斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

今日の学部の講義

2012年05月22日 23時48分34秒 | 講義記録
今日は、単元素金属の結晶構造について話をしました。
金属の結晶構造は3つあって、それぞれを理解し記憶したと思います。

fccは面心立方構造です。APFは原子充填率です。fccのAPFはすでに答えを出していると思います。
単元素金属がアモルファスをとった場合、もっとも詰まったアモルファスでAPF=0.68しか詰まりません。つまり、0.68とfccのAPFの間には、作ることのできない構造があるということになります。結晶とアモルファスの間に明確なAPFギャップがあることになります。このギャップがあるからこそ、結晶とアモルファスは別の物質なのです。

アモルファスといっても、それを構成する原子やイオンの価数によっておおよその構造が存在します。そしてその構造には種類があります。ひとつの構造ともうひとつの構造との間にも明確なAPFギャップがあります。だからアモルファスの構造同士も区別がつけられることになります。

とにかく、APFとIPFをしっかりと計算できるようになってください。APFがかわれば密度が変わります。密度は材料物性の基本中の基本の値です。密度が変われば物性が大きく変わります。

横道の話の補足です。
活性炭には0.6 nmから2 nmまでの孔が多数形成されていて、それ以上も孔もあります。気体を吸着するのは、0.6 nmから2 nmまでの孔で、この孔の大きさをどれかひとつ選ぶとある特定の分子を大量に吸着することができます。特に水素の吸着はエネルギー貯蔵には必要な技術となりますし、私の研究室ではその技術が得意です。今日の横道の話では、0.6 nmから1.5 nmまでの大きさの孔のうち、ある特定の大きさの孔を大量に空けることに成功した技術に関するものです。しかもその技術を使うと、重量あたりの表面積(比表面積)が2100 m2/gから大きくジャンプアップします。比表面積があがれば、吸着性能もあがります。

来週の小テストですが、CsCl構造とNaCl構造がそらんじて描けるようにしておいてください。関連問題を出します。

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