観るチャンスを失していたクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」を観てきました。
2番館で2本立て。併映はラッセル・クロウの告発もの「消されたヘッドライン」です。
ラッセル・クロウは「消されたヘッドライン」ではかなりのメタボ腹でした。
そのおかげで、なおさらクマちゃんのように温かげ^^、なのですが、ジャーナリストとしての行動はシャープです。
国土安全保障まで民営化が進むアメリカ。一握りの億万長者が生まれ、死ぬまで使い切れないようなお金を、死ぬほどの思いで働く層が稼ぎ出し支えています。
アメリカのこの方向性をよしとして吹き込む、日本人の学者や政治家を私は好きではありません。
映画では結局、罪は個人に由来していて、悪徳企業を糾弾するにはいたりません。
現実の問題として、民営化が進んでいるアメリカの軍隊に、日本はどれほど税金を注ぎ込むんでしょう。
「グラン・トリノ」はクリント・イーストウッド扮する主人公が本人の手も加わっていて作り上げたヴィンテージものの愛車の名前です。
アメリカのよき時代の象徴ですね。息子は日本車のディーラー。
老妻を亡くし、彼の住む地域にすでに白人は少なくなっています。
隣りに越してきたのはべトナム戦争でアメリカに協力したアジアの国からの移民で、彼は容赦なく「イエローは嫌いだ」と言い放ちます。
こちらもアメリカの複雑な世相が現れた映画です。ハッピーとは手放しでは言えない結末ですが、善意もたっぷり詰まっているのが救いです。
「グラン・トリノ」は一人前の男に育て上げた隣家の息子に遺されて、ミシガン湖のほとりを姉とドライブするラストは美しいシーンでした。
「グラン・トリノ」も「消されたヘッドライン」もアメリカが関わってきた戦争が伏線にあります。
朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争が登場人物たちの殺し、殺される遠因になっています。いったいいつになったらアメリカの戦争は終わるのでしょう。
クリント・イーストウッドは今年79歳。次回作の製作・監督にすでにとりかかっているそうですが、主演の次回作も待っていたいです。
「グラン・トリノ」のラストはシナリオとしてはこれが最良だったのでしょうが、俳優の最後の作品としてはすっきりしませんから。
(映画のスチール写真はgoo映画のサイトから借用しました)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます