)の予防のため、高齢者の社会参加の一つである就労は、重要なカードになっています。ライフステージに応じた社会活動をすることが、フレイル予防、介護予防につながっていきます。

目的は収入より生きがいに重きを
高齢者の就労がもたらすメリットはどのようなものがあるのでしょうか。藤原さんは、収入を得ることのほか、次のようなことを挙げます。

・外出頻度
・知的活動
・社会とのつながり
・生きがい

このほか、社会にとっては消費や納税というメリットもあります。
一方、高齢者一個人に目線を落としてみると、就労と健康リスクには関連性があるとされています。

一方、高齢者一個人に目線を落としてみると、就労と健康リスクには関連性があるとされています。

「私たちの調査研究では、健康の維持において就労の目的がより重要であることがわかっています。東京都大田区在住の就業している高齢者945人を対象に、就労の目的と2年後の健康悪化リスクの関連性について調べたところ、生きがいを目的とした人に比べてお金のみを目的とした人は主観的健康感の悪化リスクが1.42倍、生活機能悪化リスクが1.55倍高いことが明らかになりました。つまり、健康面からみた場合、高齢者の就労では生きがいを目的とすることがとても重要なのです。だから生きがい就労なのです」

感謝の言葉を直接もらえる仕事
「高齢者の生きがい就労に、介護や福祉の業界はもっと注目すべきだと思います。例えば、(周辺業務を行う)介護助手として働いている高齢者にヒアリングをすると異口同音に『直接感謝される仕事はやりがいがある』という言葉が返ってきます。サービスを提供する利用者だけでなく、同僚の若手職員から感謝されることも大きな励みになるようです」

コロナ禍により社会活動が制約されてきました。しかし、同じ施設でも、高齢者によるボランティアは一斉に活動中止を余儀なくされましたがが、高齢者の介護助手は若手や中堅職員と同様にシフト通り勤務しているそうです。

リア充のポイントは「役に立っている」という実感
生きがい就労を目的とする高齢者は「自分が役に立っている」という充実感を重視する傾向が強いため、その成果を得られやすい介護助手の仕事が最適だとも考えられています。なぜなら、この仕事は日常生活の延長線上のスキルがあれば誰でもすぐに取り組めるものだからです。

そして、若手や中堅職員にとってもメリットになるようにシニア職員の活用を考えていくことが肝心です。

「朝型の生活スタイルで土日でも時間にゆとりがある高齢者は、子育て世代のパート職員が働きにくい時間帯をカバーすることができます。両者をうまく組み合わせることにより、それぞれが短時間労働であっても全体として業務をスムーズに回していくことが可能になります」

藤原さんたちの調査研究では多世代が交流することは、高齢者だけでなく、20代~40代のこころの健康においても良い影響を与えることがわかっています。

「これは一般市民を対象とした調査結果ですが、介護施設においても同様の結果になると考えられます。シニア職員が若い職員のよき相談相手になっているという話もよく聞きますから」

効果が出やすい中規模以上の介護施設
一方、介護助手として高齢者を雇用しやすいのは専門性の高い仕事とそうでない仕事の切り分けと委譲がしやすい中規模以上の介護施設だそうです。

「小規模施設は少人数のスタッフで運営しているため、何でもこなせるマルチタスクの人材を欲しがる傾向があり、高齢者の雇用が難しい印象があります」

また、介護施設の規模にかかわらず「マルチタスクな人材ではないと介護のプロとはいえない」といった風潮が根強い職場では、新しい働き方である介護助手の導入がうまくいかないそうです。

「なぜなら、生きがい就労であってもスタッフとして雇われているという意識が強い高齢者とうまくやっていくには、若手や中堅職員のマインド・セットが不可欠です。なかでもキーパーソンとなるフロアのリーダー格の職員には、介護助手のコーディネートやトレーニングに特化したリーダー研修を受けてもらうことも必要でしょう」

高齢者に響かない求人情報と響く求人情報の違い
求人活動においても工夫が大切です。シルバービジネスの一つとして中途半端な形で求人情報を発信しても、生きがい就労を目的とする高齢者には届かないか、あるいは届いたとしても心に響かないそうです。

「募集はターゲットを絞りましょう。子育てを終えた主婦や学生などにも対象を広げて母集団を大きくするより60~75歳までのアクティブシニアに限定し、生きがいを前面に押し出す方が応募者は集まることがわかっています」

さらに、個々の介護施設が散発的に取り組んでも社会の空気は作れず、地域に広がっていかないといいます。

「各地の先例を踏まえると、自治体や社会福祉協議会と組んでイベント化することが重要です。ボランティア講座などの最後に介護助手の募集案内をするのも効果的だと聞いています。その際も情動的に呼びかけることが肝心で、ある市では若い職員が『介護現場は人が足りなくて本当に大変です。みなさん、助けてください』と訴えたら、それを意気に感じた高齢者たちが『そういうことなら手伝いに行こう』『おこづかいがもらえるのならありがたい』と多数応募してくれたそうです」

シニア職員は地域との架け橋や将来の顧客という認識を
高齢者の採用に関しては、施設から徒歩や自転車通勤圏内の地域に限定することも重要なポイントです。

「介護ビジネスは地域包括ケアの枠組みの中で考えていくものです。最初は就労目的でやってきた高齢者も、働いているうちに施設の様子がわかってきます。居心地が良ければ『自分が世話になるときはこの施設にしよう』と将来の選択肢の一つになります。つまり、シニア職員は将来の顧客ともいえる存在なのです」

シニア職員が介護を受ける立場になっても介護職員とはすでに気心が知れているのでお互いにストレスが少なく、施設に対しても愛着があるので運営に協力してくれることも期待できます。

一方、地域に向けてさまざまなイベントを実施する際にはシニア職員が地域の人を呼び込んでくれたり、地域のキーパーソンとの架け橋になってくれたりするメリットがあります。

「これは施設と生活圏をともにするシニア職員ならではの役割で、施設がある地域とのかかわりが薄い若手や中堅、外国人の職員には担えないものです。シニア職員は介護施設が地域とのつながりを深めるうえで心強い味方になってくれるでしょう」

