帰ってきた吉野の独り言 (出題趣旨 民法・民訴法編)

2010-09-21 14:50:00 | 司法試験関連
真夏日戻る。70日目で2004年夏に並ぶタイ記録。あの夏も確かに暑かった。連続真夏日記録は,2004年の40日連続が最高で今夏は30日連続。連続試合ヒット記録みたいだ。さて,今年が最後の民事系大大問編。

【民法編】
設問1は要件事実的な問題。出題趣旨を見る限り,有権代理主張と越権代理主張をする際に,事実①②がどういう意味を持つのか,つまり請求原因レベルでのみ検討すれば足りたようである。その場合,事実②は「意味を持たない」という答えもありうることになる。深読みすれば,権限濫用の抗弁が出た際に,民法93条但書類推適用の話が出てきて,この場合,事実②が無過失要件認定の際に意味を持つ可能性が出てくるが,そこまで書かなくても良かったようである。まぁ,そこまで要求されると分量が多すぎますが。意外に「意味がない」「無関係」という結論も新司法試験ではありなので,気をつけたい。

設問2に関しては,「書いてほしい事はこれですよ」,という一覧になっている。弁済期前の主張なので,損害確定時期については検討が必須と言う点を落としていないかどうか確認しよう。共同抵当であることの特殊性についてはコメントがないが,どうなんだろうか。ここまで踏み込むとかなり込み入った話になるが。小問(2)については,背信性判断を本件事案に即して具体的にすることがポイントである。一般論だけ書き並べても評価されないので注意したい。不法行為の要件論と177条の議論の関係には言及しないと駄目であろう。何故,177条の話をする必要があるのか,を示す事が肝要。物を壊したから「破壊行為」であり,「損害」が生じている,というのでは単なる事実に基づく感覚論になってしまうので気をつけたい。

設問5の相続の問題もどこまで書くのか悩ましいところである。出題趣旨によれば,遺言の撤回などは検討しなくて良いということになるのだろうか。ここまで踏み込むとこれまた厄介な話になりボリューミー過ぎてしまう。

今年の民法については,各設問において色々な事に気がつけば気がつくほど泥沼にはまる傾向が強かったかもしれない。出題の射程をどこまでと判断したかで,今年の民法に対する感想は大分違ってくるだろう。色々書こうとすると設問数があまりにも多い出題という評価もありうる。次の民訴もそうだが,今年の民事系大大問は,出題の射程が問題文からやや不明瞭であったように思う。

【民事訴訟法編】

「ミラクル民訴」のご登場である。
設問3は意外に書きにくかったと言うか,何の話をメインに据えればよいのか意外に悩んだのではないかと想像している。当事者の確定論の部分や,訴訟代理的な分野は新司法試験の論文民訴法の傾向からして,軽く流していた人も多いかもしれない。そのような人にとってはかかなり堪えた問題だったと思う。

そして今年の全科目の問題の中で,破壊力抜群だったのが設問4である。見たくも無いという不合格者の方は多いのではないか。法律構成②の短所として,技巧性について検討せよ,とある。私も見た当初,「何だ短所?」と悩んだが,そのうち「技巧的に過ぎる」と言う点に気がついた。結論が同じ時等には,「技巧的に過ぎないか」というのは短所として思いつきたいところである。

あと請求の放棄だと基準時の問題が出てくる。請求の放棄に関する既判力の有無も重要だが,既判力を認めても,基準時の問題が残るのである。この基準時をどう見るかで,平成20年3月15日の弁済が,準時前弁済かどうか評価が変わってくるから大きい。しかしこの点は気がつかないかも知れない。

小問(2)においては,処分権主義の検討はしたものの,135条の検討を忘れてしまう,というのは多そうである。実は非常にオーソドックスな単純な問題だったようだが,本番では「比較」の意味の不明瞭さもあって,非常に悩ましい問題でしたね。



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