むくみは、体の一部に体液などの水分がたまり、腫れたような状態をいう。
特に、高齢者に出やすいのが足だ。
心臓は、血液を体内に循環させるポンプの役目がある。
心臓から送り出した血液が動脈を通じて細胞に水分を供給する一方、
細胞内の不要な水分を静脈を通じて回収する。
だが、心臓の収縮力が弱まると、血液が心臓に戻りにくくなって静脈内の
圧力(静脈圧)が高まり、吸収すべき水分を押し返してしまう。
この吸収されずに残った水分が、むくみの正体だ。
心臓の収縮力は加齢で弱まるので、高齢者ほどむくみが出やすくなる。
「第2の心臓」と呼ばれる足にもポンプの役割があるが、筋力が衰えると
ポンプ作用が弱まる。また、高齢者の皮膚は弾力性が低いため、張りのある
皮膚に比べて、むくみを押さえ込みにくい。
足がむくむと、血管が浮き出るなど、見た目が悪くなるだけでなく、歩いたり
靴を履いたりするのがつらくなる。静脈に血液がたまったまま放置して悪化
させると、足の静脈にできた血栓(血の塊)が肺の静脈に詰まって呼吸困難
などを引き起こす「エコノミークラス症候群」になるなどの危険もある。
むくみの有無は、自分でチェックできる。
「向こうずねを指で5秒ほど押し続け、離した後に指跡が残っていればむくみ
です」と日本リンパ学会常任理事で、広田内科クリニック(東京)院長の広田
彰男さん。ただし、心臓や腎臓などの病気が原因で出るむくみもある。
「尿の出が悪かったり、急激に体重が増えたりした場合は医師の診断を」と
助言する。
通常のむくみを防ぐにはどうすればいいか。心臓や皮膚の衰えを改善する
のは難しいが、足のポンプ作用を高めることは可能だ。
「むくみ外来」を設ける大北メディカルクリニック(大阪)院長の松永敦さんは
「歩いたり、かかとを上げたり、スクワットをしたりして足を動かすと、血液の
循環がよくなります」と話す。
足腰が弱い人は、椅子に座ったまま、床に着けたかかとを上げ下げするだけ
でもいい。足を引き締めて血行をよくする「弾性ストッキング」を昼間に着用
したり、足湯を使ったりするのも効果的だ。
水分も十分に
むくみ対策でよくある誤解が、水分の取りすぎが原因と考えて、水分を控えて
しまうことだ。
松永さんは「人の体の60%は水分。不足すると体は皮下組織に水分を
ため込もうとし、むくみがひどくなるので逆効果」と指摘する。
松永さんのむくみ外来では、患者のほとんどが、血中の水分量が少ない
「脱水気味」と診断されたという。
さゆやスポーツ飲料を時間をかけて少量ずつ飲むのが、適切な水分補給の
仕方だ。体重60キロ・グラムの人の場合、1日に必要な量は1.8リットル。
睡眠時間を除いて16時間起きているとすると、1時間にコップ半分程度
(約100ミリ・リットル)が目安となる。
ただし、コーヒーや紅茶などカフェインを含む飲料とアルコール類は、
利尿作用があるので、水分補給には不向きだ。
「お茶ならカフェインの少ない番茶やほうじ茶、ハーブティーを選んで」と
松永さんは勧める。
(2014年5月16日 読売新聞)