三方良しの地域づくりを
介護や福祉業界で高齢者の就労を推し進める際、念頭に置いておきたいのが三方良しの精神です。すなわち、高齢者本人だけでなく、同じ職場で働く同僚、そして地元の地域社会にもメリットをもたらすような仕組みを考えることが重要です。

「さまざまな調査をしていると、介護助手に接している職員ほど介護助手に対する評価が高く、介護助手を導入している介護施設は人間関係も総じていいように思います。職員間の多世代交流が介護現場におけるコミュニケーションを促進し、こうした好環境を生み出しているのでしょう。人手不足の介護や福祉業界に変革をもたらすのは、まさに高齢者の生きがい就労と多世代交流なのです」

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
澁澤栄一が初代院長として運営した、我が国の福祉事業所の草分けである東京養育院をルーツとする。1972年の開設以来、超高齢社会がもたらす諸問題の解決に向けた研究に取り組んできた。「社会参加と地域保健研究チーム」では、持続可能な地域共生社会の実現に向けて、生活機能が自立した高齢者を主な対象とし、プロダクティビティ(社会貢献)の増進とヘルシー・エイジングの推進、さらには社会とのつながりの中で抱える課題の解明に寄与する研究を行っている。

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「国の繁盛は貧民を増す」大富豪渋沢栄一はなぜ「養育院」を援助しつづけたのか

2021年03月23日 | 東京都健康長寿医療センター DR

3/23(火) 10:04 サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
参照記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/d5de7d2bd1bca8d99ede173697ef3eceeccf235c




数多くの企業・組織の役職に就いた渋沢が生涯で最も長くその座に就いたのは、明治初期に東京に設立された救貧施設である養育院の院長だ。

大蔵省を辞めて間もないころから死去するまで50年以上にわたり、養育院の維持・拡大に尽力した。

渋沢とて初めから慈善家だったわけではない。養育院の初代院長ではあるが、設立には携わっていない。

「渋沢は講演で養育院院長に就いた経緯を『(東京府)知事とたまたま縁があった』と述べている。

知事は元幕臣の大久保一翁(いちおう)(忠寛)という人物で、実は渋沢とは縁が深い」。

こう解説するのは、養育院を前身とする地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター」(東京・板橋区)顧問の稲松孝思さんだ。医師として勤務しながら養育院の歴史を研究してきた。

◇「七分積金」の使い道
養育院の成り立ちは、江戸時代に江戸の町民が蓄えた基金「七分積金(しちぶつみきん)」と、大久保が幕臣時代から描いていた西洋式の医療・福祉施設の構想が結びついたものだ。
渋沢は七分積金と大久保の双方にかかわりがあった。

七分積金とは、1791(寛政3)年、天明の飢饉(ききん)の後に老中に就いた松平定信が江戸の町の困窮者救済のために設けた積立基金制度だ。

地主・家主たちが町の運営費として拠出する町会費を節約させ、その節約分の7割を自治組織である町会所に積み立て、幕府の資金も足して火災や飢饉の時に困窮者に米や資金を配った。

1872(明治5)年、七分積金は大久保が知事に就いた東京府に所管が移り、実業家からなる営繕会議所(のちの東京商工会議所)が管理することとなった。

太政大臣の月給が800円の時代に67万円と巨額の財源は、道路や橋、水道の新設・修理に向けられた。

困窮者の救済費のはずだった七分積金をインフラ整備の費用に向けるよう促したのは大蔵省のナンバー2だった井上馨だ。

渋沢は当時、大蔵省で井上の右腕だった。
日本が近代国家の仲間入りをするには首都のインフラ整備は急務だが、政府も東京府も資金がなかった。

府知事の大久保は、会議所に本来目的である救貧策はどうするのかと尋ねた。

各藩の武士が去った町は商売が廃れ、ホームレスがあふれていた。大久保は幕臣時代に西洋式の救貧施設の知識を洋書で学び、幕府に「病幼院」設立の意見書を出したこともある。

会議所は大久保の意向を受け、病人、老人、貧しい子どもの保護施設の設置や失業対策事業を含む救貧3策を示した。

ロシア皇族来日を前にしたホームレスの臨時収容を経て、73年に養育院の施設が東京・上野に完成した。

同年に大蔵省を退官し、第一国立銀行の経営に奮闘していた渋沢は74年、大久保から会議所での七分積金を管理する役割を任される。

既に資金は底を突きつつあり、渋沢は七分積金に伴う貸し付け担保の土地を売却して47万円を確保。

この年に会議所の事業が府に移管されて以降、養育院などの運営を担った。

72年から76年にかけての会議所の支出内訳をみると、土木費42%、ガス事業費21%などの一方、養育院は5%だった。

渋沢の大久保との縁は、渋沢が江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜に仕えていた時代にさかのぼる。

大久保は江戸城の無血開城に携わった後、静岡で徳川藩の発足に尽力した。

渋沢は1868(明治元)年に慶喜の弟に随行した渡欧使節団から戻り、静岡に蟄居(ちっきょ)する慶喜へ報告に訪れた。

このとき大久保は初めて渋沢に会った。
渋沢が使節団の会計庶務係として残余金の扱いについて大久保に意見を求めた手紙が残っている。

手紙を発見した稲松さんは「幕府の海外視察は費用が足りなくなると請求し、余れば懐に入れるのが常だったようだが、渋沢は現地で運用してもうけたうえ、公正に報告した。
その働きぶりが大久保から高い評価を受けたのだろう」と話す。

大久保は、藩が明治政府から貸し付けられた太政官札の運用を渋沢に任せ、渋沢は商人の資金を合わせた「合本(がっぽん)」組織として、銀行と商社を兼ね合わせた商法会所を設立する。

明治政府への出仕を後押ししたのも大久保だった。

◇存続の危機に寄付集め

渋沢が府の税金で運営するようになった養育院は、大久保が府知事を退任後、存続の危機に立たされる。

府議会で養育院の廃止論が巻き起こったのだ。

渋沢は存続を訴えたが「税金で貧しい人を養えば、怠け者をつくる」との声は大きく、85年には支出が止められた。

渋沢は社交場として使われていた鹿鳴館(ろくめいかん)でバザーを開いたり、財界人から寄付を募ったりして、養育院の運営費を賄った。

七分積金の本来の使い道として、大久保から託された養育院を潰すわけにはいかないとの思いが突き動かしたのだろう。

渋沢による公営化の建議が通り、養育院が東京市営に移ったのは5年後のことだった。

その後も渋沢は寄付を募り、運用して運営費に加えた。

養育院は孤児の養育、不良少年の教育、身寄りのない高齢者の保護などの目的ごとに施設を増やした。

人々から少しずつ寄付金を集めて慈善事業を成り立たせる手法もまた、渋沢の“合本”主義の表れと言えるのではないか。

渋沢の福祉観は時代とともに変わった。

養育院の廃止論に抗した時はあくまで人道的な見地から救貧を唱えたが、明治の終わりには富裕層に「富を増すほど社会の助力を受けているわけだから、恩恵に対して救済事業はむしろ当然の義務」と説いた。

大正時代に入ると「国の繁盛は貧民を増すとの念が深くなる」「富む者が富み、貧しきなる者貧しきに至るは社会に不自然なる変化の生ずる結果」と貧富の拡大を懸念した。

救貧にとどまらず、防貧策として、労働者保険や貯蓄を挙げ、職業紹介を養育院で手がけた。

明治初期、自身が導入に大きな役割を果たし、経済発展をもたらした資本主義の負の面は看過できないものだった。

渋沢の福祉への視点を開いたのは、自身が見込んで養育院で引き立てた人物たちだと稲松さんはみる。

その一人が養育院の幹事を務めた安達憲忠(けんちゅう)だ。

岡山県での自由民権運動に挫折し、上京。東京府に勤め、渋沢と出会って養育院の実務を任された。

のちに社会事業家として活躍する田中太郎は渋沢の命を受けて『養育院月報』を創刊し、入所者の聞き取り調査や七分積金の歴史、江戸時代以前や西洋の福祉施策について安達とともに執筆した。

渋沢は晩年、七分積金制度を作った松平定信の伝記『楽翁公伝』を編むなど定信の功績をたたえる活動に力を入れた。

定信が遺した七分積金は明治維新期、首都東京の近代化を助けると同時に、希有(けう)な実業家を慈善家へと導いた。

(黒崎亜弓・ジャーナリスト)

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東京都健康長寿医療センターにおける患者及び職員の新型コロナウイルス感染者の発生について

2021年01月25日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(2021年01月23日)

東京都健康長寿医療センターの病棟において、患者及び職員の新型コロナウイルスの感染が複数確認されましたので、御報告いたします。

1 当該患者・職員の概要

患者:11名(発症の経過及び病状等を確認中だが、重症者はいない)
職員:2名(発症の経過及び病状等を確認中だが、重症者はいない)

2 感染確認の状況

・1月13日(水)に緊急入院した患者A及び1月15日(金)に緊急入院した患者Bについて、1月18日(月)昼以降に発熱及び軽い咳の症状が時々見られたことから、健康観察を行い、1月22日(金)にPCR検査を両者に実施した結果、同日陽性が判明。
患者A及びBの陽性判明を受け、1月22日(金)には両患者と病棟を同じくする患者34名及び接触のあった職員等(委託事業者を含む)41名について順次PCR検査を実施。

・1月23日(土)に、患者1名のPCR検査を実施。
検査の結果、1月23日(土)までにA及びBを含む患者11名と職員2名の「陽性」が判明。他患者24名、職員23名については、「陰性」を確認した。
残りの職員14名および委託事業者2名については、1月25日(月)にPCRの結果が判明する予定。
当該部署で業務に当たっていたPCR検査未実施の職員等については、順次検査を実施していく。
患者が、入院していた病棟は一般病棟であり、新型コロナウイルス感染患者が入院する病棟ではない。

3 病院の対応等

陽性が判明した患者については、感染症対策を徹底した上で個室等に隔離し、治療継続とともに健康観察を実施している。
陰性が確認された患者24名を含む入院患者については、引き続き健康観察を継続する。
現在、所管の保健所に指導を仰いでおり、陽性が判明した患者等との濃厚接触者と考えられる職員を自宅待機とした。
陽性が判明した患者及び職員以外には、患者及び職員ともに、感染を疑わせる症状は認められない。
当該病棟及び休憩室等は、日々消毒を実施している。
感染経路は現在のところ不明であり今後、所管の保健所の調査に協力していく。
引き続き、職員の手指衛生やサージカルマスク着用などの標準予防策の徹底及び感染管理担当(ICT)による巡回点検を実施する。

4 今後の診療体制について

濃厚接触者に該当すると考えられる職員を自宅待機としていること、陽性者以外の患者や職員に症状を訴えるものは現在出ていないこと、当院では手指衛生やマスクの着用など標準的な院内感染対策を適切に行っていることから、当院の感染症内科専門医等の意見を踏まえ、外来・入院及び救急診療について一部制限の上、診療を継続していく。

≪問合せ先≫
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター

経営企画局総務課  03-3964-1141(内線1221)
医療サービス推進課 03-3964-1141(内線1124)

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女子栄養大と東京都健康長寿医療センター、高齢者栄養管理で連携

2020年09月30日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(09/30(水) 7:55 産経新聞)

女子栄養大、東京都健康長寿医療センターの協定式の模様





 女子栄養大(豊島区)は29日、東京都健康長寿医療センター(板橋区)と包括連携協定を結んだ。高齢者の栄養管理に役立つガイドラインを共同で作成し、健康を害する要因となる認知症やフレイル(要介護になる手前の虚弱状態)の予防・管理につなげるのが狙い。

 今後3年以内をめどに板橋区などの保健師や栄養士らに配布し、活用してもらう計画。その後は日本老年医学会や日本臨床栄養学会などと協力し、さらに新しい情報を加えた改訂版の作成も目指す。

 同大の新開省二教授によると、こうしたガイドラインの作成は例がないといい、「高齢者の食事では生活習慣病の予防が注目されがちだが、ガイドラインの活用で老化の進行を遅らせる栄養摂取も可能になる」と話している。




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「朝の散歩」「1日1万歩」が病のもとに!? “実は危険なウォーキング”の実情

2020年09月14日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(9/13(日) 8:01 週刊女性PRIME)

青柳幸利医師
東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長






 ここ最近、長引く巣ごもり生活の影響による体力低下を気にして、ウォーキングを始めた、という人が増えている。ウォーキングによる健康目安としてよく耳にするのが、「1日1万歩」という指標。人によっては、歩けば歩くほど健康になると信じ、万歩計を携えて、より多く歩こうと日々実践している人もいるかもしれない。でも実はこれが、大きな間違い!?

