斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

回転翼機による救助1

2015年09月27日 13時10分38秒 | 斎藤秀俊の着眼
先日の豪雨のうち、鬼怒川水害では、回転翼機による救助者は茨城県全体で1,100名以上となったようです。FlyTeam ニュースという航空会社、マイレージ、空港、航空機機材に関する航空ニュースをほぼ毎日配信している新聞によれば、「自衛隊は 空自、陸自のUH-60、海自のSH-60など計15機による救助活動により10日20時までに254名救助。自衛隊、消防、警察、海上保安庁など各機関の回転翼機が救助活動にあたり、内閣府によれば9月10日18時現在で回転翼機38機が投入されて、救助者数は265名以上」としています。

防災ヘリは 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都の6機、警察へりは 6都県警察の8機、海上保安庁は全国の基地から急行した7機だそうで、これらが救助活動にあたったようです。

私は、高知県や横浜市の防災ヘリと共同で、特に水難を意識してこれまで多人数吊り上げ救助の訓練を行ってきました。防災ヘリの搭乗時間はそれなりに多いと自負しています。吊り上げ、吊り下げも経験しています。このような活動はすでに東日本大震災の以前から行っていて、そういう活動が東日本大震災以降に急速に広がったと思っています。

このような災害現場において多くの人命を救助できたのは、各航空隊による不断の吊り上げ救助訓練の成果であることはいうまでもありません。災害現場での要救助者の発見、電線などに注意しながらのアプローチ、ダウンウオッシュの影響を最小限にするためのアプローチ方法、適切な高度、吊り下げられた救助隊員の障害物への激突防止、付近の航空機との接触防止、要救助者の確保、吊り上げ方法、救助隊員の収容タイミング、複数人の吊り上げ、燃料との相談などなど、機長の高度な判断ばかりでなく、退隊員との密接な意思疎通がなりたたないとならないことばかりです。

さらに、今回の大規模救助を支えた災害救援航空情報共有ネットワーク(D-NET)は、工学的観点でもたいへん重要なシステム整備だと思いました。医工連携が叫ばれてだいぶたちますが、病院内ばかりでなく、災害救助現場でも工学的センスを必要とする事柄がたいへん多い。こういう分野に多くの工学専門家が入ってくれるとうれしく思います。

以上のことについて、解説していきたいと思います。