『母性』は湊かなえさんご本人がこの命名をどう思っているか分かりませんが、イヤミス(嫌な気分にさせるミステリー)の女王にふさわしい内容でした。
単行本は2012年の刊行、文庫化が2015年、映画が公開されたのは昨2022年。映画化とともに、文庫本がまた売れていました。
書籍は100万部を超えるベストセラーでしたが、映画は苦戦したようです。
母と娘の独白で綴られる物語の映画化は難しいかもしれません。
映画でのキャスト、戸田恵梨香さんの母親と、永野芽郁さんの娘は、私が楽しんで観ていたテレビドラマ「ハコヅメ」のイメージがよぎって、しっくりこないのです。
『母性』は、自分は愛されて育ったにも関わらず、娘を愛することができない母親、そしてその愛情を求め続ける娘の物語です。
「これが書けたら作家をやめてもいい」という思いで書いたという湊さん。
映画のほうは観ていないので分かりませんが、書籍のほうの結末には救いがありました。