「やみくもに歩数を増やすだけの歩き方では、体力アップが望めないだけでなく、健康を害する危険性もあります」

 と、ウォーキングに関する研究を進める東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利さんは指摘する。健康のために頑張って歩くことが体調の悪化を招くとは、一体どういうことなのか。

黄金比は「1日8000歩、20分は早歩き」
「ウォーキングで体力アップを目指すためには、長く歩くよりも大事な点が。歩く際の上下運動により身体に伝わる“刺激”が重要な役割を担っていると、近年の研究から明らかになりました。つまり、ダラダラと歩き続けるだけでは身体への刺激が不十分で、ウォーキングによる健康効果は得られないということ。逆に、ウォーキングも含めて運動のしすぎは免疫力を下げてしまうリスクがあります」

 有酸素運動だから身体にいいと思いがちだが、マラソンのように何万歩も力強い足踏みを繰り返すと、足の裏の血管を通るヘモグロビンが壊されてしまい、貧血になる危険性もあるという。

「スポーツ選手ならともかく、健康のためにと過度に運動をすることは病気予防の観点からはあまりよい方法ではないと、はっきり解明されています。実際、メタボ対策のためにハードな運動を続けた結果、健康を維持するどころか、動脈硬化になってしまったという例も。激しすぎる運動のために、心臓からの血流量が多くなりすぎてしまったためです。また毎日、犬の散歩で1万歩歩いていたにもかかわらず、うつ病になってしまったという人も」

 では、健康になれる正しいウォーキングをするにはどうしたらいいのか、青柳さんに教えてもらった。

「病気を寄せつけない歩き方の黄金律として、私は『1日8000歩、そのうち20分間は中強度の運動=早歩きを取り入れる』ことを推奨しています。5000人を対象に20年間にわたって実施した私どもの研究の結果、この歩き方を習慣にすると、要支援・要介護、うつ病、認知症、心疾患、がん、動脈硬化、骨粗しょう症の有病率が低く、さらに高血圧症、糖尿病の発症率が、これより身体活動が低い人と比べて大幅に下がることが判明したのです」

 歩数だけでなく“中強度の運動=早歩きを20分間”という点が最大の注目ポイント。

「多くの人は加齢による骨密度の低下や、筋肉量が減って体温が低下することで免疫力が落ちて病気を引き起こしやすくなります。先ほども説明したとおり、ウォーキングで骨密度や筋力をアップするには、どれだけの強度で骨や筋肉に刺激を与えられるかが重要。そのために適した運動強度が中強度で20分、これは早歩きにも置き換えられます」

 8000歩はウォーキングによる歩数だけでなく、買い物や室内での移動なども含めてトータルで無理なく目指せばOK。中強度の運動量は体力や年齢によって変わるが、共通の目安は“なんとか会話できる程度の早歩き”だ。

「体力に見合った適切な『中強度』を見つけることが大切。身体に痛みや疲れが残るようなら、それは明らかにやりすぎ。無理して歩き続ければ関節を痛めたり細胞がサビて、がん化が進んでしまうおそれもあるので無理は禁物」

 また、身体を正しく使う歩き方のポイントは、歩幅の広さだと青柳さん。老化で歩き方のバランスが崩れると歩幅は狭くなりがち。その状態で無理にスピードを上げるよりも、腕を大きく振り大股で歩くことを意識して歩けば、誰でも自然とピッチが上がる。

 一生涯続けられる歩き方を身につけて、健康な身体づくりを目指そう!

実はこれ、すべて間違っています!!
■1日1万歩が望ましい
 人により体力や筋力が異なることを考えると、1万歩が万人に共通する健康習慣の目安とはいえない。普段、運動習慣のない人がいきなり1万歩を歩き始めれば、免疫力が低下するなど、かえって寿命を縮めるおそれも!

■歩くのは朝がいい
 起き抜けの身体は、就寝時の発汗により水分量が低下して血液もドロドロに。その状態での運動は心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが! 水を飲んでもすぐには身体に吸収されないので、起きて1時間以内のウォーキングは避けて。

■同じスピードで歩けばいい
 骨密度や筋肉量の維持には、歩数よりも歩く際の身体への刺激(運動強度)の量が重要。とはいえウォーキング中ずっと速く歩き続けるのはかえって身体に負担が。1日20分間、軽く息が弾む程度の速さを取り入れるのがベスト。

■消費カロリーを意識する
 同じカロリーを消費したとしても、体重や身長によって脂肪の燃焼率は変わるもの。ウォーキングによる消費カロリーにとらわれるより、筋力や持久力を高める歩き方を目指したほうが健康のためには断然、効率的。

■速く・長く歩くほどよい
「中強度」の運動量の基準は体力や年齢によって変わるので、自分に合った速度・距離で歩くことが大切。普通に身体が動かせる人の場合、1秒に2歩程度の速さで、“軽く息が弾むが会話はできる程度の運動強度”を目安にして。

■週末にまとめて歩けばOK
 まとめ歩きは身体に負担がかかりすぎて、かえって健康を害してしまう危険性が。土、日は8000歩・うち20分は中強度のウォーキングを行い、平日は外出時に階段を利用するなどして、歩数と中強度の活動時間をのばすのがおすすめ。

【3人の女性が語る「正しく歩いて元気になりました」】

◎体脂肪が2か月で5%ダウン
 最初は4000歩・早歩き9分からでしたが、毎日の買い物やカラオケなど外出の機会をつくることで歩数を増やし、今では8000歩・早歩き20分の習慣が定着。おかげで、体脂肪率が29%から24%に減少しました。(62歳女性・開始して2か月)

◎高血圧が完治!介護ストレスの解消にも
 12年間、自宅で母親の介護をしています。高血圧が心配で4か月前から8000歩・早歩き20分のウォーキングを始めました。今では血圧が下がり体調も安定。母からの呼び出しも、「歩数が稼げる」と前向きに思えるように!(54歳女性・開始して4か月)

