永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(926)

2011年04月15日 | Weblog
2011.4/15  926

四十七帖 【早蕨(さわらび)の巻】 その(8)
 
 薫からも、中の君が御禊(ごけい)に出られるためのお車や、御前駆(さき)の人々や、陰陽博士などを差し上げられました。

薫の歌「はかなしやかすみの衣たちしまに花のひもとくをりも来にけり」
――儚いものですね。あなたが喪服を着けられたのは、ついこの間とおもいましたのに、花が開いてもう平常着に着かえられる時になりました――

 と、なるほど「花のひもとく」とあります通り、ご衣裳をさまざまに仕立てて差し上げられました。

「御わたりのほどのかづけものどもなど、ことごとしからぬものから、品々にこまやかに思しやりつつ、いと多かり」
――京にお移りになる際にと、侍女たちにくださる品など、仰山ではないけれども、身分身分に応じて調えてあります――

 侍女たちが、

「折につけては、忘れぬさまなる御心寄せのありがたく、はらからなども、えいとかうまではおはせぬわざぞ」
――折につけ、こうして昔をお忘れにならぬ薫中将の御親切はたぐい稀でいらっしゃいます。兄弟などでもこうまではなされないものですよ――

 と、中の君にご納得がいくように申し上げます。齢かさの侍女たちはこのような経済面を特に申し上げ、若い侍女たちは薫をいつも拝していましたので、中の君がいよいよ匂宮の所へ行かれることが残念で、「本当は、薫の君はどんなにか中の君を恋しくお思いになっていらっしゃることか」と、囁き合っているのでした。

 薫自身は、中の君の京へお移りになられるのが明日という日の、未明に宇治にご到着なさいました。

 薫のことばに、中の君は、

「はしたなしと思はれ奉らむ、としも思はねど、いさや、心地も例のやうにも覚えず、かきみだりつつ、いとどはかばかしからぬひが事もや、と、つつましうて」
――何もあなたに極り悪い思いをおさせしようとは決して思ってはおりませんが、さあ、どうしたものでしょうか、気分がすぐれませんので、このような取りみだした心地では、
なおいっそう、とんでもないことでも申し上げそうで、と、気が負けまして――

 と、お困りのご様子です。それをお側のだれかれが、「このままでは薫の君にお気の毒です」とお口添えする者がいて中の君は、障子口のところで御対面になられます。

では4/17に。