例外を認める思考パターン

2015-06-07 11:47:42 | 司法試験関連

<原則:解除の意思表示に条件をつけてはならない>

「債権者が,相当な期間を定めて催告をし,当該期間内に履行がないことを「停止条件に」解除の意思表示をした。解除の効力は生じるか」。

本件解除の意思表示には,問題文にあるような「停止条件」が付いている。そして,解除の意思表示には条件つけてはならない,という原則がある。したがって,解除の効力は生じないのが原則である。

しかし,例外は認められないか。そもそも「条件付けの禁止」が「原則」とされた理由は何か。それは解除の意思表示に条件を付すと,相手方の地位を不安定にするからである。つまり,「条件をつけることそのもの」が悪いのではなく,条件をつけると一般的に「相手方の地位が条件成就に左右され不安定になるから」,条件付け禁止を原則にしただけなのである(条件は,将来到来するかどうかが不確定なものにかからしめるものなので)

だとすれば,形式的には「条件が付されて」いても,相手方の地位が「不安定にならなければ」,条件付け禁止原則の背景にある「趣旨」に反することにはならない。そこで本件条件の内容を見てみると,解除が相当な期間内における債務者自身の債務履行如何にかからしめられるだけであって,債務者の地位を不安定にするものではない(債務者は本来債務を履行すべきものでもある)。よって禁止原則には反せず,解除は有効になりうる。

これが原則に対する例外を認める典型的な思考パターンです。表面上の「原則」が絶対的なものなのではなく,その原則を導いた「理由」・「制度趣旨」に反するのかどうかが重要だ,というアプローチです。民訴法などでもよく見られる出題パターンですね。

以前、民法で出た、「物上代位と相殺」の判例の射程を問う問題も同じです。「相殺への期待が合理的ではないから」物上代位を勝たせたのだ、とすれば、「相殺への期待が合理的な場合」は、話が違う、ということで、相殺を勝たせても良い、という結論がありうることになるわけですね。わざわざ事実関係を詳細に載せてきたところから読み取ることになります。

Comments (2)
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