◎転倒が減り、スタスタ歩けるように!
 よく転ぶようになったことから「中強度ウォーキング」を開始。犬の散歩などを活用して1日8000歩歩く生活を続けたところ、転倒が減少。以前は犬に引きずられていた散歩も、今では犬より速く歩けるようになりました。(72歳女性・開始して10か月)

(取材・文/中村明子)

【PROFILE】
青柳幸利医師 
◎東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長。医学博士。
「病気にならない歩き方の黄金律」が世界中から称賛を浴び、テレビや雑誌、講演会などで活躍。
著書に『やってはいけないウォーキング』(SB新書)など。








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高齢者の社会活動への参加、追跡調査の脱落と関連 - 東京都健康長寿医療センター研究所が発表

2020年08月06日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(8/5(水) 17:10 医療介護CBニュース)

東京都健康長寿医療センター研究所 大渕修一研究部長



東京都健康長寿医療センター研究所は4日、同研究所の大渕修一研究部長の研究グループが、地域在住高齢者への郵送調査の未応答者に対する追跡調査を段階的に実施し、調査からの脱落の段階とその関連要因を検討した結果、日常生活動作能力の低下や社会活動への不参加が脱落と関連することが明らかとなったと発表した。研究グループは「周囲との交流の減少や町内会活動への不参加は、将来的な社会からの離脱の危険信号」といった見解を示している。

 研究グループは、板橋区の65-85歳の地域在住高齢者への郵送調査の回答者3696人に対し、2年後に追跡郵送調査を実施。それに回答した2361人を「脱落レベル0」とした。未応答者に行った簡易調査の回答者462人を「脱落レベル1」、簡易調査の未応答者に5項目のはがき調査を実施した際に回答した234人を「脱落レベル2」、さらにその未応答者に訪問調査を実施し、それに応じた84人を「脱落レベル3」、どの調査にも応答しなかった101人は「脱落レベル4」と位置付けた。

 研究グループは「脱落レベルが上がるほど、初回郵送調査時の日常生活動作能力、社会活動参加率、主観的健康感、主観的経済状況が低く、社会的孤立者が多い傾向」があったと指摘。脱落レベルの最も低いレベル0の人と比較すると、レベル1と2の人は日常生活動作能力が低く、趣味活動へ不参加、レベル3の人はスポーツ活動へ不参加であることが判明。脱落レベルの最も高いレベル4の人は、社会的に孤立しており、町内会活動に参加していないことも分かった。






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“3日に1回の買いもの”で作る献立WEB公開、料理教室講師らが考案

2020年06月06日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(6/6(土) 14:23 食品産業新聞社ニュースWEB)


ベターホーム協会「3日分の元気ごはん献立」食材の購入イメージ



全国で料理教室を開催するベターホーム協会は、「3日に1回の買いもので自宅で過ごす 3日分の元気ごはん献立」(朝昼晩3日分の献立例+レシピ+買いものリスト大人2人分)をまとめ、5月26日ホームページに無料公開した。

新型コロナによる緊急事態宣言解除後も、感染防止のためスーパーでは少人数・短時間での買い物が求められ、家族の人数にもよるが「3日に1回」がなんとなく定着しつつある中で、缶詰や市販の調味料も上手に活用した「無理のない食事作り」を提案するもの。

献立は、料理教室講師らが考案。東京都健康長寿医療センター研究所が提案する食のガイドラインである10の食品群(肉、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品、海藻、緑黄色野菜・野菜、果物、芋、油脂類)を、1日でとれる栄養バランスのとれた献立となる。家で過ごすことが多いことを考え、エネルギー控えめ(1日1800~2000kcal目安)を意識。3日分のメニューを写真入りで一覧にし、作り方を3~5工程で簡単にまとめた。時短のコツ、段取りのヒントも記載。また作り置きおかず、使いきれない食材を使ったおやつレシピも紹介。

3日分買いものリストについては、食材を分かりやすく一覧にし、g数、本数、個数、パック数を購入者目線で記載した。「買うものが決まっているので30分以内に購入できる」という。販売単位により余った場合の保存・活用方法も紹介。

「毎日10種の食品を食べることは、いろいろな食材を意識し調理をする必要があるなど難しく感じるが、缶詰や市販の合わせ調味料を取り入れ、味つけもできるだけ簡単にしたので、無理なく実践できる」(ベターホーム協会)。

今回は2人分を想定しているが、家庭の状況に応じて購入数を増やせば大人数家族も活用できる。第1弾として3日分をホームページで無料公開しており、今後は新たな3日分×2サイクルの献立を掲載した電子書籍を6月下旬に販売予定。









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高齢者の体力、右肩上がり:運動習慣ある人ほど生活充実

2020年05月14日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(5/13(水) 11:30 nippon.com)

東京都健康長寿医療センター研究所
運動科学研究室長 青柳幸利医師



生活習慣病の予防ばかりでなく、ストレス軽減にも効果大といわれるウオーキング。厚生労働省では、成人の1日の目標歩数を8000歩程度としている。ところが、一般社団法人ストレスオフ・アライアンスの調査で、大半の日本人に「歩く習慣」がないことが判明した。

東京都健康長寿医療センター研究所によると、1日の平均歩数が1000歩(徒歩10分に相当)増すごとに、発症を抑えることができる病気が増える。歩くことは、うつ病やがん、脳卒中、心疾患、認知症に加えて、高血圧、糖尿病、メタボの予防にもつながる。但し、健康効果の最大値は8000歩とされる。同研究所の青柳幸利氏は、理想的なウォーキングとして「1日8000歩、そのうちの20分間は速歩き」を提唱している。

一般社団法人ストレスオフ・アライアンス(渋谷区)は2018年10月に設立。産官学の有識者によるさまざまな視点からストレス性疲労を研究している。19年3月、全国14万人(男女各7万人)を対象に「ココロの体力測定」と題するインターネット調査を実施。「8000歩」に着目して、歩く習慣やストレスとの関係性についてまとめた。



「1日8000歩程度」歩く頻度を尋ねたところ、女性の69.7%、男性の62.4%が「月1日未満」と回答。「週1日以上」は、女性18.5%、男性が26%にとどまった。男女別では女性の方が、年代別では男性の20代、女性の20~30代が、歩く習慣が少ない傾向にある。

