帰ってきた吉野の独り言 (出題趣旨 商法編)

2010-09-20 17:00:00 | 司法試験関連
刑事訴訟法に行くと見せかけて~の~,商法である。

【商法編】

論点一覧と言った感じの出題趣旨で何をどう書けばいいかが良く分かる。商法は,論点的には数も多くなく,お決まりのもの(424条とか429条とか)が多い。しかしながら,各論点について検討すべき具体的な対象が多いので,置かれた立場の違いに配慮しつつ,適切な事実の当てはめ・評価が要求される。従って,意外に差がつきやすい科目だと思う。

「判例の立場を踏まえ」という言葉が2回出てきており,改めて判例の重要性が指摘されたといえる。

昨年の商法において非常に顕著だった傾向で,それ以外の民事系の科目でも注意しなければいけない点がある。「2009年版 新司法出題フレーム講義」でお話したと思うのだが,「各設問間の整合性」に細心の注意を払う必要がある,という点である。他の科目に比べ,設問・小問が多い上に,設問間・小問間の連動性が非常に強いので,論理矛盾だけは気をつけたいところである。

「②及び③については,①において採用した結論と整合した記述をすることが求められる」「特に全体的な論理的構成力が試されている」「②においては,いずれの説に立つ場合であっても,これに整合して・・・」「①において採用した結論との整合性に配慮しつつ」と,論理的一貫性に関する記述がわずか1ページの間にこれだけ出てくるのは異例である。逆を言えば,試験委員からすれば,受験性は論理的整合性に関する配慮がまだ足らない,という思いを抱いている可能性が高いと言える。

その他刑法でも述べたが,「職務の内容を具体的に記述すること」と言う指摘がある。この点に不安のある方は,ケー論商法でトレーニングすれば大丈夫である。

今年の商法は,答案としての完成度の高い論述をするのが非常に大変な問題だったと思う。パッと見は,「論点見え見え~」「簡単」という感想を持たれそうだが,実際に試験場で2時間で,事実関係を整理し,当てはめ・評価を適切に行い事案の処理をするのはカナリ大変だったのではないかと思う。とにかく適切に事実分析をするのが難しい問題であった。家でやるのと試験場でやるのとでは大違い,という「受験公式」が良く分かる問題と言えよう。


話変わるけど,中国って領土問題になるとえらく熱くなるな。チベットやら内モンゴルやら,台湾やら。瞬間湯沸かし器状態。大陸で長年色々な国・民族の侵略を受けてきたからだと思うが,この辺,島国根性の日本とは感覚が違うんだろうね。でも日本も言うべき事は筋を通して主張すべきだね。
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帰ってきた吉野の独り言 (出題趣旨 刑法編)

2010-09-20 13:59:59 | 司法試験関連
どうも全国的に敬老の日の体である。ということで,本日俺は敬われる側に立つのである。刑法編すたーと。

【刑法編】
非常に詳細でいいですね。読むだけで刑法の勉強になります。

「事案の解決に必要な限度で簡潔に自らの考え方を明らかにした上」,「共同正犯を認める実益は何かという問題意識も必要となろう」,「事案の解決に必要な範囲で論点に関する自らの見解とその論拠を簡潔に示すことが求められる」,という記述は要注目です。以前から私が指摘していたことですね。論点の抽出後の作業,論点の選別のお話です。何度も言っていることですが,何故それを書くのかといえば,本件事案の解決に必要だから書く,よって立つ立場によっては結論が異なりうるから書く,という例の話。「重要な論点だから書く」のではないのである。この点激しく注意である。

作為義務や過失犯における注意義務の内容については,「課せられる具体的な注意義務の内容を特定する必要がある」という指摘が重要です。今年の刑法は,商法での作法が使える問題だと以前ブログに書いたような気がしますが,注意義務系の問題の処理の作法は同じですね。「本件事案において」何を根拠に義務が発生し,その義務の内容を「本件事案において」はどのような義務なのか具体的に指摘し,その義務に対し「本件事案において」具体的にどのような行為形態で違反したと評価できるのか,という書き方です。

成績が返ってきて,予想外に刑事系が悪かった人もいると思うのですが,今年は書き方一つで大きく差の出る問題です。保障人的地位や作為義務について検討してい無い人はいないと思うのですが,「本件における」甲についての作為義務の発生根拠等につき,出題趣旨に指摘されているような具体的なファクターを拾って厚く書いたかどうか思い出してみてください。間違いなくここで差がついています。

本件は「病院内事例」である,という点が極めて大きな意味を持っています。正に本件事案の特殊性です。看護士や薬剤師の義務内容は何なのか。基本的に保護義務があるのは第1次的には病院サイドである,という点も無視できません。甲がやらなくていいです,と言ったから免除されるような義務ではないと言うことです。

また,甲の心情が揺れ動いているのもポイントです。救命可能性も含め,本問題は,どう考えても時的要素を無視できません。

作為と不作為いずれの事例か検討せよ,という部分には驚いた方も多いかもしれません。確かに細かいなと言う気はしますが,学ぶべきことがあります。それは刑法では,まずは個別にアプローチをしろ,という以前から注意している点です。

細分化しすぎるのは拙いですが(過去のヒアリングでもこの点の指摘はあり),どんぶり過ぎるのも駄目です。論点落としをしてしまいます。第3回,第4回本試験の解説でこの点はかなり強調しました。今年の問題を見て,いきなり「不真正不作為犯だ!」と決め打ちした人,いませんか?「結論は」それでも良いのですが,まずは甲の行為を分析的に拾ったかどうか思い出してください。まずは行為を分析的に拾って検討する。その後,一連の行為と評価するかどうか,複数の行為と見た場合には罪数処理で考える,などの段取りを踏んだかどうかです。これ刑法の作法の一つです。

本問で,甲の行為を順に拾っていくと,確かにちょいちょい何かしています。これらの「作為」要素をどう見るか試験場で考えたかどうかです。「妨害工作」は完全に作為です。作為的要素があれば,原則作為犯で検討するのが刑法のセオリーですから,作為事例と見るか,不作事例と見るか検討しろ,ということなのでしょう。
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