落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

モンスターズ・ボウル

2007年05月19日 | book
『大いなる眠り』レイモンド・チャンドラー著 双葉十三郎訳
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チャンドラーの処女作ですね。
発表は1939年。第二次世界大戦が勃発した年。でもまったく古さを感じさせない。訳文はちょー古いけど。“自動昇降機”ってなあ。このバージョンは初版が1959年、日本にエレベーターがない時代でもなかったはずですが。古いだけでなく言葉遣いがやたらに荒っぽくて、推理小説、探偵小説というより仁侠物語っぽい雰囲気になってしまっている。
訳文のひっかかりはさておき、シリーズの主人公であるフィリップ・マーロウはこの物語ではまだ33歳。若いです。そのぶんストーリー展開のテンポもいい。まるでビリヤードの玉が勢いよく転がってカチカチと音楽でも奏でるようにぶつかりあうように、軽やかにかつぐいぐいと力強く読者を先へ先へと導いていく。それでいて人物造形や情景描写は繊細で蠱惑的で、なかなか色あざやかでもある。
おもしろいです。ハイ。

チャンドラーは推理小説にリアリズムを追求した作家だというけど、この作品にもその努力のあとははっきり認められる。ところどころにあまりにマッチョ過ぎたり女性像がワンパターンだったり、多少「これはどーか?」と思われる部分もなきにしもあらずだけど、まあ推理小説といえばあくまで娯楽小説だしね。
ただ事件がどうなるか、ということよりも、登場人物がさきざきどうなるか、というところに主眼を置いた構成はかなり好感が持てましたです。
しかしエロ本が犯罪ってとこはさすがに時代を感じるよなあ。スターンウッド家の姉妹は今でいえばヒルトン姉妹みたいなもんか。彼女たち(つか主にパリスの方か)はヌードどころじゃなくすんばらしー品行を暴露されまくってるけど、あんなのがいちーちカネになるってとこは何十年経っても変わんないもんなのねー。
あほくさ。