都道府県別に、「1日8000歩」を週4日以上実行している人の割合を見ると、男女とも上位は通勤時間が長い傾向にある首都圏が多かった。下位は、男性は雪国、女性は四国地方が目立つ。

ストレスレベル別で見ると、低ストレス男性は週4日以上、低ストレス女性は週1日以上を習慣にしている人が多い。歩く頻度と健康満足度の相関性では、男女とも「週1日以上」から高くなり、「週4日以上」の習慣がある人の満足度が非常に高いことが分かった。

新型コロナウイルス感染症の拡大で、不要不急の外出自粛を求められたり、多くの企業がテレワークを推進したりしたことで、歩く機会がますます減っている人が多いのではないだろうか。また、今後、緊急事態宣言が解除されても、従来のような「毎日通勤」スタイルから、通勤とテレワークを組み合わせたハイブリッド型勤務も増えそうだ。

健康を維持することは、感染症に対する有効な防御策。集団で大きな声でおしゃべりしながらの散歩はご法度だが、1人や限られた人数でウオーキングする分には、感染リスクは低いと言われている。マスクを着け、人が少ない時間・場所を選び、他者との距離を2メートル以上開け、帰宅後はうがい、手洗いを忘れない――こうした感染症対策の基本を順守して、ウオーキングを生活に取り入れてみてはいかがだろうか。




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見過ごせない口の渇きや滑舌の衰え 引きこもりの引き金にも

2020年05月09日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(5/8(金) 11:11 Reライフ.net)

東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長
平野 浩彦(ひらの・ひろひこ)医師



 前回説明した、「オーラルフレイル」は、自覚がないまま進行してしまうことも少なくないとお話ししました。こういった進行を抑えるためには、この機能低下を自分事にすることが重要です。実は2年前の2018年、オーラルフレイルの三つ目の段階に「口腔(こうくう)機能低下症」という病名がつけられました。新しい病名をいただけたということで、保険診療の対象にもなり、口の機能低下について、歯科医が正しいアドバイスをしながら、しっかり口腔管理をしてゆくことが可能となって、オーラルフレイル管理のためのインフラが、充実してきました。

「口腔機能低下症」とは?

口腔機能に関する七つの症状のうち、三つ以上が該当すると、歯科医は「口腔機能低下症」と診断します。
 具体的には、(1)舌の汚れ具合(2)口の中の乾燥状況(3)歯の数の少なさやかみ合わせの力(4)滑舌などの状況(5)舌の力の低下(6)ものをかみ砕く力の低下(7)のみ込む能力の低下の7項目となります。

 舌の汚れは、舌背を便宜的に9分割して、それらに「舌苔(ぜったい)」がどのくらいついているかを診ます。
 入院されている患者さんで一番口が汚れているのはどういう方かというと、実は口から食事をとっていない方なのです。「胃瘻(ろう)している人は口から食べていないから、口腔ケアはあまり重要ではないんじゃないか」と思っている人がいますが逆です。口を使っていないからこそ、厚い舌苔がついてしまうのです。また、咀嚼(そしゃく)しないため唾液(だえき)も出ず、口の中が乾いてしまうという悪循環に陥ってしまう。
 唾液が出にくい方は、唾液腺のマッサージが有効です。これは、唾液腺を刺激して唾液を出す方法で、継続的な効果はあまり期待できません。ただ、実際に乾いておられる方にとっては「あっ、唾液が出た!」と自覚でき、非常に効果的なトレーニングになります。

 歯の数については、「80歳まで20本の歯を残しましょう」という「8020運動」のことを前回にお話ししました。それでせっかくたくさんの歯を残せても、退職などをきっかけに社会的な活動の機会が減り、地域との交流のない方は、徐々に口への健康意識が向かなくなって、さらには、そこから歯が1本欠けてしまっても「まぁ、いいや。食べることには特に支障はないし」といった感じで放置してしまう。こういったことがきっかけで、気付かぬうちに口の機能の衰えが進んでしまい、まさしくオーラルフレイルが進行してしまうことになります。

話を頻繁に聞き返されるようなら注意

舌口唇機能も重要ですね。滑舌の問題です。口や舌を巧みに操って発音するという意味で、「パ」「タ」「カ」の発音について考えると分かりやすい。
 「パ」は、口輪筋で唇がしっかり閉じられないと「ファ」になってしまう。「タ」は、前舌でたたいて出す音。「カ」は奥舌でつくる音ですね。
 このように、それぞれの音を出す時、必要とされる口の機能は随分違う。脳梗塞(こうそく)などになると、奥舌が十分に動かなくなります。

 滑舌が悪くなると、人と話していても頻繁に聞き返されたりするようになります。それが続くと、人とコミュニケーションを取ることもおっくうになってきます。すると、そうしたことが認知や運動の機能の衰えにもつながってしまう。そんな意味でも、オーラルフレイル管理は、大事なのです。(談)

平野 浩彦(ひらの・ひろひこ)
東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長
医学博士、歯科医師。1990年日本大学松戸歯学部卒業。東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)歯科口腔外科研修医、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)口腔外科研修医を経て、1992年東京都老人医療センター歯科口腔外科主事、2002年同センター医長、2009年東京都健康長寿医療センター研究所専門副部長。2016年より現職。

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口から始める介護予防 見逃すな「口のささいなトラブル」 オーラルフレイルを自分事に (上)

2020年05月01日 | 東京都健康長寿医療センター DR

東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長
平野浩彦さん



「オーラルフレイル」という概念は、この5~6年ぐらいで出てきたものです。「フレイル」というのは、以前は「虚弱」と呼ばれていた。それを5年くらい前、老年医学会でパブリックコメントを求めて英語のFrailtyをもとに「フレイル」という言葉にしました。かつて「痴呆(ちほう)症」と言っていたのを「認知症」と改めたように。その「フレイル」に、「オーラル」つまり「口」を結びつけ、かむ、飲み込む、しゃべるといった口の機能の衰えを表す概念としたものです。

連携して高齢者の口を支援



歯科のヘルスプロモーションに「8020運動」というものがあります。これは1989年に始まったもので「80歳になっても自分の歯を20本以上保ちましょう」という内容です。開始当初、80歳で20本の歯を維持できている人は1割にも満たなかった。それが、2016年の調査では、もう5割を超えるようになっています。
 そこで、歯をある程度維持できるようになると、次の段階では何を目指すべきかということになった。つまり、歯の形態をどのように回復させるかという取り組みから、その歯をどう使うか、使えるようにするか、そしてそれをどうチェックし管理するかという「口腔(こうくう)機能管理」を、国も重要視するようになった。それと同時に、歯科単独ではなく、看護、介護職の方々など他職種はもちろんですが、ご家族の方々にもご協力いただきながら、連携して高齢者の口を支援することの重要性に注目が集まっています。

 高齢社会での歯科のニーズを目に見える形にするため、私たちは4つの段階から構成される、オーラルフレイルという概念を考案しました。

概念図の一番右、第4レベル「食べる機能の障害」は、オーラルフレイルが最も進んだレベル。病名でいうと「摂食嚥下(えんげ)障害」の状態です。このレベルまで進むのは、いろいろな疾患が後押しした結果と言えます。脳卒中などで、一挙にここまで落ちる方もいますが、一般的には様々な原因により進行して、ここまで落ちていく経過をたどります。だから、重症化に至る前の段階から、対策を考えていかなければならないのです。

 老化によるささいなトラブルが生じた時点では、誰もが「年だからしょうがない」と思ってしまう。でも、実はそこが少しまずい状態の始まりで、さらに進むと機能障害に陥り、単なる加齢変化の範囲を超えて落ちてしまう。この概念図は、そうした変化を可視化したモデルなのです。

 年をとるとかめなくなる。そうすると、軟らかいものを食べるのはしょうがないじゃないかと考えてしまう。「消化にもいいしね」なんて。でも、それはちょっと安易というか、誤解を含んだ考え方なのです。このような食生活を続けていると、当然食べる機能は落ちていってしまうんですね、ゆっくりと。

 これが口ではなく、足腰の話として考えればどうでしょうか。歩くのがつらいからとタクシーなどにばかり乗っていると、「あなた、もう少し歩かないと! 足腰が衰える一方だよ」と、周囲に言われますよね。でも、口に関しては皆さん、柔らかい物ばかり食べていても、足腰のようなイメージは意識されません。

 繰り返しますが、食べる力というのは、ゆっくりと低下していきます。そしてその低下は、なかなか気付かない。ご高齢の方に限らず、我々を取り巻く食の環境は、食べやすい、軟らかいものが多くなっています。なので、最近まで食べることができたものを「あれっ? 食べにくい!」と感じたときには、もう相当低下している場合が多いのです。

負の連鎖に警鐘
 私たちの筋肉量は30代以降、年間で約1%づつ減少し、その減少の割合は、年齢を重ねるに従い増加します。例えばインフルエンザなどにかかって床に伏せってしまう状況になると、特に後期高齢者になるとたった1日でも1%の筋肉量が落ちてしまうリスクが高まります。つまり、1週間寝たきりになれば、約7年分とか、スピードは人によりけりですが、トトトンと虚弱化が進んでしまいます。

 ご高齢の方から、「インフルエンザになって、あれからすっかり食が細くなっちゃって」などというような話を、時として耳にされると思います。筋肉量の減少、体力の減退なども相まって食欲がなくなり、栄養状態も低下するという「負の連鎖」が始まるきっかけにもなるのです。これもオーラルフレイルの一つの過程といえます。

 このようにオーラルフレイルは,口に関するささいな衰え、それから派生した様々な負の連鎖を放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障害、食欲低下さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念なのです

平野 浩彦 (ひらの・ひろひこ)
東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長
医学博士、歯科医師。1990年日本大学松戸歯学部卒業。東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)歯科口腔外科研修医、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)口腔外科研修医を経て、1992年東京都老人医療センター歯科口腔外科主事、2002年同センター医長、2009年東京都健康長寿医療センター研究所専門副部長。2016年より現職。

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自粛で活動量減る高齢者 手軽な運動で筋力保とう

2020年04月23日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(4/23(木) 12:15 NIKKEI STYLE)

東京都健康長寿医療センターは「運動カウンター」をLINEで公開



新型コロナウイルスの感染拡大で外出の自粛が広がる中、医療関係者らが高齢者に自宅で運動に取り組むよう呼びかけている。心身の活力を失って要介護手前の状態「フレイル(虚弱)」に陥るのを防ぐため、座りながら実践できるなど手軽なプログラムをオンライン上に公開する動きも広がる。うまく利用して運動習慣を身につけ、筋力の維持・向上に努めたい。

椅子を使ったもも上げで股関節強化、寝た状態での腰ひねりで腰痛を防止――。
東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)は、スマートフォンの画面で、フレイルの予防を指導する「運動カウンター」を無料対話アプリのLINE(ライン)で公開している。

3月に慶応大と開発し、スマホの画面で全8種類の運動メニューから選ぶと、実践方法を示すテキストと動画が表示される。フレイル予防は口腔(こうくう)機能の維持も大切で、口を開閉して発声する「あーんー体操」では、かむ筋肉を鍛えることができる。
実践した日付や回数は自動で集計される。人と交流する機会が減るとフレイルを招きやすいことから、データを他人と共有して競える工夫も施した。同センターの遠峰結衣・研究員は「少しきつい程度の負荷が筋力維持の効果を得やすい。まずは10回、20回と回数を増やしていって自分に合う回数を把握してほしい」とアドバイスする。

リハビリ事業所の「動きのコツ研究所リハビリセンター」(兵庫県西宮市)は3月中旬、脳卒中でまひなどの後遺症がある人や高齢者らを対象に、リハビリメニューを紹介する無料の相談を始めた。

理学療法士が症状や悩みなどを電話で聞き取り、動画サイトに公開している約570本の「リハビリ動画」を組み合わせてメニューを作成。動画は字幕付きで1本あたり数分から10分程度。足や腕などにまひや痛みを抱えている人に向け、硬直した部位のほぐし方やうまく体を動かすコツを紹介している。5月末までメールで無償提供する予定。

同センターの生野達也代表は「脳卒中発症者の多くは高血圧や糖尿病などの疾患を抱え、感染が怖くてリハビリを休止する高齢者は少なくない。外出自粛が長期化する中、自宅でできるリハビリを知りたい需要に応えたい」と話す。

