よく知られているのが外反母趾(し)。親指が第一中足趾節関節で外側へ
変形する疾患。ほかにも爪が変形してしまう巻き爪や陥入爪、圧迫により
強いとう痛を訴える鶏眼(魚の目)、関節が曲がって固定してしまう
ハンマートーなどがある。腰痛や変形性膝関節症などまで含めれば、
靴も原因ではないかと疑われる疾患は数多い。
足と歩きの研究所(神奈川県横浜市)の所長で、足元から下半身のリハビリ
治療を行っている理学療法士の入谷誠さんは「地面に接している足元が
しっかりとしていなければ、身体のバランスが崩れる。
歩行時の姿勢も乱れ、体のあらゆる所に支障をきたす原因になる。
予防のためにも、靴や中敷きなどの足を包むものを見直すことが大切」と
強調する。
■歩き方を点検
人間は歩行の際に、かかとの外側から着地し、外側側面を通って小指の
付け根から内側、親指の付け根の順で着地していく。
最後に、親指、人差し指、中指で、指の付け根の関節を屈曲しながら蹴り
出す。
この正常歩行ができていれば、かかとはセンターに対して外側に、
約45度の角度で減る。これが、がに股歩きのO脚状態では、かかとは
外側に急な角度で削られる。内股歩きのX脚状態では、かかとの後ろや
内側の縁が減る。使用中の靴のゆがみやインソール(中敷)のへこみ具合
からも自分の歩き方や足の状態がわかる。
正しい歩き方にならない原因の中には、靴が合っていないことも含まれる。
では、自分に合った靴をどう見つけるか。
■甲回り締める
まず、靴を履く際には必ずかかとで軽く地面を叩くようにして、靴に
かかとを合わせる。適度な硬さで包まれるフィット感があればよい。
靴の中で指先を動かせるか、つま先に余裕があるかも確かめておく。
靴の開口部の一番上の部分、履き口はくるぶしに当たらないようにする。
土踏まずは、締め付けられる感覚も、ゆるんだ感覚もないのがいい。
靴の中で足が動き過ぎるときは、ヒモやベルトのあるものを選ぶのも
選択肢のひとつだ靴ヒモは、履くたびに甲回りに合わせてしっかりと
締め直す。
入谷さんは、外反母趾が靴に触れないよう大きめの靴を履くと、
「靴の中で動いてしまう足を、指が抑えこみながら歩くことになるので
負担がかかり、かえって症状を悪化させる」と注意を促す。
■開帳足の痛み、パッドで軽減
足はかかと、小指の付け根、親指の付け根の3点で体重を支えている。
この3つの接地点をゆるやかに結ぶアーチは、歩行時の足への衝撃を防ぐ
クッションや、前進のためのバネの役割を果たす。
ところが、「加齢と共に、小指と親指の付け根を結ぶ横アーチがゆるむため
甲が下がり、横幅が広がる開帳足が中高年に目立つ」足と靴と健康協議会
(東京都台東区)の主任研究員、俣野好弘さん))
人差し指と中指の付け根に加重がかかって固くなり、痛みや疲れが生じ
やすい。「中敷きパッドを活用して患部を持ち上げるだけでも、かなり楽に
なる」(俣野さん)。足幅を狭めるため、靴にあたる外反母趾の痛みの
軽減もできるという。
(2014年5月17日 日本経済新聞)