建物賃借人による増改築と費用の負担
添付に関する248条と,賃貸借に関する608条2項がある(占有者の費用償還請求に関する196条2項もあるが,608条2項とほぼ同規定である)。
248条による方が,608条2項によるよりも,賃借人に有利で,賃貸人には不利である。どちらを適用すべきかと言う問題があるが,608条2項は,賃貸借の当事者の利害状況を特に考慮して置かれた規定であるのに対し,248条はそのような配慮はされていない一般規定である。従って,賃貸借当事者間では248条の適用は排除され,608条2項が適用されるべきである。
<民法608条>
附合した動産は,権原に基づいて附属させられた物を除いて,賃貸人の所有物になる。
収去の必要性は無い。借家人から賃貸人に対する賞金請求権が発生する。これに対し,借家人の設置した造作は,賃貸借契約終了時に収去されるのが原則であり,償金請求権が成立する余地はない。
<附合した>
→ 附合物の必要度に応じて,
① 必要費償還
② 有益費償還
* 「有益」とは認められない場合,有益費償還請求権は発生しないが,248条の適用はと言う問題が出てくる。しかし,賃貸借関係においては,248条の適用は排除されるべきとの立場を取れば,「対価=償金」を支払う必要は無い,と言う事になる。
<造 作>
建物に附合しないので,借家人は修去すべき義務を負う。
→ 造作買取請求権(借地借家法33条)
費用償還請求権は,賃貸人の意思に反して附合させた物についても成立しうる。しかし,賃貸人の同意を得て建物に付加した物にしか成立しない。
→ 「附合の成否」は,借家人,賃貸人の利益を大きく左右することになる。