インターネットが苦手な高齢者のために、今月下旬からは動画を収録したDVDを西宮市内の介護施設などに配布する支援を予定。動画のデータを全国の自治体や企業などに無償提供する検討も始めている。

介護事業所やフィットネスクラブなどの臨時休業が相次ぎ、高齢者のリハビリや運動の機会は減っている。フレイルや移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群)などの広がりを懸念する医療関係者は少なくない。

日本整形外科学会(東京・文京)の任意団体「ロコモ チャレンジ!推進協議会」が3月中旬、全国の20歳以上の5千人を対象にした調査によると、過去1カ月の生活が昨年の同時期と比べて運動機会や活動量が減ったのは全体で40.3%に上った。60歳以上は女性が52.8%、男性が43.6%でシニア層が目立つ。

日本老年医学会(東京・文京)の飯島勝矢理事は「高齢者は2週間寝たきりの生活で失われる筋肉量は、7年間の加齢で失うのと同水準とされる」と警鐘を鳴らす。フレイルの状態では免疫力が落ちやすく、認知機能の低下も懸念される。

同医学会はテレビのコマーシャル中に足踏みするなど、こまめに運動することを勧めている。飯島理事は「家族ら周囲の人が一緒に取り組んだり、会えなくても電話などで運動を促したり、高齢者を孤独にさせないことが重要だ」と話している。

【続  き】

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自宅待機で逆に高まる健康リスク 自宅で出来る対策は?

2020年03月25日 | 東京都健康長寿医療センター DR

(3/24(火) 16:39 NEWS ポストセブン)

東京都健康長寿医療センター研究所
研究部長・北村明彦氏



新型コロナウイルス対策で「不要不急の外出は控えよ」と言われれば、どうしても家にこもりがちになる。しかしそれはかえって重病を招く危険性がある。

日本老年医学会は3月13日、次のように注意喚起した。

〈人が多く集まる場所を避けることなどが言われており、家に閉じこもりがちになりますが、高齢者にとっては合わせて「動かないこと(生活不活発)」による健康への影響が危惧されます〉

 そして、特に気をつけるべきリスクをこう指摘した。

〈「生活不活発」によりフレイル(虚弱)が進み、心身や脳の機能が低下していきます〉

 フレイルについて研究する東京都健康長寿医療センター研究所の研究部長・北村明彦氏が解説する。

「フレイルとは加齢などにより運動機能や認知機能が低下する症状を指します。進行すると心不全などの心疾患や脳卒中のリスクが上がったり、がん発生時の死亡率を高める原因になる。

 私たちが行なった平均7年間の追跡調査では、フレイルの人は要介護認定を受ける確率が約2倍高くなり、死亡率も2.2倍上昇するという結果が出ました」

 なぜ家にずっといるとフレイルになりやすいのか。

「家にこもっていると体をあまり動かさないため食欲が進まず栄養不足になり、筋肉量も減少する。これまでできていた運動が困難になり、骨粗鬆症や膝痛、腰痛などの関節疾患とともに転倒や骨折リスクが増え、最終的には寝たきりになってしまいます」(北村氏)

◆座りすぎで死亡リスク32%増

 長時間、家にいるリスクはそれだけではない。「座りすぎ」も病気の原因になる。WHO(世界保健機関)は2011年、「“座って動かない生活”は肥満や糖尿病、高血圧、がんなどの病気を誘発し、世界で年間200万人の死因になっている」と発表した。北村氏が解説する。

「体のなかでいちばん大きな筋肉は太股にある大腿四頭筋ですが、長期間座ったままでいるとこの筋肉がまったく動かず、全身の血液循環が悪くなる。

 その結果、血管が詰まりやすくなり、高血圧や動脈硬化が進みます。エコノミークラス症候群と同様、血栓ができやすくなることで、肺塞栓や脳卒中など他のさまざまな病気の引き金にもなります」

 オーストラリアのシドニー大学は2012年、45歳以上の22万人の男女を3年以上追跡し、「座っている時間」と「死亡リスク」の関係を調べた研究結果を発表した。1日11時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べて、死亡リスクが男性で32%、女性では62%も高まったという。

 さらに「テレビの見すぎ」も危険だ。英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された論文によると、英国の研究チームが、50歳以上の男女約3600人を対象に単語記憶テストを実施。1日当たりのテレビ視聴時間と認知機能との関係を調査した。6年間の間隔を空けてテストを行なうと、テレビの視聴時間が1日平均3.5時間以上の人は、3.5時間未満の人に比べて、著しく記憶力が低下していたという。

「テレビを見ることで受動的な情報は得られますが、自分で物事を考えていないので脳はあまり使っていない。そのため視聴し続けると、脳の中の記憶を司る領域の活動が落ち、徐々に認知機能が衰える。さらにテレビ漬けの生活で人と会話しないことも脳の機能低下を招き、認知症につながります」(北村氏)
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 他人と交流しないことの健康リスクはデータでも裏付けられている。健康長寿の研究を行なうJAGES(日本老年学的評価研究)プロジェクトが、65歳以上の高齢者約1万2000人を対象に調査したところ、同居以外の人との交流が週1回未満の場合、要介護2以上になるリスクが1.4倍、認知症の発症リスクが1.39倍になったという。

 自宅に居続けることのリスクは、想像以上に高いのである。

 とはいえ、積極的に外出して新型コロナへの感染リスクを高めるわけにもいかない。北村氏が勧めるのは、自宅でできるストレッチや体操だ。

「ふくらはぎは“第二の心臓”といわれます。かかとの上げ下ろしをしてふくらはぎの筋肉を動かすと、血行が良くなると同時に筋トレにもなります。1セット10~20回を2セットくらい行なえば十分でしょう。椅子に座った状態で、ゆっくり立ち上がったり座ったりを繰り返すスクワットも効果的です」(北村氏)

 また、家にいても「外とつながること」は可能だ。

「離れた家族や友人との電話の回数を増やしたり、メールのやりとりをすることで、脳の活性化につながるとともに、心の健康を保つことにも役立ちます。高齢の親がいる人は、いつもより多めに連絡してあげることを心がけましょう」(北村氏)

“自宅待機”生活を健康的に過ごしたい。

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